「2月の珈琲 Indonesia:ざわめきに立つ」
複雑なのよ。
海外ドラマでよくあるセリフを思い出した。
数秒前までカンカンカンカンとけたたましく鳴っていた音は消えている。
向かいのホームには電車が滑り込んできて、ゆっくりと止まった。
1メートル隣に立つ先輩の女性は、リュックをガサゴソ何かを探している。
背後から漂う気配から、スーツを着込んだサラリーマンはスマホをいじっているのだろうと想像した。
駅から外に視線を泳がせる。
遮断機のあがった踏切を渡る手をつないだ親子が目に入った。
複雑なのよ。
私から見える範囲のなかで同じ行動をしている人はいないに違いない。
法則のない行動から生まれた動線が複雑に絡み合うのが見える。
街のなかに見えるざわめき。
そのなかに立つ私は点で、なにか意味があって、ここに立っているように感じるのだった。
Indonesia:ざわめきに立つ
鳴っていた音は消えていた
向かいのホームには電車が止まり
手をつないだ親子が
遮断器のあがった踏切を渡っている
法則のない線が行き交うざわめき
そのなかで点として立つ
絡みあう味わいのなかにある好み