「2023年4月の珈琲 Guatemala:ピントを合わせる」
多くのモノコトヒトは見えているようで見えていない。
Guatemala:ピントを合わせる
ぼやけた景色のなか
たったひとつだけが浮きあがる
いつでもどこでもなにをしていても
合わせられるピント
吸い寄せられたこころが
踊るように高揚しはじめる
リズムよく踊りだす酸味
なぜか、いつも、つくしを見逃す。
スギナがそこかしこにはびこっていることに気がついて、あぁ、つくしをまた見逃したと肩を落とす。
そんな春が何度も続いていた。
もちろん、つくしをまったく見ていないわけではない。
出先の公園や野原で見つけることはある。
問題は、毎日眺めている家のまわりで見つけることができないということだ。
だから、今春はつくしを見つけるぞとこころに言い聞かせていた。
スギナではなくつくし。
普段の暮らしのなかで、全てのモノコトヒトに神経をはりめぐらせることはむずかしい。
多くのモノコトヒトは見えているようで見えていない。
真っ白や真っ黒という白黒ではなく、きっと、ぼやけているのだと思う。
無意識に、いや、意識を持って、ぼやかしている。
その瞬間、自分が必要としているモノコトヒトをくっきりと浮き上がらせ、印象付けるために…。
今春のつくしはといえば、わたしの視界にさらっと入ってきた。
たんぽぽの黄色にも負けず、葉の緑色にも負けず、つくしはにょきにょきと顔を出していた。
一本のつくしが見えた瞬間、わたしのピントはつくしに吸い寄せられた。
あそこにもある。
そこにもある。
そして、ここにもある。
見つけた!見つけた!
つくしを見つけた!
踊るように、こころが高揚を始めた。
この感覚を珈琲で表現したい。
ピントが自然と合わさる静かな雰囲気は苦味、そして、こころが踊る様子は酸味。
この感じを表現するなら、Guatemalaだ。
こうして、Guatemala:ピントを合わせるが生まれた。