「2024年2月の珈琲 Brazil:蝋梅ララバイ」
今年も蝋梅の開花に気づけたことを大切にしたくて、蝋梅の甘い香りとその儚さを表現するために選んだ豆は深い甘味のあるBrazilだった。
Brazil:蝋梅ララバイ
甘い香りがひと筋の線を描く
薄曇りの日に咲きはじめたのは
遊歩道に植えられた蝋梅
うすく透ける蝋のような花びらに
誘われたメジロのさえずり
甘く儚き春の夢に船を漕ぐ
甘さに誘われて深みにはまっていく
いつのまにか、気付かずに散っていることもある。
それが、寒い時期に咲く蝋梅の儚さのひとつではないだろうか。
遊歩道を歩いていたら、ななめ前に、スマホのカメラを空にかかげる男性がいた。
その姿に、ここ数日、窓を開けると、甘い香りが細く柔らかなひと筋の線を描きながら漂っていたことを思い出した。
そうか、蝋梅が咲いたのか。
遊歩道に植えてある蝋梅は、寒い冬の薄曇りの日にひっそりと咲き始めていた。
近寄ってみると、その花びらはうすく透ける蝋そのもので、指でさわれば、わたしの体温が伝わって、一気に溶けてしまいそうな気もする。
さわらない、さわれない。
そういえば、ここ数日、数匹のメジロが庭にやってきて、おしゃべりを楽しんでいた。
メジロも蝋梅に誘われたのだろうか。
一年で一番寒い日もあれば、春を感じる暖かい日もある2月。
小春日和の日に窓を開けはなちながら、メジロの様子を眺め、そのさえずりを聞いていたら、まぶたが無性に重くなってきた。
ちょっとだけなら、まぁ、いいか。
甘い香りをはなつ蝋梅の子守唄に誘われて、わたしは甘く儚き春の夢に船を漕ぎ出した。
2月の珈琲豆はなににしようと考え始めたとき、蝋梅が咲き始めた。
今年も蝋梅の開花に気づけたことを大切にしたくて、蝋梅の甘い香りとその儚さを表現するために選んだ豆は深い甘味のあるBrazilでした。