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キャリアに不安や焦りをもつすべての社会人へ/『会社はあなたを育ててくれない』の感想
30代半ばで4社目、年齢の割には転職回数の多い社会人人生だろうと思う。
「今の会社で働き続けて、将来食べていけるスキルがつくのだろうか」「このまま働いて、今の会社以外でも評価される経験を積めるのだろうか」、そんなことを考えながら転職先を選んできた。大きなプロジェクトに携わってリーダーも任されて超スピードで成長、なんてことはなかったけれど、着実にできることを増やしてきた。職務経歴書に書けることも増えた。けれど、キャリアに対する不安が消えることはない。
上記は私のことだが、当てはまる人も多いのではないだろうか。20代の若手社会人ならば「30歳までになにかスキルの軸を見つけなければ」と考えて焦っている人も多いかもしれない。でもその軸、見つけても軸じゃなくてただの種なんだよね。水やりしてもなんの芽が出てくるかわからない種。
『会社はあなたを育ててくれない』は、私のように「仕事を頑張ってきたつもりだけどこれで良かったのか分からないよう」とメソメソしている人間がなぜ生まれるのか、を労働に関する法律の変遷やデータを元に説明し、どのように対策して動けばよいのかを解説する書籍である。
昔と現在は従業員が働く環境も、企業が置かれている状況も異なり、昔のように一生懸命働いていればキャリアの道筋が示されるわけではない。残業時間も規制され、増えた余暇の時間で目にするSNSでの友人や同期の活躍。実感として「分かる!」と感じる・感じていたことが丁寧にデータで示されている。データを見ても、キャリアで焦って不安になるのは仕方ないことなのだろう。
では、その焦りや不安をどうすれば解消できるのか。現代の社会人はどのようにキャリアに向き合えばよいのか。その解決方法もしっかりと示されている。途中、chapter9「「組織」とゆるくつながる」では「在籍企業に充実した制度がない人は対象外ってことか…!?」と本を閉じそうになったが、気にせず読み進めてほしい。現在在籍する企業が副業を禁止していても、異動先なんてないような規模の企業であっても問題ない。できることはあるよと声をかけてくれるから。
欲を言えば、本書の示す解決方法を実践した人たちの実例をもっと見てみたいなと思った。けれど、これから求められるのは個人個人が手探りで探し当てた「その人だけのキャリア」なのであって、実例を見たところで私個人にはなんの役にも立たないだろうことも、本書を読んで理解したつもりである。