睡眠の大切さを伝え、充実した人生の実現をサポートする
ARROWSが提供する、先生と企業が一緒につくる新しい授業「SENSEI よのなか学」をご活用いただいた企業様に、導入の背景や想いについて伺いました。
◆睡眠研究所を立ち上げ、眠りに関する研究を推進
──ここ数年、睡眠に対する関心が高まっています。それ以前から、睡眠の重要性に着目されていますね。
木暮:私たちはベッドメーカーとして睡眠全般に高い問題意識を持っています。最初は「マットレスが睡眠に及ぼす影響」を重点に研究していましたが、睡眠に関する問題は人それぞれで、適切な個別対応が求められていることから、まずその人の睡眠の状態を知ることが前提になります。そこで開発したのが非装着・非接触型の睡眠計測センサーでした。身体に装着せず、マットレスや敷布団の下に敷いて電源を入れるだけで、入眠や覚醒の状態を自然に測定することが可能な装置です。例えば病院の入院患者や介護施設の利用者には装着型の機器を使ってもらうことが難しいですが、非装着・非接触型のセンサーによって日常的に睡眠の測定ができるようになれば、さまざまなイノベーションの創出が期待できます。この睡眠計測センサーを2009年5月に市場にリリースしたのを契機に、研究部門を独立させてパラマウントベッド睡眠研究所が立ち上がりました。
──パラマウントベッド睡眠研究所ではどのようなお取り組みをされているのですか。
木暮:睡眠にまつわるさまざまな課題を解決するために、ベッドをはじめとする寝具やセンサーを活用しながら研究開発を進めています。具体的には、研究チームと看護師チームに分かれ、研究チームでは睡眠計測センサーの新機能の開発や、睡眠状態にあわせてベッドの背角度を調節する研究などを行っています。看護師チームは、開発された製品の活用方法などを病院や介護施設に普及させ、社会実装を推進しています。その過程で得られた現場のニーズや顧客の声は研究チームにフィードバックし、新たな研究へと生かされます。
──次世代の育成支援にも力を入れていらっしゃいますね。中学生を対象とした授業「睡眠で明日が変わる!」には、睡眠研究所が監修という形で関わっているのだとか。
小柴:そうですね。パラマウントベッドは医療、介護に加えて,2020年から「健康」を事業の柱に据えています。お客様の幅も医療や介護を必要とする方からすべての方々へとさらに広げていくためさまざまな取り組みを進めていますが、その1つが中学生向けの睡眠授業の配信コンテンツの制作でした。この教材には睡眠研究所で培った知見やデータがふんだんに盛り込まれています。
◆睡眠の問題を「自分ごと」として考える授業
──教材はどのような内容になっているのでしょうか。
小柴:この授業で最も伝えたいのは、睡眠がいかに大切であるか、ということです。「中学生の睡眠時間は何時間必要か」「寝る時間と起きる時間、どちらが大切か」など、問いを投げかけることによって関心を引き寄せ、よい睡眠とは何かを考えていきます。アニメーションを使った動画なども盛り込み、少しでも生徒さんが「自分ごと化」できるよう留意しました。
授業コンテンツの制作にあたって、誰を対象とするかは議論を重ねたところです。小学生、中学生、高校生と検討するなか、睡眠時間に最も変化が起きやすいのは中学生ではないかと考えました。社会的な要因からみても勉強で夜更かしすることも増えるでしょうし、行動範囲も広がり遊びにも時間を使うようになります。睡眠の重要性を子どもの時から知ってもらうために、まず中学生を対象とするのは非常に有効な手段だと判断しました。
──睡眠研究所の研究実績がどのように教材に反映されたのでしょうか。
小柴:睡眠研究所で長きにわたって蓄積してきた知見やデータを活用して制作しています。もちろん、生のデータをただ見せるのではなく、どのように提示すれば中学生のみなさんにとってわかりやすい内容となるか、慎重に吟味しながら教材化を進めました。
木暮:生徒さんに睡眠の重要性をしっかり伝えたうえで、次の行動にいかに移してもらえるかも大事な観点です。あれもこれもと欲張って伝えるとかえって印象に残らないこともあると思いますので、本当に大切なポイントだけを簡潔に、キャッチーに伝えることで、これからの行動に変化を促すことが重要です。例えば、睡眠の質も量も大切です。量は質で補えません。まず睡眠時間をしっかり確保することを前提で、質を考えるべきですが、その際に満足感が得られているかどうかで質を実感してもらいます。こうした睡眠の位置づけが自分の目標達成や自分の過ごし方を計画するには不可欠であることを理解してもらい、やる気を引き出す構成を検討しました。
──中学生の実情をふまえてさまざまな工夫を重ねられたのですね。手応えはいかがですか。
小柴:授業の様子を何度か拝見させていただきました。動画を見ながら笑い声があがることもあって、共感できることがあるからこその反応だったのではないかと思います。授業後のアンケートを見ても、「自分がしっかりと眠れる環境を自分自身で作っていこうと思った」「最近は夜中2時や3時まで起きることが多かったけれど、今回の授業が自分の睡眠を改めるきっかけになった」など、授業の内容を自分ごととして捉えていただいている感触を得ています。
◆睡眠の授業が生徒の行動変容を促す
──授業コンテンツを作るにあたり、「SENSEI よのなか学」に参画しようと思った理由をお聞かせください。
小柴:教材は中学生向けですが、それを使っていただくのは先生です。先生方が授業で使いやすいようなものである必要があります。ARROWSさんは先生方のコミュニティを持っていて、現場のニーズをしっかり把握されているところが強みだと思いました。
実際に教材を作る過程では、我々の案をブラッシュアップするにあたり、ARROWSさんのコミュニティに参加している先生方のご意見をうかがう機会もありました。学校現場の実情をふまえたアドバイスも数多くいただき、ARROWSさんを通して先生方と一緒に仕上げた教材だと自負しています。
「SENSEI よのなか学」に参画して2年になりますが、1年目に制作した教材について、先生や生徒さんからのフィードバックとともに改善点もご提案いただいたので、現場の声を反映した教材にグレードアップできるのも魅力です。よりよいものを目指して作った教材が、生徒さんの理解度や行動変容につながっていることも数値として示していただき、非常に満足しています。
──企業として、教育現場との接点を持つことについて、どのように考えていらっしゃいますか。
小柴:医療、介護に続いて健康という柱を立て、睡眠を通じてよりよい生活、より良い人生を送っていただきたいと事業を進めるなか、若い世代とコネクションを持つことは、その実現の大きな一助になると考えています。
生徒さんに睡眠の大切さを知っていただくことで先生方に何らかの利点をもたらすことも視野に入れています。それに加えて、生徒さんがご家庭で睡眠授業について話をすることで、家族と一緒に睡眠やライフスタイルについて考えていただく機会が増えれば素晴らしいと思っています。さらに言えば、その授業を提供している当社を知っていただき、当社の取り組みにも関心を持っていただけたら、こんなに喜ばしいことはありません。
──次世代の若者たちに発信することで、どのような未来を描くことができるでしょうか。
木暮:日本経済の底上げのために一人当たりの生産性の向上が謳われています。そこで注目されるのが働き方改革です。かつて米国のシンクタンクは睡眠不足による日本の経済損失を年間およそ15兆円と見積もりましたが、生産性の高い国ほど人々は睡眠時間をしっかり確保しています。睡眠を削ってでも働く、といった風潮では生産性の向上は望めませんし健康的にもよくないと思います。これからの日本に必要な睡眠の在り方を中学生のうちから理解し、実践することは日本社会にとっても有益だと考えます。
小柴:私たちは睡眠をキーワードに多くの方と関係性を築かせていただいていますが、こうした方々の生活や考え方、ひいては人生そのものがよりよくなっていけば本望です。これまでのモノやサービスの接点に加えて、今はこうした授業コンテンツを提供することによってお客様との接点も作ることが可能となりました。今後はさらに裾野を広げて、より多くの方によりよい人生をもたらすお手伝いができればと思っています。