赤ちゃんにやさしい未来に向けて、行動のきっかけづくりを
ARROWSが提供する、先生と企業が一緒につくる新しい授業「SENSEI よのなか学」をご活用いただいた企業様に、導入の背景や想いについて伺いました。
◆社会の一員として赤ちゃんのためにできることを考える
──中学生向けの教育プログラム「赤ちゃんを知る授業─赤ちゃんにやさしい未来のために─」を提供することになった経緯を教えてください。
小野:ピジョンは存在意義として「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」と掲げています。赤ちゃんにやさしい未来の実現に向けて、ピジョンではさまざまな活動を行っております。その中のひとつとして、中学生に赤ちゃんにやさしい行動を取ってもらうため、私たちが持っている赤ちゃんや育児に関する知見を生かした教材を制作し、2021年に提供をスタートしました。
一方で、育児の実情に目を向けてみますと、日本は子育てを取り巻く環境が厳しいと言われています。実際に育児をしているお母さん、お父さんの中には子育てに関する周囲の理解不足を感じている方がいらっしゃいます。そこで私たちに何ができるかと考えたときに、まだ大人になる前の世代に赤ちゃんに興味、関心を持ち、育児への理解を深めてもらおうと思ったのです。そこで生まれたのが、中学生向けの「赤ちゃんを知る授業」です。現在、27,000人を超える生徒さんに受講していただいています。
──なぜ中学生を対象とされたのでしょうか。
小野:中学生というのは人生について模索し始める年頃で、社会に目を向けて物事を考える、といった思考が芽生えてくる時期でもあると思います。こうした成長過程にある中学生に赤ちゃんや育児について関心を持っていただき、社会の一員として自分ができることは何かを考えてもらうことで、赤ちゃんにやさしい社会の実現につながると考えました。命の尊さを実感し、親御さんへの感謝の気持ちを自覚できる年齢でもあることから、中学生がより良いタイミングではないかと判断しました。
◆授業見学を通して会社の存在意義に立ち返る
──実際にどのような授業が行われているのでしょうか。
半澤:授業は2つの軸で進めています。1つは赤ちゃんの発育や特徴を伝えるパートです。「赤ちゃんはなぜ泣くのか」「どうしてよく寝るのか」といった赤ちゃんに関する基礎知識を学ぶことで、赤ちゃんを身近に感じてもらおうという趣旨です。もう1つは、自分たちが赤ちゃんだった頃、家族だけでなく保育園の先生や地域の方々などたくさんの人たちに助けられながら育ててもらったことを理解し、自分たちが今、育児をしている人たちにどう寄り添うことができるか、どんな行動をとることができるのかを考えるパートです。赤ちゃんの特性を知り、自分たちが主体的にできることを考えて行動に移すきっかけを提供したいと考えています。
──教材づくりで苦労した点、留意した点などはどんなことでしょうか。
半澤:私たちが持っている知見の何をどんなふうに伝えたら中学生にとって行動のきっかけとなるのか、大いに悩みました。そのあたりはARROWSさんのご助言をいただきながら、学校で使用している家庭科の教科書を拝見したり、先生方の声を参考にしたりしながら教材を作っていきました。
また、ピジョンならではの教材とはどういうものなのかという点でも、ARROWSさんにご協力をいただいて議論を重ねました。ピジョンでは製品開発の際、お母さん、お父さんへのインタビューなどを通してリアルな育児について知見を深めています。赤ちゃんを連れてのおでかけでのお困りごとなど、中学生に理解してもらったうえで、どう寄り添えるかを考える構成としたのは、ピジョンの特性を生かし、中学生という年齢を意識して工夫した点と言えるかもしれません。また、赤ちゃんの誕生や家族の愛情についても触れることで、いのちの大切さや、両親への感謝を感じてもらえる内容としました。
──授業を受けた中学生の反応はいかがでしょうか。
小野:一部の学校では私たちが出向いて授業をさせていただくのですが、初めはどれだけ関心を持って聞いてくださるかなと不安な気持ちがありました。実際に訪問すると、まったくの杞憂で、みなさんすごくキラキラした目で授業を聞いてくださいます。赤ちゃんと同じ重さの人形を抱っこしてもらうこともあるのですが、本当の赤ちゃんを扱うようにそっと大事に抱っこしてくれて。初めての体験を通して感じた新鮮な驚きを言葉で伝えてくれるので、私たちもいつも感動しているんです。
半澤:授業の感想でも「子育てって大変なんだな。自分の両親に感謝したい」ですとか、「今日家に帰ったら、両親にありがとうと伝えたい」「街中で赤ちゃんに会ったらあやしてあげたい」などと言ってくださって、毎回ぐっと込み上げるものがあります。
小野:出前授業はこのプログラムの担当者だけでなく、社内公募で集まった社員と一緒に授業を行います。日々いろいろな業務に携わっていると、自分たちの存在意義を胸に留めながら仕事をするのが難しいことがありますが、授業で中学生たちの姿に触れることで、想いを新たにする社員が少なくないようです。ピジョンがなぜ存在しているのか、自分たちは何のために働いているのか、社員が原点に立ち返る絶好の機会にもなっているのです。
──教育プログラムを作るにあたって、ARROWSとの協業を決めたポイントは何でしょうか。
小野:私たちが持ち得ない教育に関する知見を持っていらっしゃって、日本全国の学校とのコネクションがあることが一番の決め手でした。現場の先生方とのコミュニケーションを緊密に取られているので、今、学校でどんな教育が実践されているのかも熟知されています。私たちのナレッジを教材としてどう表現すればよいのか、随所でアドバイスをしていただきました。教材が完成するまでには多くの工程があり、私たちはかなりこだわりながら取り組んでいったのですが、ARROWSさんはそれにしっかりお付き合いくださって、コミュニケーションを深めながら進めることができました。
半澤:私は教材を作っていた頃は別の部署にいたのですが、当時の担当者からは、授業スライドや動画など制作物のクオリティが非常に素晴らしかったと聞いています。当社のブランドイメージをうまく組み込みながら、中学生にもわかりやすい教材づくりを推し進めることができて、とても感謝していました。
──ARROWSの事業や姿勢において共感することはありますか。
半澤:先生や生徒さんに向き合う姿勢はとても真摯で、ピジョンが赤ちゃんに向き合う姿勢にも通じるところがあるかもしれません。ARROWSの方と話をしていますと、いつも先生ファーストでいらっしゃるところが素晴らしいと思いますし、本気で教育業界を改革していこうと考えているのが伝わってきて、私たちも見習わなければいけないと感じています。
◆子育ての楽しさを知り、未来への希望につなげる
──教育プログラムを通じて、中学生に伝えたいのはどのようなことでしょうか。
半澤:私自身は、赤ちゃんはとても尊くて可愛いということ、赤ちゃんやそのご家族を身近に感じて欲しいと思って活動しています。これからの人生にはさまざまなことがあると思いますが、赤ちゃんや育児に触れる機会は、とても楽しくて人生の糧になるものだということを、これからも示していきたいと思っています。
小野:昨今は核家族化や少子化の影響で、赤ちゃんや育児に触れる機会が少なくなっています。だからこそ、キラキラとした素晴らしい力をもっている赤ちゃんという存在について知ってほしいですし、子育ての楽しさ、素晴らしさも理解してもらえたらと思っています。自分自身が子どもを持つかどうかに関わらず、みんなで子どもを育てていくプロセスを体感する。これは、とても得がたい経験なのだということを感じていただけたらうれしいです。私たちもさらに教育プログラムを進化させて、多くの中学生にメッセージを発信できたらと考えています。