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『Invent&Wander』を読んで


「Amazon」と聞くと、今や大河ではなく、大企業を想い浮かべる人が多いだろう。私はAmazonに関して、なんとなく耳に入った情報だけで、なんとなくECのイメージだった。だけど、『Invent & Wander』を読んで見えてきた私なりの見解はある。ジェフ・ベゾスは、心を大切にし、お客さんの望みを解決し、社会にインフラを創り出し、それでいて社会問題に深く関心を持って取り組んでいるという事だった。ベゾスが社会で話題になる理由が、決して営利だけがすべてという精神ではないことを、言動で示しているからだと思う。

 Amazonの哲学と、より良いものにしていこうという気合いと、失敗を恐れず挑戦する姿。見えないところにこそ本質がある、この言葉が示すように私の知っているAmazonは全体の10%にも満たない。ああ、だからAmazonは世界で多くの人に利用されているのかと納得した。ベゾスが何かに迷った時は、直感と好奇心とさすらう力に頼るといっていた。また、「80歳になった自分が後悔していないか」という指針をもって物事を決断しているようだ。最近は、数値や過去の動向と未来の動向、複雑な意志決定に迫られるような窮屈な雰囲気もあるが、きっと誰だってそんなことよりも、直感・好奇心・さすらう力を大切にしていれば、決して立ち止まらずゆっくりでも前進していけるような気がする。あきらめは数値からできるかもしれない。でも、進める力は必ず自分の内側にある。「大きなことも小さなことから」という言葉が本文中にあった。まさにそうだ。Amazonは決して昔から安泰で全方位から支持されていたわけではない。たった一人の、ジェフ・ベゾスが1994年に構想を練り、両親にお金を貸して貰い、両親が息子の意志を尊重し協力し、他からの資金も調達し、1995年にシアトルのガレージでAmazonは始まった。初めから、ロジスティクスが完成されていたわけではない。初めの方はベゾス本人が郵便局に出しにいっていた。決して、折れない信念を持ち、数十年の間に数十万人いや、間接的な部分も含めればそれ以上の雇用を生み出し、世界への波及は計り知れないものになった。

Amazonが成功した3つの柱。マーケットプレイス・プライム・AWS。これらに共通する最も変わらないコアの部分は、お客さんの需要に応えること。マーケットプレイスは、お客さんが複数の候補の中から、自分にあった商品を見つけ出し、注文することが簡単になった。プライムは、会員制にして送料無料で二日以内に商品が手元に届くことを可能にした。AWSは企業や政府の情報システムの大きな助けになった。

 今や急にAmazonが消えると、恐怖以上の想いをする人が世界中にいる。ましてや人だけではなく政府や企業も。そんなAmazonで働く人々は、伝道師である。Amazonという組織をより良いモノにして、なによりもお客様第一主義を貫いている。今ある経営資源のみから事業を考えるのではなく、お客様の課題解決と快適さを優先している。お金儲けを第一に考える、傭兵を集めた組織ではない。お客さんに商品を届ける為に大切な業務を担っている倉庫の従業員には、他のスキルを身につける機会をつくっている。決して不当な扱いをしておらず、正社員であろうがなかろうが、福利厚生は同じ基準である。そんなところへの気遣いも、本を通して受け取ったベゾスらしさを感じる。

 反対意見を持っていても、その意志を伝えた上で協力する精神をAmazonは大切にしている。このことは、組織として動いていく上でこの考えが普及しているか否かで、組織自体の貴重性がかなり違う気がする。誰だって、自分の意見が正しいと思いたいし、貫きたい。だからこそ、どんなに相手の意見が優れていたとしても否定的で協力することは簡単ではない。反対意見だけど、協力する。これは私も取り入れたい姿勢だ。

なぜ、ベゾスは宇宙に夢中なのか。私はきっと地球に飽きて、地球じゃ物足りなくて他の惑星などを探している。そんな、自分の至福とロマンのためにブルーオリジンを立ち上げたとばかり想いこんでいた。だけど、なぜ宇宙事業に着手したのかを書いていた箇所をみて、私自身の稚拙な想像が恥ずかしくなった。勝手すぎる想像だった。ベゾスはAmazonを立ち上げたとき、既にあるインフラを活用してAmazonが上手く軌道にのったと綴っていた。だから今度は、自分が宇宙へのインフラを整え、次世代の宇宙起業家の開花を望んでいた。また、ベゾスは地球がいかに優れているかを熱く語っていた。だからこそ、脱炭素化を懸命に取り組み、地球にある限られた資源をいかに有効活用するか、どう存続するかを考えた上での宇宙事業という選択だったのだとこの本を読んで知った。
 


 
 この本にでてくる、会議では6枚のナラティブだけが有効であり、その6枚を誰が読んでも同じ解釈にするには、一日では到底不可能で少なくとも1週間必要だと記されていた。私は、さっき読み終えてこの本の内容を6枚にまとめてみようと取りかかって一時間くらいたった今、悟った。6枚を書くには一度読んだ知識だけを広げることが難しい。それに、上記したようにものすごく時間をかけなくてはいけない。だから、今回は、6枚は諦める。だけど、私の心に残った箇所と大枠を連ねてみた。どう伝わるのだろうか。
 話しは変わって、この本を買った経緯はこの本を知ったとき、Amazonについて、ベゾスについて知りたいと思ったことがきっかけだった。何よりも、ベゾス本人視点での文章やスピーチをまとめた本ということ惹かれた。この本は二部構成になっていて、一部は株主への手紙。二部はベゾスが語ったことをテーマ別に分かれているといった内容だった。正直、一部は少し退屈に思えたりもした。なぜなら繰り返し使う言葉が多いし、今までにも聞いたことがあることもあったから。だけど、二部も読み終わり感じたのは大切なことは何度も繰り返し言うということが、いかに優れているのかだった。二年前くらいの株主の手紙なのか、詳しくは覚えていないがその文章の中に「let curiosity be your compass」という言葉を読んだとき、ものすごく心が揺れた記憶がある。それが、この本を読んでなぜこの言葉を使ったのか分かった。ベゾス自身が大切にしていることだった。

 本を読むタイミングは偶然でも、たまに必然に感じるのは、伝わってくるものが沢山あった時ばかりだ。今この本を読んでそう思う。

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