明細書の作成メソッドを学ぼう(後編)
はじめに
DX弁理士®こと特許業務法人IPXの奥村光平です。前回から2週間経ってしまいましたが、明細書作成メソッドの後半を記載してまいります。前回の記事はこちら。
明細書を書く流れ(再掲)
明細書を書き慣れていない方は、とにかくメソッドを学んでください。私は明細書を以下の手順で書いており、経験の浅いアソシエイトや知財塾生にも同じ手順で書くように啓発しています。
技術内容の理解と発明抽出
クレームと各クレームの効果の作成
課題の作成(請求項1の効果に対応)
図面の作成(符号もふる) ←前回の記事はここまで
クレーム抽出リストの作成 ←この記事はここから
辞書登録
5と6を駆使して実施形態の作成
完成したら読み直し(別日推奨)
というわけで残り後半の4つについて書いていきます。
5.クレーム抽出リストの作成
先週までは、クレーム~図面作成までやったかと思いますが、今度はいきなり聞き慣れない単語が出てきて恐縮です(この言葉は私の造語です)。クレーム抽出リストというのは、請求項をコピペして、明細書向けに語尾や表現等を少し書き換えたフレーズのリストを指しています。
といってもなんのことかわからんと思うので例を出しますね。こんなクレームがあったとします。
【請求項1】
辞書データを生成する情報処理装置であって、
前記辞書データとは、入力キー順列と変換文字列とを紐付けたリストで、
辞書データ編集UIを生成するUI生成部と、
前記辞書データ編集UIに対する入力の結果に基づいて、前記辞書データを生成するように構成された辞書データ生成部とを、備え、
前記辞書データ編集UIとは、2次元テーブルのUIで、このテーブルの行及び列によって規定される各セルに情報を入力可能に構成される、装置。
これから、前記等を取っ払って、ちょこちょこ順番を入れ替えて、分解して文にしてみます。
情報処理装置は、辞書データを生成する。
前記辞書データとは、入力キー順列と変換文字列とを紐付けたリストである。
UI生成部は、辞書データ編集UIを生成する。
辞書データ生成部は、辞書データ編集UIに対する入力の結果に基づいて、辞書データを生成する。
辞書データ編集UIとは、2次元テーブルのUIで、このテーブルの行及び列によって規定される各セルに情報を入力可能に構成される。
従属も同じように分解して整理して、クレームすべてを文章化したようなものを作成していきます。このような文章のリストは、明細書のファイルとは別に新規ファイルにまとめて保存しておくといいです。これを私はクレーム抽出リストと呼んでいます。
面倒かもしれませんが、これを作っておいて、明細書を書く際に必要な場面に応じてこれをペタペタコピペしていきます。もちろんこれだけでは足りないので、これらに肉付けする具体的な記載は明細書に記載する必要があります。
つまり、クレーム抽出リストに上がってきた文章をすべて使い切って明細書を書くことになります。こうすることで、クレームのサポート漏れが物理的に発生しなくなります。
実際は、クレームからリストを自動で作成するプログラムを組んでいるので、ボタンを押すだけでクレーム抽出リストを生成することができます。超絶時短です。
6.辞書登録
こちらも力を発揮するので積極的に使いたい技です。すでに図面を書いているので、ある程度、構成要素に符号が振られていることと思います。例えば制御部33、UI生成部331、辞書データ生成部332等です。これを「33」と打つだけで「制御部33」と出るように、単発の辞書登録を行います。辞書登録は、辞書自体を分けることができるかと思いますので、その明細書を書き終わったら、辞書登録からは解放してしまうといいです(OAや関連案件で使う可能性もあるので、とっておくといいかと)
私は、Google 日本語入力を使っていて、これ専用に簡単に辞書登録ができるプログラムも開発していますが、通常のUIでやったとしてもそこまで大変ではないかと思います。
7.実施形態の作成
あとは実施形態を書くだけです。5でできたクレーム抽出リストに記載のクレームを分解した文章を適宜カット&ペーストしていきながら、実施形態を書いていきます。6で作成した辞書もふんだんに使っていきます。ここで、だらだら書いていると品質が下がりやすいので、集中してサクサク書いていくことをおすすめします。
もちろん、書いているうちに結局クレームを手直しすることもあるのですが、なるべくなしでスムーズに書いた方が結果的にいいと私は思っています(まぁなかなか難しいかもしれませんが)
8.完成したら読み直し(別日推奨)
当たり前なのですが、人間なのでどこかしらミスをするため、完成したドラフトはしっかり読み返してください。ぼそぼそ音読するのもおすすめです。このとき完成した日から1日空けた方が客観的な目線で見れてミスに気づきやすくおすすめです。
おわりに
というわけで明細書の作成メソッドを書いてみました。特に5と6なんかやってたら面倒って思うかもしれませんが、品質もスピードも結果的に上がるのでおすすめです。まぁ弊所ではこれを全員システムを使ってラクラクやっていたりしますが。
もちろん明細書作成メソッドは他にもたくさんあると思うので、いろいろ模索してみると面白いと思います。では、また。
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