明細書の作成メソッドを学ぼう(前編)
はじめに
DX弁理士®こと特許業務法人IPXの奥村光平です。今月(2022/6)から木曜日に実務や開発に関するnoteを挙げていきますので、よろしければどうぞ(といいつつ早速初回から1日遅れの金曜日アップロードです)。
今日は明細書の作成メソッドについて書きたいと思います。といってもヘッダの画像の明細書は違うだろ!!って感じですが(笑)
もちろんこのnoteで扱うのは特許出願の明細書です。明細書作成は10年修行だ!上司を真似るんだ!とにかく書け!!みたいな根性論は昔のこと・・・。これから明細書を書けるようになりたい方は、ポイントを抑えて作成メソッドをしっかり習得してもらえれば、だいたい2年もあれば、明細書を1人でかけるようになるかと思います(最初の1年で80%完成のイメージ)。
これから書くことは、知財塾や所内で話してきたことですが、敢えて情報をオープンにすることで、業界全体の活性化や、明細書作成そのものに興味を持ってもらえればいいと感じました。なお、私が対応可能なのは、機械・電気・制御・ソフトウェア・IT・ビジネスモデルといった分野で、化学(物性物理ならギリギリ可)やバイオの分野は門外漢となります。化学だと全然違うんだけど・・・みたいなことがあるかもしれないので、そこはご勘弁ください。
明細書を書く流れ
明細書を書き慣れていない方は、とにかくメソッドを学んでください。私は明細書を以下の手順で書いており、経験の浅いアソシエイトや知財塾生にも同じ手順で書くように啓発しています。
技術内容の理解と発明抽出
クレームと各クレームの効果の作成
課題の作成(請求項1の効果に対応)
図面の作成(符号もふる)
クレーム抽出リストの作成
辞書登録
5と6を駆使して実施形態の作成
完成したら読み直し(別日推奨)
今週は前半の4つについて書いていきます。
1. 技術内容の理解と発明抽出
まずは顧客の技術内容を理解してください。特定顧客を担当するのであれば、顧客の技術分野の理解を深めていくことは信頼に繋がります。近年は製造業ではなくITサービス業の出願を得意とする事務所さんも増えていると思うので、その場合はIT分野の動向や話題のサービス等を知っておくといいと思います(弊所も全出願の半分くらいがITサービス業を占めています)。
案件単位の話をするならば、顧客から渡された発明提案書を読み込んで、ポイントを予め把握してください。一方、ベンチャー・中小企業等、知財部がないお客様の場合、発明提案書の類はないかと思うので、とにかく面談から重要そうなポイントをリアルタイムに抽出する瞬発力を養いましょう。実はこれができる弁理士はあまりいないので、これが得意ならば、あなた独立可能な気がします。
2. クレームと各クレームの効果の作成
発明の内容を理解したら、いよいよ請求項の作成に取り掛かります。もちろん顧客要望によりますが、弁理士の心構えとしてはトップクレームはなるべく広めに(ただし分かっている範囲で新規性は担保すべき)いきたいですね。それに対して、落とし所になりそうな従属をしっかり作り込んでいきましょう。落とし所として狙う以上、各クレームに対応する効果も意識してください。効果というと化学系のイメージを持つかもしれませんが、機電IT系についても、対応する効果は意識しておきたいです(そんなだいそれたものでなくてもよく、なんかいいことあるじゃん💕みたいなものが言えるとOK。)
なお、具体的にクレームの作り方を知りたい!という方もいると思いますが、今日はメソッドの話がメインなので割愛します。
3. 課題の作成(請求項1の効果に対応)
クレームと各クレームの効果が書けたら、次は明細書のうちの課題だけを作成します。課題をどれくらい書くか、という議論は近年twitterの知財クラ界隈でも盛んかと思います。
結論からいうと、最近の実務傾向としては課題はあっさりでよいかと思います。私も昔書いた明細書とか見ると課題書きすぎてて、うわーってなりますが(汗。課題を書きすぎると、せっかく広く作ったクレーム1のサポート要件が苦しくなります。あくまでもクレーム1の権利範囲に見合った課題を作成してみましょう。最近私が書いている課題は、以下のような感じです。
なお、課題をあっさりにしてしまうと、進歩性が…という議論がありますが、それは落とし所の従属をしっかり作った上で、その効果を実施形態中にしっかり書いておくことで、カバーできるかと思います。
4. 図面の作成(符号もふる)
課題までできたら、次は図面を作成します。図面は明細書の実施形態を書くための設計図だと思ってください。実施形態をしっかり説明するために、どんな図があればいいかな?というのを考えましょう。
例えばソフトウェア分野であれば、そのソフトウェアを実行するためのハードウェアの構成、ソフトウェアの機能が分かるブロック図、処理の流れが分かるフローチャート類、参照するルックアップテーブル例、出力される画面の例なんかが定番となります。
というわけで今日は明細書の作成メソッドの前編について書いてみました。続きはまた来週~。
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