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「壊れた心のメロディ」

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学校や、家庭環境、心が荒んで、疲れて。生きづらくなってしまった人へ。 ある繋がりのあるテーマをまとめたマガジンです。
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記事一覧

掌編小説「ここにいてもいいですか」

 可能性という名の花を摘むのは好きですか。  僕の親はどれだけ努力しても、お金を稼げるような人たちではなかった。だから、裕福な暮らしもできなかったし、余裕もなかった。  お金がなくたって家族みんな仲良しで笑っていれば幸せだと母は言う。確かにそうかもしれない。でも、母も、父も僕には幸せそうに見えなかった。  僕は信じていたけれど、どこかずっと腑に落ちなかった。  僕には無限の可能性があると父と母は言ってくれる。でも、この先にある未来が幸せではなく、偽ることでしか手に入ら

1200文字小説「もっともつよい」

 明くる日も、同じ、あの時の後悔を思い出す。  青色の折り紙の裏に書かれた拙い字を僕はじっと見つめる。視線を落とすと、また別に腹部が裂かれているみたいな薄水色の封筒から白い紙がまろび出ているのが見えた。 「委員長」と、凛とした呼ぶ声が聞こえた。声の先にメガネをかけた少女が立っていた。  先生が前に言っていたのを思い出した。「今や君は、プロジェクトのかなめだ。大いに期待しているよ」 「指示をいただけますか?みんなあなたに期待しています。必ず成功させましょう」僕はすぐに行く言うと

千二百文字小説(11/3)plot

 人にどう思われているのか怖い。  マネキンの体に100枚ほど貼られた紙。僕はそれをひたすらビリビリとちぎる。

千二百文字小説(10/30)

 僕には誰にも叶えられない宇宙一の目標がある。これだけで良かったのに。  正直言って、学校にいる人間はバカばっかりだ。学力においても、運動神経においても誰かに負けたことはなかった。そして合理的に物事を判断することでちっぽけなコミュニティには絶対に収まらなかった。だからこそ僕は町1番の人気者なのだ。しかし僕は知ってしまった。それはある、バイト中のことだった。  こんなにも完璧で崇高な人間であるにも関わらず、底辺と同じように扱われてしまうことにまず驚愕した。  がっかりした

千二百文字小説(10/29)plot

 異例の危険度を現在も更新中。私は今も進みつづけている。

千二百文字小説(10/28)plot

 宇宙に星が無数にあるのと同じように、僕も数多の生命体の一人に僕は生まれた。  私とあなたとあなたとかそれぞれみんなは絵の具の様なもの。 

千二百文字小説(10/27)plot

 私の手の中には確かに財布があった。はずだ。しかし一瞬のまばたきの間に財布は消えたのだ。  私の財布。数秒前まで私の手の中にあった。そのまばたきの間、ある言葉が聞こえてきた。「キモい」誰か人に向けられた言葉だった。その言葉に私は気を取られ、手の中の財布はすっかり意識の外にあった。

千二百文字小説(10/21)

 退屈な波は、まるで僕の彼への想いのようにどうでもいい。高校2年生後半、飛空艇の影の下でお前とお前は言った。 「関係なさすぎて言うことじゃないから」 「ほんともうあっち行っといて」  いきなり怖くなった?恥ずかしくなった?僕に散々ああ言っていたのにね。いきなり僕に反発するようなことするんだ。  何かこう、心を抉るような寂しい気持ちになった。影の外へと出て、僕は冷たい風にふかれる。彼らと一緒にいると、またこの抉られるような気持ちが再起し、気分が落ち込むので僕は一人になる

千二百文字小説(10/26)

 僕は本当に醜い人間だって知ってる。  君の秘密を話してしまったのは、うん……一人が怖いからだ。今はこんなにも簡単に言えるけど、僕はあまりにも恥ずかしくてたとえ口が裂けても言えなかっただろう。  謝りたいんだ。ごめん。  僕は本当にバカだった。君から君だけの秘密を僕にしてくれたってことは、僕を少なからず信用してくれていたはずだ。なのに、僕はそれを簡単に自分の愚かさのために使った。  実は、ってもうわかってるかもしれないけど、僕はずっと誰かに必要とされ、大切にされ、何よ

千二百文字小説(10/25)

 ーーだから大丈夫だよ。と昨日母を亡くしたばかりの彼を慰めてやった。 「簡単に…大丈夫だなんて、そんなこと言わないでよ!君にはわからない!」  彼はいきなり大きな声を出した。でも私は驚いたりしない。なぜなら私は彼を恐れたりしないのだから。  君は私にわからないという。でも私だって悲しかった。彼と毎日のように遊んでいたから、彼のお母さんとは小さい頃からの知り合いだし、本当によくしてきてもらっていたから。  だけどいいんだよ。あなたがそうやってうずくまっている間、私はあな

千二百文字小説(10/19)

 私の体は子供たちのかけらでできている。   私たちの心はガラスでできていて、脆く。繊細だ。  比喩なんかじゃない。心だけでなく、体、毛先まで全てがガラスでできている。でも傷ついた体は溶かして伸ばせば治る。祐逸本来のガラスと違うところは、大人になると体が硬くなって、溶かせなくなるということだ。  驚かれてしまうだろうが、言うね。私が今ハマっているのは大人のようなまだ硬くなってい子供を粉々にして、世界にばら撒くことなんだ。特に、子供を割った時に命が消えて固まっていく表情は

千二百文字小説(10/18)

 のっぺらぼう。のっぺらぼう。やつは必ずやってくる。のっぺらぼうは人の顔を奪いにやってくる。  僕は手を合わせたんだ。その日は霧の濃い夜だった。  真っ暗な高速道路に一筋の光が猛スピードで進んでいた。一台の車体が走っている。車の左ドアが開くと、中から誰かが出てきた。それは丸っとしたスーツ姿の男だった。男は車体の屋根にまで這い上がり、トンネルを越える、と立った。  彼の顔は無い。無いのだ。しかし口の辺りの肌がへこんでいて、ニヤリと笑っているようにも見える。  僕はタクシ

千二百文字小説(10/17)

 死体は浮遊した状態で見つかった。  浮いているのだ。寝室で。彼はベッドの上、眠っているところを何かで上から吸い寄せられたように見える。彼の腰に見えないロープが巻いてあって吊るされているのだろうか。いや、手をかざして通り過ぎてもそれにぶつかることはない。  完全に浮遊している。彼は天国に行ったのだろうか。しかし、こんな天国の生き方、あまりにも物理的で何かおかしい。これは、人から魂を抜くときに、魂があまりにも体への執着が強く、体も少しだけついてきてしまったことによる世界のバ

千二百文字小説(10/15)

 月光がフローリングなどに冷たいを与えている。  デジタル時計はひたすらに3を示していた。4では無かったことにほっとしたが、私には少なくとも一握りの恐怖を感じさせた。 「まだ3時か」  せめて4時44分であればよかった。1秒をひたすらに数えて、学校に行く時間まであと4時間27分だと絶望する。  さっきからずっと約30秒ごとに時計と窓を交互に見ている。しかしついに私は痺れを切らして、部屋を抜け出す。  それぐらい重たい頭を抱える。鐘の低い音がする。階段を降りて、踊り場