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円と直線で囲まれた領域の面積の公式

今回は円と直線で囲まれた場所の面積です。一見工夫すれば簡単に解けそうですが、実は数Ⅲの積分を使わないといけないというものです。

まずは求める面積を見てみましょう。下の図の斜線部です。


公式の内容

公式の内容は下のようになります。

$$
上図のように、半径  r  の円において、\\
中心点から  a  の距離にある直線と円に囲まれた部分のうち、\\
小さいほうの面積(斜線部の面積)Sは、\\
S=r(r\arcsin\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}-a\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}})\\
=r^2\arcsin\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}-a\sqrt{r^2-a^2}
$$

$${\arcsin}$$は$${\sin}$$の逆関数です。
つまり、$${\sin\theta=\alpha}$$であるとき、$${\theta=\arcsin\alpha}$$と表されます。
しかし、定義がこれだけだと$${\arcsin}$$の値が1つに定まらない場合があります。そこで、定義域に$${-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{2}}$$を追加します。これでうまく値が1つに定まります。

前提知識 ~数Ⅲ置換積分~

この公式の導出にあたって、数Ⅲの置換積分を使います。
以下に簡単に置換積分の説明を載せます。

$$
置換積分の一般形は、\\
\int f(g(x))g'(x)  dx=\int f(t)  dt   (g(x)=t)\\
つまり、あるxの式g(x)を=tとおくとき、\\
g'(x)  dxのところを\dfrac{dt}{dx}=g'(x)、すなわち\\
dt=g'(x)dxとなるのでこれを用いて置換する。\\
\dfrac{dt}{dx}が計算できなければ\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{1}{g'(x)}を用いる。\\もう少し簡単に説明すると、(xの式)=tとおくときは\dfrac{1}{t'}dt、\\
x=(tの式)とおくときはx'dtをそれぞれdxの代わりに用いる。\\
定積分の場合は積分範囲を置き換えたあとの文字に合わせる。\\
例えば、積分範囲が1→2でx^2+1=tとおくときは、\\
x=1でt=2,x=2でt=5なので積分範囲は2→5になる。
$$

少し例題を見てみましょう。

$${例題:\int_1^3 \dfrac{x}{2x^2+1}  dx  を求めよ。}$$

$$
2x^2+1=tとおくと、dx=\dfrac{1}{t'}dt=\dfrac{1}{4x}dt\\また、x:1→3のときt:3→19\\よって、\int_1^3 \dfrac{x}{2x^2+1}  dx=\int_3^{19} \dfrac{x}{t}\cdot\dfrac{1}{4x}dt=\dfrac{1}{4}\int_3^{19}\dfrac{1}{t}  dt\\\int\dfrac{1}{t}  dt=\log|t|  であるから、\dfrac{1}{4}\int_3^{19}\dfrac{1}{t}  dt=\dfrac{1}{4}[\log |t|]_3^{19}\\=\dfrac{1}{4}(\log 19-\log 3)=\dfrac{1}{4}\log\dfrac{19}{3}
$$

今回はこの方法を使って公式を求めていきます。

1. 考え方と立式

円の方程式$${x^2+y^2=r^2}$$から導出するのは大変なので、とりあえず$${y=}$$の式に変換した半円の式にし、$${r\geqq a\geqq 0}$$として求めていきます。

この形にさえしてしまえば数Ⅱで習う「2つの関数で囲まれた面積」が使え、面積を求めることができます。立式のために、まずは交点を求めます。これは連立方程式を解くだけですね。

$${\begin{cases}y=\sqrt{r^2-x^2}\\y=a\end{cases}を解くと、x=\pm\sqrt{r^2-a^2},y=a}$$

ここまでわかれば立式ができます。求める面積をSとおいておきます。

$$
S=\int_{-\sqrt{r^2-a^2}}^{\sqrt{r^2-a^2}}{\sqrt{r^2-x^2}-a}  dx
$$

グラフを見てみると、この半円は偶関数(y軸について対称な関数)ですから、$${\int_{-\alpha}^{\alpha}}$$は$${2\int_0^\alpha}$$と変換できます。このことから、

$$
S=2\int_{0}^{\sqrt{r^2-a^2}}{\sqrt{r^2-x^2}-a}  dx
$$

ここからはこの式を計算していきます。

2. 式変形

次に式変形ですが、数Ⅲの積分をやっていれば簡単です。

$$
2\int_{0}^{\sqrt{r^2-a^2}}{\sqrt{r^2-x^2}-a}  dx\\
=2(\int_0^{\sqrt{r^2-a^2}}\sqrt{r^2-x^2}  dx-\int_0^{\sqrt{r^2-a^2}}a  dx)\\
=2(\int_0^{\sqrt{r^2-a^2}}\sqrt{r^2-x^2}  dx-a\sqrt{r^2-a^2})\\
=2\int_0^{\sqrt{r^2-a^2}}\sqrt{r^2-x^2}  dx-2a\sqrt{r^2-a^2}\\
ここで\int_0^{\sqrt{r^2-a^2}}\sqrt{r^2-x^2}  dx=Iとおき、Iを計算する。
$$

$$
I=\int_0^{\sqrt{r^2-a^2}}\sqrt{r^2-x^2}  dx\\
x=r\sin\thetaと置換すると、dx=r\cos\theta  d\theta\\
また、積分範囲は0\to\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}\\
よって、I=\int_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}}\sqrt{r^2-r^2\sin^2\theta}\cdot r\cos\theta  d\theta\\
=\int_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}} r^2\cos^2\theta  d\theta\\
=\dfrac{1}{2}r^2\int_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}}1+\cos2\theta  d\theta\\=\dfrac{1}{2}r^2(\int_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}}d\theta+\int_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}} \cos2\theta  d\theta)\\
ここで、\int \cos2\theta  d\thetaは2\theta=tとおくとd\theta=\dfrac{1}{2}dtより\\
\int \cos2\theta  d\theta=\dfrac{1}{2}\int \cos t  dt=\dfrac{1}{2}\sin t=\dfrac{1}{2}\sin 2\theta  であるから、\\
I=\dfrac{1}{2}r^2[\theta+\dfrac{1}{2}\sin 2\theta]_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}}\\
=\dfrac{1}{2}r^2[\theta+\sin\theta\cos\theta]_0^{\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}}\\
=\dfrac{1}{2}r^2(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}+\sin(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})\cos(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}))\\
\arcsinは\sinの逆関数なので、当然\sin(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})=\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}\\
また、一般に\cos\beta=\pm\sqrt{1-\sin^2\beta}であるが、\\
今回は\beta=\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}なので、-\dfrac{\pi}{2}\leqq\beta\leqq\dfrac{\pi}{2}\\
よって、0\leqq\cos\beta\leqq 1より、\cos\beta=\sqrt{1-\sin^2\beta}\\
\sin(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})=\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}より\sin^2(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})=1-\frac{a^2}{r^2}\\
これらのことから\cos(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})=\dfrac{a}{r}\\
したがって、I=\dfrac{1}{2}r^2(\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}+\dfrac{a}{r}\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})\\
=\dfrac{1}{2}r^2\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}+\dfrac{1}{2}ar\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}
$$

$$
この結果をもとの式に戻すと、S=2I-2a\sqrt{r^2-a^2}より、\\
S=2(\dfrac{1}{2}r^2\arcsin\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}+\dfrac{1}{2}ar\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}})-2a\sqrt{r^2-a^2}\\
=r^2\arcsin{\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}}+ar\sqrt{1-\frac{a^2}{r^2}}-2ar\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}\\
=r^2\arcsin{\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}}-ar\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}\\
=r(r\arcsin{\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}}-a\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}})
$$

これで公式の導出ができました。

3. 練習問題

$${下の図のように円周上に点A,Bをとり、A,Bを通る円の接線を引いて\\その交点をPとすると、\angle APB=90^{\circ}で、AP=BP=1である。\\このとき、青で塗られた部分の面積を求めよ。}$$

↓↓解答↓↓




解答

$${AP=1,\angle APB=90^{\circ}より円の半径は1\\円の中心をOとするとAO=BO=1なのでAB=\sqrt{2}\\OとABの距離はAO=BOよりABの中点からOまで引いた\\線の長さに等しいので、三平方の定理を利用して求めると\dfrac{\sqrt{2}}{2}\\公式に代入して求められるのは囲まれている領域のうち\\小さいほうの面積なので、今回の場合は全体から引いて求める。\\円全体の面積は半径1の円の面積より\pi\\また、先ほど求めたようにr=1,a=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\\したがって、求める面積をSとおくと\\S=\pi-(r^2\arcsin{\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}}-ar\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}})\\=\pi-(\arcsin\dfrac{1}{\sqrt{2}}-\dfrac{1}{2})\\=\pi-\dfrac{\pi}{4}+\dfrac{1}{2}\\=\dfrac{3}{4}\pi+\dfrac{1}{2}}$$


【発展】今回の積分の応用例

今回出てきた$${\int\sqrt{r^2-x^2}  dx}$$の形は今回求めた公式以外にも応用ができます。しかも超有名な公式です。

※$${\int\sqrt{r^2-x^2}  dx}$$を$${x=\sin\theta}$$と置換して求めた値$${\dfrac{1}{2}r^2(\theta+\dfrac{1}{2}\sin 2\theta)+C}$$(Cは積分定数)までの途中計算はこれまでの導出でやっているので省略します。

(1) 円の面積の公式

まずは円の面積の公式です。これは単純で、求めた公式に$${a=0}$$を代入した値が半円の面積と等しいことを利用します。

$$
S=r^2\arcsin{\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}}-ar\sqrt{1-\dfrac{a^2}{r^2}}にa=0を代入すると\\S=r^2\arcsin 1=\dfrac{1}{2}\pi r^2\\これが半円の面積と等しくなるので、円の面積はこれを2倍して\pi r^2
$$

もう一つの方法として、$${4\int_0^r \sqrt{r^2-x^2}  dx}$$を計算するという方法もあります。これは半円のグラフのさらに半分の面積を求めて、最後に4倍して円の面積を求めます。

$$
4\int_0^r \sqrt{r^2-x^2}  dx=2r^2[\theta+\sin 2\theta]_0^{\frac{\pi}{2}}  …(*)\\=2r^2(\dfrac{\pi}{2}+\sin\pi)\\=2r^2\cdot\dfrac{\pi}{2}\\=\pi r^2
$$

$${(*):x=\sin\thetaと置換すると積分範囲はx:0→rのとき\theta :0→\arcsin 1\\  \arcsin 1=\dfrac{\pi}{2}であるから積分範囲は0\to\dfrac{\pi}{2}}$$

(2) 球の体積の公式

次に球の体積の公式です。これは数Ⅲ積分の「回転体の体積」の公式を使います。回転体の体積の公式は以下のものになります。

$$
xy平面上において、y=f(x),x=a,x=b,x軸で囲まれた領域を\\
x軸を軸として回転させた立体の体積をVとおくと\\
V=\pi\int_a^b (f(x))^2  dx
$$

今回は$${f(x)=\sqrt{r^2-x^2}}$$とおき、$${x=-r}$$から$${x=r}$$までの範囲をx軸について回転させた立体が半径 $${r}$$ の球になります。

$$
V=\pi\int_{-r}^r (\sqrt{r^2-x^2})^2  dx=2\pi\int_0^r r^2-x^2  dx\\
=2\pi[xr^2-\dfrac{1}{3}x^3]_0^r\\
=2\pi(r^3-\dfrac{1}{3}r^3)\\=2\pi\cdot\dfrac{2}{3}r^3\\=\dfrac{4}{3}\pi r^3
$$

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