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一箱古本市に出会ったきっかけ


本屋さんをやってみることになったのは、初夏のこと。


門前町というエリアが大好きで、1166バックパッカーズさんに泊まって、亀の湯さんに浸かって、ナノグラフィカさんで朝ごはんを食べて、というスタイルの旅を、ここ数年、何度か繰り返していた。

旅する中でずっと気になっていたのが、大福屋さん。
喫茶店であり、古本屋さんであり、シェアハウスでもあるという、気になるポイント満点のお店。


そんな大福屋さんを初めて訪れたのが、今年の夏の始め。

細い路地の中、町に馴染んだ古民家の入り口には、ゆらりと揺れる緑の暖簾。
おばあちゃんのお家のような二階の喫茶で、とろりとした桃ジュースをいただいた。
一階の間借り本棚では数冊の本を選び、そのときにヒトハコというリトルプレスも購入した。

平積みされたヒトハコは、なんだかきらきらと煌めいて見えた。
リトルプレスを読むのは好きだけれど、自分で買ってみようと思ったのは初めてのことだった。


帰り際、大福屋さんのオーナー、望月さんとお話する時間に恵まれ、そのとき、秋の大福屋古本市のお誘いをいただいた。
そしてわたしは、即答した。

「本屋さん、ずっとやってみたかったんです」

元気いっぱいに、そう言い放った。
たぶん、驚いていたのは自分だった。

わたし、本屋さん、やってみたかったんだ。
わたしはわたしの奥にあった望みを知った。


家に帰ってから、さっそくヒトハコをめくり、一気に読み終えてしまった。
ときめくときめく、ときめきレンジャー、ときめきレインボー、そんな心持ち。

この日からわたしは、本屋さんになるその日を夢に見て、どきどきとわくわくを胸のポケットに忍ばせて、秋までの毎日を過ごしたのだった。


いろんなご縁や巡り合わせのおかげさま。



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