創作大賞2024応募作品『白い花』
静かな夜だ。霧のような雨が朝から降り続いている。
私のアパートの向かいにある5階建てのマンション、204号室で男と女が口論をしている。もう1時間は口論をしているだろう。内容はわからないが、どうも心中穏やかではない感じだ。
突然、女が泣き出した。その場に力なく座り込んだ。男は女の前で立ち尽くしている。女はすぐに泣くのをやめた。男が床に転がっていたボックスティッシュを女に手渡した。女はティッシュを受け取り鼻をかんだ。男も女も黙っている。散々口論した後だ。お互い疲れ切っているに違い