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バウムクーヘン

まあるい一切れのバウムクーヘンを頬張った。記録された年輪がほろほろと崩れて、諄く甘い味が口いっぱいに広がる。欠けたバウムクーヘンはランドルト環と重なり、頭の中でぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる。雑多な言葉と放置された感情が、まわって回って、回り続けて、欠けた部分から零れ落ちた。瞳から溢れた涙はバウムクーヘンで満ちた頬を伝って、静かに床へ落ちた。


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