死ななくてもいいんじゃない?
夏休みに入って調子がいい
ご機嫌なのか躁なのか、はたまたその両方か
おそらく服薬により躁がそれなりに抑えられていて、制御できない苦しさがないからだと思う
ノリで舌ピを開けたという話をしたと思うが、その3日後に友人のバイト先のカレーを食べに行った
さすがに痛かった
そのあとは水族館に行った。涼しげなソーダを飲みながら恋バナをした
あまり人を誘わない内気な友人の誘える存在になれていたことが嬉しかった
1週間ほど前は高校の友人が2人泊まりに来てくれた
地震のニュースが真っ盛りで不安だらけだったが、久しぶりにたくさん心から笑った
夕方集合かと思いきや3人揃ったのは22時前
深夜のたこ焼きパーティー
高校生の頃はしなかった裏話や現状の愚痴、恋バナ、人生のことを語りつくした
そのあと朝方に眠って起きてお昼にはシングルベッドに3人川の字で昼寝をした
そして散らかすだけ散らかして夕方に嵐のように去っていった
合間を縫ってバイト
みんな夏休みだからバイト終わりにそのままオールなんかしちゃう
最高に若気の至り。大学生って感じ
そして昨日まで京都府北部(宮津、伊根)にいた
5〜6年の付き合いになるがいつも3人で会うので彼女と2人で会うのは初めてだった
なぜ宮津かというと燈籠流しと花火大会があったから
この夏で全てを終わらせる前に花火大会を見てみたかった。あと綺麗な海
そう思って調べて出てきたのが宮津燈籠流し花火大会
京都の北なら海も綺麗だろう
燈籠流しも見たことがない。見てみたいとは思っていた
とりあえずこれに行くことを決めた
最初はひとりのつもりだったが紆余曲折を経て前述の友人と行くことになった
友人には前日の晩から泊まってもらい昼頃出発
宮津までは3時間以上かかった
早めに出て駅弁を買って車内で食べた
窓の外は緑が溢れていて都会を離れていく感覚が心地よかった。やっぱり都会は性にあわない
宮津から2駅先にある旅館に向かった
出迎えてくれた旅館の方は大阪を彷彿させる豪快で朗らかな方だった
「花火大会に行くんです」
という話をしながらふと
「燈籠って私達も流せるのかな」
と呟くとすぐに関係先に連絡をしてくださった
流せるらしいので流すことにした
必要最低限の簡素な部屋
少し古い感じがこじんまりとした旅館とよく結びつく
裏が海水浴場なので荷物を軽く置いて海を見に行くことにした
波が高く入れる状態ではなかったが、よく見えるところまで行って写真を撮ったり撮ってもらったりした
この日の私の服はお嬢様みたいでとてもかわいい
燈籠は亡くなって一年以内の人に対して流すものらしい
それを聞いてひとりの女の子の存在が頭によぎった
遠くのあの子に私は何もできていないから、せめて今日燈籠を流したい
自己満足でしかないけれど
どんな流れでそんな話を始めたか覚えていない
「いなくなることが幸せだったんだと本気で思う。でも本当に望んだことだったの?って、それを言い出したらキリがないんだよね、考えてしまうけれど。死人に口なしだから」
残された側はそれが幸せだったと思うことでしか納得できないこと、でもそれさえも簡単に納得できる理由ではないこと
それと同じぐらいいなくなった彼ら彼女らにとってそれが最善の選択であることもわかるから心が苦しかった
誰かが
「お前のせいで○○は死んだんだ!!!」
と言ったとしたってそれは推測でしかない
でも残された側はそうしてどこかに問題を見つけたいと思う
答えの出ない問いを考え続けることはあまりにも苦しいことだから
私は私がいなくなったらそれは私のせいだというだろう
いなくなるための物理的な動きも精神的な動きもすべてが自分によるものだから
でもきっと他者がそう言うことを世間はきっと残酷と評すのだろう
次第に平静を装った声が震えて鼻をすんっと啜る音が響く。それに気付いた友人が隣に来てくれる
何にもいいことは言えないしかける言葉の正解もわからない
”泣いてくれた”
そう言う人もいるのかもしれないが、涙と感情がイコールではないからこれもまた正解だと思わない
そもそも正解なんてなくて相性の問題なのだろうけれど
いなくなりたかった人といなくなってほしくなかった人、両方が幸せになれた世界線はなかったのか
わからない答えを探そうとした分だけ涙になる
これを書いている今も視界が揺れている。どうしようもなく痛い
少ししんみりして、そもそも燈籠がなくなってたら無理だしなと笑って花火大会に向かった
燈籠流しから始まるため、まず燈籠を買いに行く
燈籠に書くことも多少は決まっているようであった
受付の人に
「本名がわからない子なんですけど、、、」
そう言いながらまた泣きそうになった
「ニックネームとかでも大丈夫ですよ」
そう言われて1セット購入する
一言を添えている人もいたので私も名前がわからない分そうすることにした
あの子がいなくなって初めて泣いた
いなくなったこと、会おうねなんて約束がもう果たせないこと
何よりあの子が自分が思うよりずっとそばにいたこと
私はようやくわかったのだ
燈籠を組み立てて写真を撮り係の人に渡す
これだけ多くの人が1年以内に亡くなったのかと思うと胸が痛くなった
燈籠が手元から離れると気持ちも区切りがついたようで少しすっきりしていた
「お腹すいた!食べないと生きられないからね」
ふたりで燈籠流しの前に屋台を味わうことにした
からあげの列、前に並ぶご夫婦らしき二人
年齢的には私の両親ぐらいだろうか
男性が
「燈籠ってさ、死者を弔うのに紅白なんだよ。変だよな」
と言っていた
女性が
「悲しむ行事じゃないからやない?」
というと男性は
「いや、悲しいでしょ。人がなくなってるんだよ?」
と返す
燈籠の紅白は私たち残された人のためかもしれない
聞こえてきた会話からふとそう思った
私たちが前を向くために、新たな日々を歩むために紅白なのかもしれない
伝統なんてフル無視の大馬鹿な考えだとは思うがそう思うと少しだけ前を向ける気がした
友人と合流して屋台で購入したものを食べていると燈籠流しが始まった
座った席ではほとんど見えなかったが、後から見せてもらった友人の写真や動画が遠目で見るよりずっと綺麗で前に行ってもよかったなと少し後悔した
その後の花火は
「見る場所より人だよねー」
と言いながら戻ってきてくれた友人と一緒に見た
花火を見ながら赤だからリチウムだし黄色だからナトリウムだとかドンッという音が後から聞こえてくるの音より光の方が速いことを示してるなとかナチュラルに考えてしまう私は情緒がないが、それをいつか子どもに伝えたいと思う私はやっぱり教師になりたくて、少しだけ向いているのかもしれない
迫ってくるような花火に圧倒され、打ち上げられた音に地面が揺れる
花火を見ているというよりは花火を感じているという方が正しい
生きているから感じられるんだなあとそっと思った
帰りの電車は満員だったがそれでも2両なので田舎を感じる
友人と離れてしまったが、友人が隣の老婦人に写真を褒められているのが見えてニコニコした
後から聞いたら写真集を出すよう言われたそうだ
さらに写真だけで優しい人だとわかると言われたそうだ
友人の写真が老若男女問わず褒められるものであること、優しそうな人に友人の優しい人柄が伝わっていたことが嬉しい
旅館について即座に温泉に向かう
こじんまりとしてはいるものの温泉なんて何年ぶりだろう?
ゆっくり湯船に浸かってから部屋に戻った
サンダルによる足の疲れもすっかりなくなっていた
翌日は朝から海辺へ
朝日を浴びながらパンを食べた
雲の切れ間に太陽が差し込んでいてまばゆい朝だった
このために買った白いキャミワンピで海辺を歩く
足元だけ海に浸かり、この前の瀬戸内海とはまた違う海の姿を堪能した
海で砂だらけになった足を水道で洗い、海の家に行く
カルピスと三ツ矢サイダーは海との相性がぴったりだった
この日は伊根に行く予定
伊根の舟屋は授業で習ってから一度見てみたかった
伊根湾まで行き周遊船に乗る
カモメに餌やりもできたので餌をあげた
カモメの餌はかっぱえびせんなので一つだけもらった
白い船内とエメラルドの海、茶色い舟屋
曇り空だが開放感があふれる景色だった
宿泊可能な舟屋もあるらしく、今度行きたいねと話をした
路地を歩くと舟屋と舟屋の間から海が見えた
「路地裏の階段降りたら海みたいな景色見たいんだよね。江ノ島だっけ?」
そう聞くと
「あれは江ノ島だね」
と教えてくれた
元々江ノ島に行きたかった私は
「今度春こそ行こうね、江ノ島」
そう言う
少しずつ次の春、次の夏の約束を口にするようになっていた
別の友人のことも夏休み明けに会いたいなとお誘いをした
本当は夏休みになってうっすらわかっていた
死んでしまったあの子にいくら焦がれても自分は死にきれないこと
私はこんなゴミのような世界でも生きてしまいたいんだということ
つまり、死にたい気持ちは脳のバグである可能性が高いということ
どこかでわかっていた
それと同時にただのバグが一人の人間を支配し生死を揺らがせてしまうという事実が恐ろしくて泣いた
それでも忙殺されてしまう日々はあと一か月もしないうちに帰ってくること
そうなれば私のもともとの双極性障害という病に拍車がかかること
あまりにも想像が容易な未来と自分の抱える状態に
”怖い”
初めてそう思った
本音を自覚したとて生きることがハッピーになるわけではない
今も生きることは怖い
でも本音では生きてみたくて、それを何としてでも望んでくれる人がいるのであれば、私がすべきことは自分と向き合うこと
明日の通院は真面目に行くし、修学支援のことも真面目に考える
これもまた今までの死ぬ死ぬ詐欺と同じことになるかもしれないけれど、このnoteはそう思った日もあるよっていう記録
まずは夜ご飯、食べようね!