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子どもでいていいんだよ

2022/4/13(水)

担任であるK先生に進路のことで面談をしてもらった

自分では考えつかなかったことを勧めてもらってとても緊張したけれど勇気を出して良かったな、有意義な時間になったなと思っていた


「ありがとうございました」そう言って荷物を持ち上げた時だった

先生に突然、こう言われた

K先生「今日話聞いててお前も誰かに否定されたりしてきた経験があるんかなって思ったんやけど」(福祉や支援等、心のお話をしていたので)

私「ないわけじゃないけど…友達の中で学校が居場所だっていう子もいたんで」

間髪入れずに「お前はどうなん?」と聞かれる

「え?」
間抜けな声が出た

K先生「お前としてはやっぱり学校の方が居場所なん?」

言葉に詰まった

家は居場所なはずだ、あの子より
学校は嫌いなはずだ
でも
今日した話、親に言ったことあったっけ?
腕のこと知ってるのって先生だけじゃないっけ?
欠課数も言えないって言ったな
あれ?
これじゃどっちがどっちだかわからない

私「何を居場所と言うかによるというか…」
尻すぼみでそう言った

K先生は「まぁそうやけど」と笑った

K先生「お前の中では大人に頼りたいみたいな、言い方悪いけど甘えたいみたいな気持ちはあんの?」

図星だった
そんな大人になれない自分が嫌でより一層俯いて口を閉ざした

K先生は「あって全然普通やで?」そう付け足した
図星だけど言い難い
K先生のことだきっとそこまで見抜いてる
その言葉で私は恐る恐る頷いた
そして誤魔化すように笑った

でも先生は笑わなかった
真剣な顔で頷きながら「いや普通やで子どもなら」と言った
更に「大人でもそういう時あるもん」と言ってくれた

「先生だってあるよ。何かあって落ち込んだ時とか勿論どうしたんや?言うて声掛けてもらえるのもやけど、尊敬してる先輩とかに肩ぽんぽんってされたりするだけですごいほっとするもん。だから水和がそう思うのは普通やで」

いつも淡々と話す先生も落ち込むこと
そしてそんな時は誰かに支えてもらっているということ

その事実がもたらした影響はどれほど大きいものか

幼い頃から大人でいるしかなかった
大人になれなくていいと言われたようだった
甘えたい頼りたい支えてほしい そんな願望を肯定された気がした
それもしょうがないやつだとか君は大人気ないなぁではなく、“子どもだもんそうだよね”とそれが当たり前だと言われることにこの上なく安心した
それは生まれて初めての事だった


「ごめん話しすぎたな」

そう言われて話に惹き込まれていたことに気付く
ハッと我に返った私はすぐに首を振った


帰る支度をして扉に向かって歩き出す

「先生で良かったらいつでもよしよししてあげますよ」
そう真顔で少し冗談めかして言う先生は教室で見る先生と変わらなくて、私はふふっと笑って照れ隠し。
本当は嬉しかった。『あなたはちゃんと子どもだよ』と『子ども扱いしてあげるから』『子どもでいいから』そう言われた気がした

そしたらまた少し真剣な顔つきで「水和はちゃんと考えてると思うよ。いつもこうやって紙にまとめてきてくれるし。これすごい助かってるんやで」と言われた

私は少しはにかんだ
紙にまとめてくる子は私しかいないから変に思われてたらどうしようと思っていた。読まれるのも恥ずかしくて本当はすごく嫌だった。でも先生が嘘でも助かると言ってくれたからこれからも続けてみようと思えた

K先生「水和は頑張ってるやん」

私は思わず首を振った

「頑張ってないの?」と少し笑いながら返される

私は頷きながら曖昧に笑った

先生は「そうなんや」とだけ


先生に促されるまま面談室を出る

最後にK先生は「お前は大丈夫や、な?」と言った

きっと不安そうな顔をした私

先生はぽんぽんと確かな力で私の肩を叩いてくれた

ブレザー越し それでもその手は温かかった


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