大人になってゆくんだね
今日は大学に行ってきた
今後のこと、配慮のこと
たくさんの大人がメモを取りながら真剣に話してくれる様子はやっぱり安心材料だった
先生の説得で腕と薬のことも伝えることになった
支援担当の人の顔色は変わらなかった
みんな不安だから貴方だけじゃないと言われた
不思議と嫌な気はしなかった
先生と2人で帰った
ホームで「生きていけるよ、お前は」と言われてハッとしていると次は「しばらく会えないね」と言われた
本当に終わってしまう気がした
「ぼーっとしてどうしたの」
そう尋ねられたので
「終わってくなあって。なんかやっと卒業した気がする」そう言うと
「それは良いことや。そうやってみんな巣立ってく」
と言われた
来年度の話を聞いた
「配属どこなの?」と聞いても教えてくれなかったので「ケチ」と少し拗ねると先生はカラッと笑った
来年度も担任を持つらしかった
先生に担任してもらえる子は幸せだねと心の中で呟いた
「お前は顔出すやろ」そう言われた
頷いて「居てな」と言うと先生は明快に笑った
「知らんわ」とだけ言われた
「来たら子ども扱いしてあげるよ」とも言われた
恥ずかしさを感じたからこそ開き直って「して」と頼んで
「いつまでも子どもやから」そう言った
「もう成人してるんじゃないの」と言われる
「してるけどぉ」と駄々っ子な私
ねぇ先生知ってる?
先生、みんなに私のパパ扱いされてたんだよ
そんな関係ももう終わる
こうして話せるのも本当に本当に最後なんだと思うと寂しかった
駅に着くまでの時間
行きはあんなにも長くてパニックを堪えていたのに帰りはやけに早くて心が痛かった
私が降りる駅に着くと先生は扉の横で手を振ってくれた
私は深く頭を下げた
本当に終わるんだ、胸が痛いね
乗り換えた電車で音楽を流した
卒業式でちらりとも涙を見せなかった私はこの時初めて目を潤ませた
喪失感が私を埋めつくしていた
家に着いて携帯を見ると先生からメールが届いていた
色んな話ができてよかったね
とか
ホンマにしんどかったら1人でも学校に来たらいい
とか
とりあえず4月から頑張ってみて
とか
先生は最後まで温かかった
その温もりが痛かった
色んな話を聞いたけれど結局私は先生が好きだった
出会えてよかったと思っている
先生みたいになりたいと思っている
そう思うことは自由だろうか、きっと自由だ
誰かにとって悪い人でも、私にとっては恩師
それでいいじゃないか
ようやく向き合えた別れの痛みは私の胸を食い荒らしている
これが巣立ってくことで、それが喜ばしいことならば、甘んじて受け入れようか
そして痛みも温もりも抱いて、たくさん泣いて笑った日々のこと、どうか褪せずに覚えていられますように