【詩】ぜんまいを巻いて

その機械仕掛けの人形は

ただ一切の無駄もなく
臓器と言う名の歯車を回し
思考することもない

欠陥品の人形であった

その人形を掘り起こした手があった

瓦落多を掻き分け
人形を掘り起こした手は

淀みのない澄んだ水の如く
それはそれは潔いものだった

然し澄んだ水と泥水が溶合えば
濁った灰色の水となり
覆水盆に返らざる

それでも優しく人形を包む
その手は優しさを連れてくる
その手は苦しみを連れてくる

それでもその手にしがみつく

優しいその手にしがみつく

これが生きるということか
或いは死ぬということか

その手はぜんまいに手をかけた

ああ、澄んだ水にはもう戻れぬ

何故灰色の水になろうとするか

動き出した人形の
最初に抱いた問いであった

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