◇ライブな時間◇角野隼斗ツアー2022
久しぶりのピアノソロコンサート!
でも会場の空気は、今までのクラシックコンサートとは、全く違っていた。
角野隼斗さんのソロコンサートは、今回が初めて。
かなり過去の記憶をたどると、ブーニンなどショパンコンクール入賞者の演奏会を中心に聴きに行っていた。
その中でも、音色の美しさで一番記憶に残っているのは、タン・ダイソン。
(今回のショパンコンクールにも審査員として参加、教え子は1位と6位に入賞するなど、今では有名な指導者になっている。)
今回の生演奏を聴いたことで、私の一番は完全に塗り替えられた。
ザ・シンフォニーホールの席は舞台に近く、360度客席がある。
(久しぶりに、3階まで満席なのを見た。)
前半はショパン、休憩をはさみ後半はガーシュウィン、合間に自身のオリジナル曲も入れている。
クラシックとジャズが混じったプログラムでさえ、過去にはなかった。
開演からフルスピードで、新鮮なピアノ演奏が繰り広げられる。
圧倒的な魅せる力!
ひとときも目が離せない!
ふと、周囲の空気が自分と同じ状態になっていることに気づいた。
客席が、息をするのを忘れるほど集中していることに驚く。
クラシックコンサートでもない、バンドのライブでもない、不思議な空間だった。
きっと、みんなが同じ思いを共有していた。
ショパンのエチュード??と思った曲で、ついに涙が落ちてしまった。
あとでプログラムを確認すると、角野隼斗/ショパン:胎動 となっていた。
ポーランドで、ショパンコンクールの舞台を経験したからできた曲?
ショパンと角野隼斗のコラボ曲のようだった。
言葉にできない感動・・・。
彼にはクラシック曲であっても決して退屈させない、“力”がある。
何に魅了されているのか・・・演奏を聴きながら考えていた。
エンターテイメント性という言葉でも、まだもの足りない。
心から音楽を楽しむ「少年」のようなワクワク感が伝わってくる。
聴衆みんなが魔法にかけられる。
もしかしてこれは、ショパンやリストが即興を交えながら自作の曲を披露した、パリの貴族たちのサロン?
客席が舞台に近いホールだったせいか、パリの貴族たちもこんな感じでショパンやリストに熱狂したのだろうか、と想像してしまった。
とにかく今までに見たことのない、新しいピアノだった。
後半はガラッと変わり、ジャズ音楽になる。
話すのは苦手と言いながらマイクを持ってMCをしてくれて、みんなをhappyにするために演奏していると話す。(そういえばいつもサービス精神旺盛!)
前半のクラシックよりさらに自由で楽しい、キラキラのジャズ。
これもまた新しいジャズピアノ演奏に聴こえてしまう。
声が出せない現状でも確かに聴衆が熱狂している点で、これはコンサートというより“ライブ”に近い、と思った。
ドラム演奏でつかんだリズム感で、日本人には難しかった“グルーヴ”を作れることも、彼の魅力のひとつ。
最後のラプソディー・イン・ブルーは、オーケストラなしのピアノ演奏なのに、今まで聴いたどの演奏より華やか!
気持ちの良いこの音をこのまま音源にして、ずっと聴いていたい!と思った。
(そして、もうひとりの大好きなピアニスト、藤井 風さんとのジャズセッションが聴けたら・・・と勝手に妄想していた。)
アンコールでは、いきなり一曲だけ写真撮影OK!のサプライズ。
最後の英雄ポロネーズは、しなやかなバネを感じるワクワクの演奏!(やはりこれが一番!!)
新しい時代の音楽を、生演奏で聴けることに心から感謝した時間だった。
(思いがけず3月に大好きな宮川彬良さんとのコラボで、再びラプソディー・イン・ブルーを聴けることになり、ワクワクはまだ続く…。)