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2024年も映画が面白くてよかった!!(今年観た映画振り返り)

映画まとめ5年目にして初めてクリスマス前に書き始めてます、圧倒的進歩!!圧倒的成長!!(このあと、映画2本分だけ書いて12月30日まで放置してました・・)

というわけで今年もまとめて書きます2024年観た新作公開映画を振り返り、全部やると長いんである程度絞り込んで!では行きましょう。

↓今年のベスト10はこちら


TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー

2023年一発目は『キラー・カブトガニ』、2024年は高校生悪霊憑依映画で開幕です。毎年正月に何を見てるんだ。この映画、まずキャッチコピーが良くて「霊、ヤバい、キモチいい。」 IQが3くらいしかなくて怖い。

女子高生が友達のパーティーで遭遇したのはSNSで流行りの90秒憑依チャレンジ。石膏で固められた「切断された霊媒師の手」を握り「TALK TO ME」と語りかけると霊が体内に入りこむ──
という本作、降霊の様子をtiktokに投稿するうちにエスカレートし、超えてはいけない憑依制限の90秒を超えたところから異変が、という展開でA24作品なのでもれなくチャラい高校生がひどい目に合うんだけど、チャラい陽キャのパーティーを舞台に「仲間内で浮かないために過激なSNSチャレンジしてしまう」「仲間がヒドイ目に合う様子を動画撮影のカメラ越しに見る」「どれだけいいねが付く動画を撮るかが大事」という現代日本にも共通する危うさ、社会問題を背景にしているんですね。違う場面だけど子どもの運動会に行ったときにほとんどの大人が我が子を「スマホのカメラ越し」に見てて同種の怖さをちょっと感じました。そんなテーマを内包してることはしてるんだけど、シンプルに陽キャ高校生/大学生がヒドイ目に遭う映画みんな大好きだろ~~?Yeah~~!!俺も大好き~~!!

A24公式通販掲載の「手」$110。パーティーハンド、じゃねえよバカ笑。
これ1本でパーティーも大盛り上がり!


笑いのカイブツ

ネタを考えてる時しか息ができないような青年ツチヤが笑いで成功を夢見る青春映画

実在する放送作家の自伝を映画化、らしいけど主演・岡山天音の日陰者の怪演が圧倒的!とにかく何者かになりたい、何かを生み出したい、何かやってみたい高校生・大学生は絶対観たほうが良いです。いますぐ公園で無意味に素振り1000回とかやりたくなるよ!ネタを書く以外のすべての能力をどこかに置いてきてしまったコミュ障、社会生活不適合っぷりが愛おしくなるけど、現実でそばにいたらまあまあシンドイ人だなというのもよーくわかる、でもすべからく若い時のエネルギーってそういうものと引き換えにしか手に入らないんだと思う。とにかく主演・岡山天音の演技が圧倒的(2回目)でおススメ。圧倒的すぎて共演・菅田将暉の演技が"巧すぎる"のがマイナスポイントになる稀有な映画だった!

ネタのためにバイト中ラジオを聴くツチヤ。SNSがない時代でよかった


宇宙探索編集部

廃刊の危機にあるかつての人気UFO雑誌「宇宙探索」。ある日、編集長タンは、中国西部の村に宇宙人が現れたという情報を掴み、仲間たちを引き連れて広大な中国を西へと向かう。そこで彼らを待ち受けていたのは、予想と人智をはるかに超えた出来事だった…。

アラフィフになっても宇宙人を信じ、社会人としてのスキルや社交性皆無の編集長タンが世間に馬鹿にされても宇宙人を探しに行く姿と仲間たちの珍道中は「ドン・キホーテ」と「西遊記」を下敷きに、それと同時に「社会性を獲得できなかった、社会から取り残された中年の悲哀」も描く、笑いと共に胸が締め付けられる一作。それでもラスト、見つけたものに心が揺さぶられる。こんなゆるふわロードムービーなのにズルいだろ笑 
なんと北京電影学院(映画学校)の卒業制作で制作されたという一本、中国辺境映画が大好きな人にも超おススメ。マジで中国は広い。

中国辺境を征く社会生活不適合者様御一行


Saltburn/ソルトバーン

オックスフォード大学の貧しい奨学生オリバー(バリー・コーガン)が接近していく貴族のフェリックス。莫大な資産を持つフェリックスの実家カットン家に入り込んだオリバーは、次第にカットン家に影響力を増し始め──

『聖なる鹿殺し』『グリーン・ナイト』『イニシェリン島の精霊』での演技ですっかり存在が不穏!画面に映るだけで不穏!でお馴染みバリー・コーガン。そんなイメージ、本人のキャリアにマイナスでは、、という懸念も吹き飛ばす怪演が本作でも!よっ、不穏芸人!もはやバリー・コーガンのための当て書きだろこれ。
貧しい生まれで、金持ちクラブであるオックスフォードに馴染めない階級外のオリバーに優しく声をかけ接するフェリックス。でもこの優しさって「やせた野良犬を拾ってくる」「自分と住む世界が違う哀れな人間を掬い上げる、選ばれし者の特権再確認」でしかないんですよね(現に劇中で、オリバーの家庭が不幸でないことを知ったフェリックスは失望する) そんな階級差劇かと思いきや人間関係の崩壊に至る仕掛けや、起こる犯罪の示唆が画面に仕込まれていたりと演出も凝ってるんだけど、ラストのバリー・コーガンがすべて持って行く!!!!「あのラスト見た?」ですべて通じる映画です(そのラストも、オリバーが通るルートは「フェリックスがオリバーに屋敷を案内したルートと同じ」というブラックな演出)

安心してください、多分はいてません


カラオケ行こ!

ヤクザと中学生がカラオケに行く!この一本足打法だけでこんなに面白くなるのどうなってんの。
綾野剛演じる狂児の歌うXJAPAN「紅」が破壊的に音痴、中学生聡実くんが嫌々カラオケ練習に付き合う、を軸に展開されるストーリーなんだけどカラオケの上達という本筋と並行して描かれる聡実くんの成長、つまり
・狂児(違う世界、初めての価値観)
・部活(部長としての自分、責任感)
・自宅(安心できる家族、子供でいられる場所)
・映画部(親友と過ごす対等な関係性)
という4つの異なる世界のバランスが変わっていくことで、一歩ずつ大人になっていく聡実くんが描かれる。特に終盤、友人と過ごした真っ暗の映画部部室のカーテンを開け放つのは、居心地の良い揺籃からそして親友との閉じた世界だった少年期からの旅立ちを意味してるわけです。めちゃくちゃ笑えて、土台のストーリーもしっかりし、走攻守そろった2024年No1邦画コメディ、超おススメ!君は「紅」を歌うだけでこんなに笑いをとれるか!?

綾野剛が歌う「紅」、何かの間違いで紅白出演してほしい


哀れなるものたち

Pornhub製アルジャーノンに花束を! 身投げした女性に胎児の脳を移植し誕生したベラが、知性と尊厳と女性の自立を獲得するまでに悪趣味と狂気を添えて。怒涛のセックスシーンで育まれる人間性、マンスプレイニングからの解放。女性の性の自己決定や自立を問う映画はほかにもあるけど、やり方ってもんがあるだろう!!!!ディズニーチャンネルで配信していいのかよこれ、絶対ディズニー出禁だろ!というプリンセスベラによる裏女性史。
めちゃくちゃに面白いんだけど、親と一緒に見るのだけはやめてください。お茶の間が凍るどころじゃありません。

衣装が抜群に良いので衣装映画としても最高すぎ


バッドランド・ハンターズ

マブリーガン、マブリーブレード、フルウェポン兄貴が見れるのはバッドランド・ハンターズだけ!!

北斗の拳meetsマッドマックスな世紀末世界で、なんとマブリー兄貴が!武器を手に取ります!別にショットガンなんか撃たなくても兄貴クラスになるとビンタを50mくらい発射することくらい可能だと思いますけど、さすがに強すぎて映画が15分で終わってしまうから武器を持っているんだと思います。銃器だと弾切れの弱点あるしね。銃を持つことがハンデになる男、マ・ドンソク。映画の内容は・・よく覚えてないけど兄貴が誰かをボコボコにして面白かったです。

どう見ても悪役側である。


ボーはおそれている

2024年No.1不条理映画!ユダヤ人であるボウ(※劇中ではボウ表記)にとってのユダヤ人受難史、特にヨブ記を下敷きにユダヤ人にとっての神と自由、ユダヤ人社会にとって絶対である母の支配を描き劇中にはヨブ記を示唆する水のモチーフが大量に登場し、母の支配という背景を理解していると理解が進む・・んだけどそういうのはいいので、ボウの受難を最初から最後まで受け止めましょう!「突然アパート前で襲撃してくる狂気の男」「いきなり群衆に占拠される自宅」「交通事故」「親切に看病してくれる医者の家でも襲われる」etc…ただひたすらに襲われ運命に翻弄されるボウ、君はこの狂気の180分に耐えられるか!ホアキン・フェニックスに襲い掛かる、予想の斜め上空300mをいくトラブルを観察し続ける最悪のモニタリング。中年オジサンがヒドイ目に遭う映画ってなんでこんなに面白いんでしょうか。あなたが見たことないタイプの映画がここにある。

※一応マジメに文脈の解説

ずっとこんな顔になる


犯罪都市 NO WAY OUT

シリーズ第3弾!異常なペースで続編が作られ犯罪都市シリーズ、今作の公開後(※2024年2月日本公開)7か月で第4作目が公開されます!バカ!

今作もいつも通りマブリー兄貴が悪い奴をボコボコにします。何も足さない何も引かない(©サントリー山崎)ありのままのマブリー兄貴の鉄拳。いつも通り、だがそれが良い。たぶん韓国人にとってのおふくろの味みたいなもんだと思います、犯罪都市。シリーズ10作撮るつもりらしいんですがこのペースだと3年後くらいに達成できると思います。大好きです、全部観ます!

悪役が輝くのがモブ相手だけという稀有なシリーズ(兄貴相手だとボコられるだけだから)



アメリカン・フィクション

売れない黒人純文学作家モンクが、「なんで俺の芸術は評価されずにあんなゴミみたいな小説売れるんだよ!」とキレて覆面小説家として書いた”リアル・犯罪・ストリートライフ・黒人小説”がまさかまさかの大ヒット、、

モンク本人は、物静かで超インテリ作家なのに世間が求める「超バッドアス」な黒人を演じるギャップが笑える一本なんだけど、これって我々の実生活でもある話なんですよね。職場、学校、様々な人生の場で演じる姿と本当(だと思いたい)の自分。人種、差別、性別、様々なステレオタイプと現実のギャップ。「その配慮って誰のためなん?」という昨今の行き過ぎた風潮も皮肉ったうえで、兄弟・家庭、親の老後など中年以上に切実な家族の問題と家族愛も底流にある一本。こんなに沁みるコメディだと思わなかった、めちゃおススメです。

「サツに追われてんだ、わかんだろ?」と背伸びしてタフなワルを演じるモンクさん(優等生)


落下の解剖学

海外で大絶賛!各種映画祭総ナメ!「落下して亡くなった夫は事故か殺人か?罪に問われた妻の裁判の行方、そしてカギを握る盲目の一人息子──」というフランス製サスペンスなんだけど、なんでかわからんが全く刺さらなかった!面白い映画なんだと思う、日本でも評判高かったし。でも、う~~ん?って感じ。

ですが!今日皆さんにご紹介したいのは!犬!犬なんです!ぶっちゃけ殺人の行方はどうでもいい!一家の愛犬スヌープくんの演技が、誇張なく映画史上No.1級!!!!!!!!!!!!本当に映画見ながら「嘘だろ!?これCGか、人間入ってるだろ!?」と叫びそうになる超演技。エンドロールを確認して本物の犬だとわかったときの衝撃。たぶん3か月くらいトレーニングしたらセブンでバイトできると思う。「おでん、つゆ多めに入れときましょうか?」的な気遣いとかできちゃうタイプの犬。

演技が凄すぎてカンヌに呼ばれた犬(本名:メッシくん)


52ヘルツのクジラたち

海の見える一軒家で暮らす女性がある日出会った、育児放棄された少年。彼女と彼のそれぞれの過去と、秘められた事件が──
という大枠で映画自体も面白いんだけど、見どころの一つが
杉咲"不幸なほど輝く"花 vs "西野と書いてビッチと読む"七瀬!

本作でも存分に発揮される杉咲花の「不幸になるほどバフがかかる」演技力に一歩も引けを取らない、西野七瀬の「育児放棄して男と遊び歩くクソビッチ」っぷり。劇中で2人が対峙するシーンがあるんですけどマジでゴジラ対コングかと思った。あれは地球が割れるって。西野七瀬の「あ~~~昨日ドンキにいたよね!!??」感が凄いです。
それにしても本作、たぶんプロデューサー、監督、脚本家が原作を好きすぎるんでしょうね、135分にしては詰め込みすぎでは????と思うくらい色んなことが起こるんですが、振り返ると「よくこれ135分に収めたな・・」と思う内容なので成島出監督、凄すぎんか。

宮沢氷魚ってモラハラ顔だよな、と思っていたので最高のモラハラ・オブ・ザ・イヤーでした



DUNE 砂の惑星part2

超大作だし今さら書かんでも、と思ったけど書きますDUNE!このクラスのSF金字塔をしっかり映画化し、しかもPart1を超えてくるってのはやっぱ超偉業なんですよね。スター・ウォーズと並ぶクラスのSF超大作をリアルタイムにシリーズ観れる幸福を噛み締めましょう、果たして3で終わるんでしょうか??いいよあと2~3作撮ってくれても!

事前に84年リンチ版DUNEを見てしまったのだけが失敗でした。大事なシーンでフラッシュバックする浮遊デブ。



オッペンハイマー

新作の製作発表されるたび「先生の新作観るまで死ねない・・」と映画ファンの寿命を延ばす、ジムより健康に効くクリストファー・ノーラン大先生、最新作。
言わずと知れた「原爆を作り出した男」オッペンハイマーの生涯を描いた一本です。今作でも相変わらず時系列が入り乱れる時系列シャッフルを行ってるんですけど、カラー/モノクロなど時間軸と視点を表す法則を理解すれば「いま映っている映像がどの時間軸/誰の視点なのか」ちゃんとわかる作りなので先生の映画としてはめちゃくちゃ親切設計。さすがの先生も、新作のたびに一定数ある「わかりづらい!」「は??」みたいな声に悩んでたんだなーと笑ってしまいました。かわいい。原爆を扱っていることで日本では「原爆の軽視」「被爆のエンタメ化」みたいに一大バッシングが起きましたが、見てみるとちゃんと「罪を生み出してしまった男の苦悩」が描かれています。それでいて、オッペンハイマーの映画と思いきや別の男の復讐劇、ドラマも描かれる多層構造。さすがの一本でした。

激似アインシュタイン、さすがに笑っちゃった



ビニールハウス

しんどい!不運と希望が相乗りし破滅へ連鎖ドライブする最悪のピタゴラスイッチ!

シングルマザーの貧困のため、ビニールハウスで暮らす訪問介護士のムンジョン。真面目に働く彼女に訪れたほんの少しの魔が差した瞬間。良かれと思ってやったのに、女性が陥る転落への道、これぞ韓国映画。こうなってしまうと人間って、どこから道を間違えてしまったのか、、、と辿るとどこまでも果てしなくそれこそ生まれた環境まで遡ってしまう。そうなるともう自分の人生の否定、自己否定しか残されていないので、見ないフリして聞こえないフリして無理やり前だけ見るしかないんですよね、、善人しかいないのに結果が悪夢になる皮肉。女性の不幸に対する解像度が圧倒的に高いと思ったらやはり女性監督だった、イ・ソルヒ監督まだ29歳。凄すぎる。

主人公とは別に不幸な女性がいてそれもまたしんどい、しんどさの玉手箱や



スペースマン

妻と不仲に苦しむ宇宙飛行士アダム・サンドラーと宇宙生物ハヌーシュの奇妙な友情─

話のスケールが深夜2時の磯丸水産!!!!宇宙でやる必要ないだろ!!!!やたらと「地球人既婚中年男性」の悩みに詳しい宇宙生物ハヌーシュ、鴻上尚史さんくらい的確です。「ハヌーシュのほがらか人生相談」を朝日新聞に連載してほしい、大人気間違いなし。相談する不仲の原因はほぼアダム・サンドラーの男の身勝手さによるものだし、ハヌーシュは蜘蛛型だし、そもそも主人公ヤコブは妊娠中で身重の奥さんほったらかして宇宙ミッションに来てるし、女性人気は圧倒的に望めない本作ですが、世の男性は迷ったら見てみてください。ハヌーシュが誠意をもって答えます。焼鳥とビール準備してから再生ボタンをどうぞ。

あなたのお悩み、ピシャっと解決!



インフィニティ・プール

某国孤島の高級リゾートで島民を事故死させてしまう作家の男。犯罪は即死刑になる島と知り狼狽えるが、金を払えばクローンが代わりに死刑になると説明を受ける。つまり金さえ払えば犯罪フリーの島─そこから始まる狂気の宴、セックス!ドラッグ!フリー殺人!

『ザ・フライ』『裸のランチ』『ヴィデオドローム』のデヴィッド・クローネンバーグ監督の息子、ブランドン・クローネンバーグが監督した本作、親子揃ってなんて映画を撮るんだあんたらは。「自分と同じ姿、顔のクローンが身代わりに死刑になっていく様子」を見学していくうちに、死んだのはクローンか自分かわからなくなり加速度的に増していく狂気。社会って自由が過ぎると狂ったもん勝ちになるんだなと逆に冷静になる一本、『X/エックス』『Pearl/パール』で最高の顔芸を見せてくれたミア・ゴスが今回も最高の顔を見せてくれます。

安心してください、ダメな人しか出ません



アイアンクロー

必殺技「アイアンクロー」で一世を風靡した父・フリッツの野望「自身のプロレス団体を全米一にする」を叶えるためヘビー級王者獲得を宿命づけられた四兄弟の実話ベースストーリー。

「アメリカ版巨人の星」的に超絶スパルタ教育の父フリッツに鍛えられプロレスラーになっていく四兄弟の姿って、一昔前の日本のプロ野球はじめプロスポーツ選手の家庭にも結構重なる姿だなーと思うんだけど、この家族の場合父親の経営するプロレス団体が就職先なのでもう一家の生活すべてをプロレスに捧げてる。しかも不幸な事故などで次々と兄弟が亡くなっていく(実話)様は「呪われた一家」と評されていたそうで、家族が崩壊していく様は業が深く、A24作品だし見るかーと軽い気分で観たら完全にヘビー級映画でした。
とはいえ、ザック・エフロンはじめ四兄弟が完全に体を仕上げたバキバキのバキで繰り広げるプロレスシーンは超よく出来てるし、根底にある兄弟愛・家族愛がしっかり描かれた最高映画だった。親子の愛は時に互いを縛る呪いでもある。ラスト、泣いたね。

威嚇するレッサーパンダ、ではなくアイアンクロー



パストライブス/再会

2024年最高の「恋愛にならなかった」映画です!
あの時選べなかった選択、言えなかった言葉、叶わなかった思い、今の幸せと、選ばなかった沢山の別の人生。そういうものに折り合いつけながら生きていくのが人生なわけですが。
韓国で育つ12歳の男女、思春期を前に女性はアメリカへ引っ越してしまう。成長し、偶然ネット上で再会した男女は交流を深めながら時間だけが過ぎ、お互いの人生がある程度見えてきた36歳、NYで再会する──
"時間と場所"を軸にした男女の物語。互いにかつて抱いていた恋心は鮮明に覚えていながらロマンティックにボールを渡さない作りが秀逸、30代以上に超オススメ!

構図とカメラと2人の動きで過去現在未来を表す計算しつくされたラストの美しさ



再会長江

SNS総フォロワー1000万人超え「中国で最も有名な日本人」(らしい)、竹内亮監督が長江を遡上していくドキュメンタリー。

10年以上前に長江を旅した時に出会った人々にまた会いに行くという趣旨で、火野正平のにっぽん縦断こころ旅、みたいな感じと言えば近いのかな。こころ旅見たことないから雰囲気で言ってるけど。ドキュメンタリーとしては緩いんだけど、上で紹介した『宇宙探索編集部』と同じく、中国辺境好きの私に超刺さりました。映画のハイライトしては、中国奥地に暮らすチベット族の少女ツームーとの再会が感動的なんだけど、少女時代のツームーが空を見上げ「空にも道があるの?(※飛行機を知らないツームーが毎日上空を行く飛行機を眺め、空に道があると思っている)」と監督に尋ねるシーンやその他にも経済開発で消えた村、急速な近代化の中で昔ながらの荷役で日々の生計を立てる老人など、現代中国の激動が詰まっていて全シーン最高に面白いです。ここまで書いて思ったけど電波少年のヒッチハイク旅とかに近いノリかも。多分将来消える暮らしや変わってしまっている暮らしの記録、女性が男性より強い村などあと10年後にはどうなっているんだろう。たどり着いた長江の源流はとても感動的で、死ぬまでに必ず行ってみたいと思った。

なんと大人になり実業家になっていたツームー。超サクセスしてて衝撃



成功したオタク

ある日、「推し」が逮捕され「性犯罪者のファン」になってしまった女性が、混乱し「犯罪者のファンである自分も加害者なのか?」と悩み、そして同じ思いをしているだろうファンに話を聞きに行く韓国ドキュメンタリー

いやー、すっごいドキュメンタリーだったな!ちなみにタイトルの『成功したオタク』とはアイドルに認知されてるファンのことを韓国でこう呼ぶらしい。見ての通りオ・セヨン監督は20歳そこそこの女子学生なんだけど、元々彼女も成功したオタク。逮捕された同じアイドルのファンを訪ねていくんだけど、このドキュメンタリーが凄いのは温度と空気感。完全にカメラなどないかのように映し出される女性たちの「友達の家に遊びに来たと錯覚するような感覚」を覚えるドキュメンタリーみたことない。取材対象に同意、共感しながら相手に話させる天性の才能というか、人たらしのナチュラルな才が随所に現れてて凄かった。へたしたら10年後、マイケル・ムーアみたいな世界的ドキュメンタリー監督にでもなるんじゃなかろうか。”元”推しの裁判を傍聴に行くときのモノローグ「初めての高速鉄道に乗って行くのが裁判所だなんて思ってなかった」に爆笑した、マジでセンスある笑

この空気感凄くない?だるっだるのゆるっゆる笑



ゴッドランド GODLAND

辺境の島アイスランドに教会を建てに行く若いデンマーク人牧師の話、犬が超かわいい!

若者が超過酷な自然(※旅の序盤で唯一の理解者である通訳が川に流されあっさり死んだり)の前にどんどん心が荒んでいく人間味溢れる一本。日本でいえば北海道開拓史のような映画なんだけど、ロクに食べ物も無い氷の大地の旅、開拓の暮らしで人間の命の軽さが凄い!欺瞞、猜疑心、試される大地!不思議な手触りの映画で、ものすごく印象に残ってます。

たどり着いたアイスランドの村、一安心と思いきやこの後も色々起きます



異人たち

山田太一原作と、日本版映画「異人たちとの夏」の英国リメイク。ロンドンを舞台に、幼いころ両親を亡くしたアダムがある日訪れた生家には、両親がかつての姿のまま暮らしていた──

「あのまま、すべてが変わらずそのままだったら今頃どうなっていたんだろう」という誰しもが思うif、もう手が届かない失ったものへの追憶を描いた本作は、日本版と違い主人公が同性愛者男性になっていることで失った両親と別に「永遠に(生物学的に)親になれない自分」というもう一つの親の要素が加わり、より複雑な人間ドラマとなったことで最高でした。同性愛者カップル、互いに親になれない者同士が「失ってしまった親代わり」になるシーン、「親から授かったものを子に継げない、同性愛者の苦しみ」にこんなアンサーがあるのかとシビれましたね。私が知る限り同性愛の描き方が一番繊細で精緻なアンドリュー・ヘイ監督、実は自身が同性愛者を公言していてだからこそと思う手触りの映画です。同性愛者同士の週末だけの行きずりの恋を描いたヘイ監督のデビュー作『WEEKEND/ウィークエンド』に対するアンサーにもなっていて、この『WEEKEND/ウィークエンド』も超おススメ。一連の映画でヘイ監督が一貫して描くのは人間同士の切実な関係性で、見終わった後、本作の原題『All of Us Strangers』(私たちは皆知らないもの同士)がどこまでも沁みる一本です。

日本版『異人たちとの夏』もおススメ。片岡鶴太郎が良いんだよ、ほんとだって。



辰巳

ニッポン・ノワールの大傑作がインディー映画で出たぞ!配信に無いと思うんでとりあえず予告編だけでも見てみて。裏家業の解体屋(バラシ屋)辰巳が巻き込まれた殺人、追われる女と追う男、犯罪と日常。韓国映画の独壇場だったこのジャンルで日本代表を張れる一本です。とにかく全編こだわりまくった映像とカット、緊張感とアクション、シビれましたね。『アウトレイジ』以来の全員悪人っぷり、主人公辰巳の殺された元恋人の妹を演じる森田想が、信じられないほど治安の悪い女を演じます。圧巻!

森田想、邦画ヒロイン史上トップクラスにガラが悪い笑


ロードハウス 孤独の街

80年代同名映画のリメイク。かつてUFCファイターだった凄腕格闘家のダルトン(ジェイク・ギレンホール)が酒場の用心棒となり、酒場を乗っ取ろうとする街のマフィアを相手に大暴れ!以上!!!
いやーさすが元ネタが80年代映画、超絶シンプルでいいですね。マジでこれだけです、すがすがしい。あとは恋愛パートもあった気がするけどだいたい暴れてるだけなのであんまり重要ではない。バキバキに仕上がったジェイク・ギレンホールと戦う、ガチのUFCチャンピオン、コナー・マクレガーの怪獣バトルみたいな殴り合いを堪能してください。伏線?謎?演出?細けぇことはいいんだよ!これだけ暴れまわって警察が来ないこの街の治安はどうなっているんでしょうか。そうそう、この手の映画に欠かせないサービスショットですがコナー・マクレガー(↓の左の人ね)が全裸フルチンで走ります。どこに需要があるのかはわかりませんが、一番笑いました。ナイスフルチン。

実写版ゴジラ対コングじゃないんだぞ


悪は存在しない

『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督の最新作。グランピング場建設に揺れる山村を舞台に、建設側と住人側の人間模様が描かれるんですが基本的にはほとんど何も起こらない。明確な答えや定義が明かされるわけじゃないので「わけわからん」という評価が多かった気がするけど私は大好きです。その人物の属する「場」によるコミュニケーションの違いを描いてるんだけど、個人的には少しずつズレている人間の可笑しさによるトラジコメディだと思ってる。都会と山村、それぞれで描かれるその人たちの違い、見えているもの見えないもの、それが生むズレや悲劇。かなり好き。

このリモート会議が最高。こういうしゃらくさいプランナー、マジで多い笑



またヴィンセントは襲われる

低予算・フランス製・不条理スリラー!
ある日突然、「目が合った人に襲われる」ようになったヴィンセントの不幸を描く終末サバイバルスリラー。目が合った会社の同僚にいきなりPCでぶん殴られたり、向かいのアパートの人に襲撃されたり。「変わらない日常だったのに、普通だったはずの人々に襲われるようになる」って要はゾンビ映画なんですよねこれ。特殊メイク無しでゾンビを表現した超アイデア映画です。次第に気付く、目が合った人でも襲われない法則や「襲われる人たち同士の地下ネットワーク」の存在とか、アイデア大勝利映画!襲われないために重要な相棒として犬が登場するんだけど、かなりの犬かわいい映画でもあります。大がかりなハリウッド大作じゃなくても面白い映画を作れることを証明する一本、どんどんヴィンセントがかわいそうになってくるのでおススメ笑

本人たちは必死だけどオジサン同士の泥レスは悲惨すぎる


水深ゼロメートルから

夏休み!補修!部活!学校のプール!どれも生活からなくなって久しい単語すぎるな!
舞台は夏休み、女子5人水のないプールでの1日。水泳の補修代わりにプール掃除を命じられた女子高生たちの会話劇。仲の良い友達との間にある小さな軋轢、友達だったはずの関係、将来と現在。
大人になった今となっては、忙しい日常と社会で「気づかないフリ」をしていくことに慣れてしまったそんな細かいわだかまりや悩みを、高校生たちはぶつけ合い渡し合っていく。この距離の近さと遠さ、言葉の選び方、選べなさ。あーめんどくせぇ〜と言いそうになる悩みと、他人との衝突。そうなのだ、青春ってめちゃくちゃめんどくさいから素晴らしいのだ。青春とはつまり対峙しあうことである。

バカをやる余白もまた青春



無名

トニー・レオン×ワン・イーボー!ほとばしる色気と男臭さで2時間押し切る中国製スパイ・ノワール!
1940年代の上海を舞台に、中国共産党・日本軍の秘密工作員たちが入り乱れる謀略と事件、というものなんだけどクリストファー・ノーランよりヒントの少ない時系列シャッフルがおこなわれるので、劇場初見時は一瞬なにがどうなってるかわからなくなったけど、気を付けてみてると時系列がわかる作りになってるので大丈夫です。ただ流し見してると絶対にわからなくなるので家事しながら見る映画としては相性最悪。トニー・レオン大先生の色気が大爆発してるので激シブオジサンたちのスーツ堪能映画としてもどうぞ。クラクラするほどカッコいい。

こんな目立つ色気で諜報員もクソもない気がする



デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前後章

2024年に観たSF映画で最高傑作だったのがこちら。突如出現したUFOと女子高生たちの日常青春ジュブナイルSF。女子高生×宇宙人×地球の命運、キミの命は世界より重いのか?

ただ前後編の映画だからなのか、ぜんっぜん売れなかったらしい。こんなに面白いのになー。でもわかる、2本見ないといけないってめちゃくちゃハードル高いよね。だがしかしそのハードルを乗り越えてくれると、面白さは絶対に保証します、4話完結(4時間)のドラマだと思ってホラ。3.11後の世界だから生み出された、第9地区からセカイ系まで90'sチルドレンが咀嚼し血肉となったモノを凝縮した、青春SF。敵とは?味方とは?線引きをするのは誰なんだ?いやー前後編最高だった!おススメ!

こう見えてハードSFなんだぜ


関心領域

悪名高きアウシュビッツに隣接する邸宅で暮らす収容所長一家の、あまりにも普通の日常を描く一本。

劇中ずっと、かすかに聞こえてくる叫び声や焼却炉の音はどれも虐殺されてゆくユダヤ人の発するものなんだけどそれが日常の音になっている一家は、意に介さず食事をし家事の相談をし、子供は遊び家族の団欒を重ねていく。
たしかに異常なんだけど、この映画の感想でしばしば見かける「ナチスがどれだけ酷いかを知った」とかはちょっと本質からズレてる。この映画は「あなたもこうなる」と投げかけてるのだ。それは消滅させられるユダヤ人であり、ナチスや虐殺者側でもある。あなたも簡単にこうなる、どちらにでも。だから終盤、あるナチス将校が時空を超え、次元を超え、我々現代の観客の"視線"に気付く。人類に対する罪を見られていたと将校は悟る、でも我々に起きてしまった虐殺は止められない。だからこの映画は問う、我々観客に「常に悪を監視しているか?無関心を決め込んでいないか?無力を理由に気付かないフリをするなら、お前は所長一家と同じ、自分の生活にしか関心領域のない人間だ」と。その無関心がアウシュビッツに今も積み上げられたユダヤ人たちの靴を生んでしまう、というメッセージ。

危険を顧みず収容所に食物を差し入れ続けた実在の少女。劇中で唯一彼女だけ「体温のある人間」としてサーモグラフィーで撮影されている



マッドマックス:フュリオサ

みんな大好きマッドマックスの最新作、”顔面力”アニャ・テイラー=ジョイのためにあるような映画です。キャラ・世界観映画なので好きな人は死ぬほど好き、そうでない人にはサッパリという映画ですね、中身は特にないです。だがそれがいい。とはいえさすがジョージ・ミラー監督、中盤の「ウォーリグ(戦闘用タンクローリー)襲撃シーン」(※上の画像)の出来が白眉で、「ウォーリグ目がけ、前後左右上空から敵が襲ってくる」3Dアクションシーンがすごすぎ!
こういう前後左右カメラが切り替わる映像って、視点の中心がどこかわからなくなって位置関係が不明な映像に絶対なるんだけど、各襲撃者の中心にウォーリグが必ずあり、それぞれのカメラが補完しあうようなカメラワークが計算されている職人芸。バカ映画なのに作り手のIQは超高い。3頭立てバイクとかバカの具現化みたいな乗り物が出る映画なのに。あと何作か作るんだと思いますけど、この調子でもっとバカになっていってほしいですね。シリーズ最高にウォーボーイズがかわいいです。

なんでそんなにかわいいんだよお前ら


ありふれた教室

学級崩壊映画です!舞台はドイツ、盗難事件をきっかけに中学校内で起こる疑惑と対話、不信と不和、対立と偏見、論理と感情。主人公の若手女性教師カーラが、問題解決に立ち向かうんだけど「学校という職場内の力学」や「保護者が移民家族であることの軋轢」など本当に一筋縄ではいかない。舞台がドイツなので、保護者や上司相手にもある程度「No」や主張をハッキリ伝えるんだけど、それが言いづらい日本の学校とか気が狂うだろうなと思いながら見ました。予告編や公式サイトは精神崩壊サイコスリラーのように扱ってるけど、倫理を問う真っ当な映画でおススメです。
教室に詰め込まれる社会の縮図、恐ろしいのは犯人をハッキリ示唆する作りなのに実は作中では徹底して犯行も犯人も映さないミスリード、観客の民主主義と法治主義が試される100分!

えぇっ・・!



ライド・オン

待ち合わせの時間が空いたので暇つぶしに観たら大当たり!老いて一線を退いた名スタントマン=ジャッキー・チェンが、ひょんなことから現役復帰し、疎遠で不仲だった一人娘との仲も修復し──

劇中、不仲だった娘と2人、自分が行った数々のスタントをダイジェストにしたビデオを古びたテレビで娘と2人で見て距離を縮めるシーンがあるんだけどそこで流れるのが「プロジェクトA」「ポリスストーリー」を始め、実際にジャッキーが行ってきた数々の伝説的アクション!!!!こんなの泣くってマジで!!!!実は現実のジャッキーは娘と不仲で絶縁状態らしいけど、この映画はジャッキーが人生最後に願う、「娘と関係修復したい」というifのストーリーなんだろうなと思ったあたりからもうダメ、劇場中ボロ泣きでした。往年の酒場格闘アクション、ハシゴ格闘アクションに加え馬術アクションも盛りだくさん、涙あり笑いありの人情エンタメ格闘アクション、マジで大満足1000%映画。ジャッキー・チェンは永遠にジャッキーでした、ナメてごめんなさい!!!!!!最高です!!

馬術アクション、マジですごすぎた



ドライブアウェイ・ドールズ

爆裂下ネタ・レズビアン・ロードムービー!
『ノー・カントリ―』『ファーゴ』のコーエン兄弟の弟、イーサン・コーエン監督作。
アメリカ縦断ドライブ旅に出たジェイミーとマリアン、レンタカー代を浮かすため車の配送(レンタカーを拠点まで運ぶバイト)で旅をすることに。ところがその車のトランクにはマフィアのブツが積まれていて──

マジで冒頭から下ネタオンパレード、裏を返せば「女性だって下ネタ言うし自由な性がある」という性の自立とウーマンエンパワーメント映画でもあるんだけど、こんなにディルド出てくるガールズムービーありなのかよ笑 たぶん人生で一番ディルド見ました。本当にくだらなすぎて爆笑したさすがイーサン・コーエン!

若手注目女優ビーニー・フェルドスタインも、もちろん爆裂下ネタかまします



あんのこと

人生で一度は見ておいた方がいい映画ってあるんですけど、これです。毒親家庭で、売春で稼いだ日銭を親に巻き上げられ残りもクスリに消えていく、主人公あん。刑事に逮捕されたことをきっかけに薬物更生プログラムに参加でき、自治体の支援を受け、シェルターに入り、紹介された介護施設で働く喜び・感謝される喜びを初めて知り、、という過程であんが喋るようになっていく、言葉が増えていくのが感動的。だってそれまでは「言葉を必要としない、コミュニケーションを求められない人生」だったわけですから。生まれて初めて人間としての居場所を手に入れていく。だがしかし、ある日毒親に居場所がバレ、、という積み上げたものがまた崩される無限賽の河原地獄。本当にしんどい。でも、これは私やあなたから見えてないだけでこの世のどこかで必ず起きている人生なのです。終盤に向け、さらに辛さが増していくけどそのしんどさの中で、あんが残そうとした希望を絶対に見届けてほしい。この映画は実話を基にした作品なので。主演・河合優実が圧倒的すぎる。

スクリーン越しにこちらのメンタルもやられる河井青葉の解像度高すぎ毒親


ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

70年代、名門寄宿学校を舞台にクリスマスに帰省できなくなった3人で過ごす年末年始。
「再婚相手の新しい夫と旅行に出かけるのであなた帰ってこないで」と母親からクリスマス休暇直前に告げられた、高校生アンガス。寮に居残りになってしまったアンガスの監督として「今年の寮番」を務めることになった学校の疎まれ者、古代史教師の独身男性ハナム。彼らの食事を作る、息子を亡くしたばかりの料理長メアリー。

斜に構えた皮肉ばかりの問題児アンガスと思いきや、ハナムだって偏屈で臆病だから女性にアプローチできずずっと独身だったり、学生に見栄張ってるけど古代史の著作を「私はいつでもやればできる」と先延ばしにして同年代に引け目を感じてるコンプレックスの固まり。そういった弱い部分をお互いが見せあいながら、次第に歩み寄っていく。この映画は「親を失った(と感じている)アンガス」「パートナーや子供を持てなかったハナム」「息子を失ったメアリー」の3人が、疑似家族になっていく映画なんですね。だって家族って仲の良さだけじゃなく「お互いの弱みをさらけ出す」ものじゃないですか。実際の結婚だって、それまで他人同士だった者たちが家族になる。そんな家族の成り立ちを思う、とてもとても良い映画です。それにしても、全員口が悪く皮肉ばかりで最高!

男同士、安い同情をしないラストが最高



温泉シャーク

大好き!!!!!!!サメ映画後進国の日本に突如あらわれた希望、日本には大谷翔平・久保建英・温泉シャークがいる!!さすがにそれは言い過ぎ!

特に説明するほどのストーリーはないんですが温泉地・S県暑海(あつみ)市に現れた温泉シャーク対ポンコツ人間!科学と筋肉、全ての力を結集しサメに立ち向かう!何言ってるかわからんだろう、俺もわからん!良いサメ映画に必要な要素「そうはならんやろ」がマシマシ、世界よこれが日本のサメ映画だ!!!!!!!!!!
個人的に、サメの鳴き声が「シャ~~ク!!!」だった時点で100点でした。

これで完全にダメだった



密輸1970

韓国アクション・歌謡曲・ノワール・シスターフッド・サスペンス・サメ映画!!!!この全部盛りがすごい2024!!!!

これぞエンタメ映画、2024年最高のエンタメ全部盛りハッピーセットです。70年代韓国歌謡曲がガンガンに流れる中、貧しい漁港の海女たちが団結し、密輸に手を染めつつ強かに生きる強い女たち。『オーシャンズ8』韓国版ともいえる内容なんだけど、女性中心の映画ってアクションが弱くなりがちじゃないですか。ところがこの映画は陸の男性室内格闘バトルと海中の海女潜水バトルがどちらもその「場所の特性」を活かしつつ異常に見ごたえあるアクションとなっており全編完璧と言っていいエンタメっぷりです。見てるうちに全く知らない韓国演歌、歌謡曲を口ずさんでしまう没入感と、密輸で儲けた女性たちが洋服を買いまくる70'sファッションのカッコよさ、女同士の仁義と友情。そしてサメ。最高!!!!!

最高の女たち!!


WALK UP

途中で何度か寝ました。韓国の名匠ホン・サンスが、都会の4階建てアパートを舞台に芸術家たちが織りなす人間模様をモノクロ映像でつづった人間ドラマ

映画監督のビョンスは、娘ジョンスとともに、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。そのアパートは、1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、そして地下がヘオクの作業場となっていた。ワインを酌み交わしながら、和やかに語り合う3人。やがてビョンスは仕事の連絡が入ったためその場を離れるが、戻ってくるとジョンスの姿が見当たらず……。

という映画で、階ごとに違う時間の流れがあり、登場人物たちはそれを知覚することなく映画は進行してくんですけど、深く考えずそういう不思議な小話と思って観るとよいです。前述したように何度か寝たんですけど、それもまた時間が飛んで不思議な感覚が心地よい映画です。そもそも私、映画って途中で寝てもぜんぜんOKだと思ってますし。それにしてもホン・サンス監督、「こーのオッサン、女好きだな~~」と思う映画で(性的とか下卑たとかそういう意味でなく)、とにかく女性と話すのが好きなんだろうなー、と思います。女性との会話をめちゃ楽しんでる会話劇がずっと続きます。夫婦で観ると面白いと思う。50代以上の女性を撮るのが本当に上手、超魅力的。

良い時間を切り取った映画でもある



ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルが、イーサン・ホークとペドロ・パスカルという2人のスターを主演に男性社会で生きるゲイの保安官たちの切ない愛を濃密に描いた西部劇30分短編

かつて恋心を抱いた旧友同士・2人の男。厳格なジェイクと情熱的なシルバ。数十年ぶりに再会した2人。また交わったかに見えた2人の道は、しかしやはり別々の道で、、という一本。
アメリカ保守の王道、マッチョイズムとホモソーシャルの典型である西部劇を舞台に新たな価値観とメッセージを描く。『Strange Way of Life』というタイトルが胸を打つラスト。男しか出ません。

滾る男たち


お隣さんはヒトラー?

60年代のコロンビアが舞台、ホロコースト生還者のユダヤ老人ポルスキー宅隣に越してきたのは密かに南米に逃げ延びたヒトラー!?

大戦後、実際に南米諸国に潜伏したナチス残党の摘発や、ヒトラー生存説をベースにしたコメディで、『イニシェリン島の精霊』に並ぶジジイケンカ映画!!主人公ポルスキーはかなりの偏屈で、隣家との境界争いで大事に育てた黒バラを取られてしまったことを筆頭に、隣に越してきたドイツ人ヘルツォークが気に入らない。エスカレートし犬のフンを投げたり様々な意地の張り合いが凄い2024!ある時から、隣家のヘルツォークはヒトラーではないのか、という疑念にポルスキーは囚われていくんだけどヒトラー本人かどうかよりケンカの着地が気になって仕方なかった笑
「チェスやろうぜ」と言いたいだけなのになかなか素直になれないジジイ、などジジイ愛憎劇が繰り広げられる、致死量のジジイ映画。

素直に「チェス打ってくれませんか?」と誘えよジジイ。



Mommy/マミー

和歌山ヒ素カレー事件の林眞須美死刑囚の冤罪の可能性を問うドキュメンタリー

中身はそれぞれが判断するとして、凄いのが林被告の長男。事件当時小学生、そこから一家離散、世間のすべてが敵に回る壮絶な人生を内に秘め社会への怨嗟を口にしない。でも確実に自身の中にある"澱"のような凄みが、映画の中で微かに溢れ出る瞬間がある。これまでの人生で世の中のすべてに敵視され、10代のほとんどを壮絶ないじめを受け育った人生。その中で慎重に慎重に本心を封じ、口にする言葉を選び、隙を見せないように生きてきたはずの男からそれでもわずかに零れ出る、澱のような何か。明確に言語化できない、うっすらとわずかに香る程度の凄味なんだけど、言葉を選ばずに言うと「別世界で生きてきた、生きないといけなかった者」の凄味だった。それが何か、まだ言葉にできないけど良い映画だった



箱男

た、助けてくれ~~~~~~~何を見せられてるんだ俺は~~~~~~!!安部公房の小説を映像化、段ボールで一生を過ごす男の物語。以上!

現代社会への警鐘、匿名性の批判、"見る"ことの暴力性、見る/見られる関係性、とかテーマはわかるけど普通にわけわからん!!!!!マトモな奴が一人も出ない狂人たちのディズニーワールド、カルト超大作! なんで永瀬正敏・佐藤浩市・浅野忠信の変態プレイを見せられたんだ我々は笑

おまわりさん、こっちです。早く全員逮捕してください。



ナミビアの砂漠

オープニング、町田駅を歩いて喫茶店へ向かうシークエンスでいきなりぶっ飛ばされましたね、なんなんだこの「普通の画からあふれ出てしまうセンス」は。普通のものを撮ると残酷なほどセンスの差って出てしまうけど、続く喫茶店店内のシーンでもう「この映画はただものじゃない、、」と打ちのめされた一本でした。

「21歳のカナにとって将来について考えるのはあまりにも退屈で、自分が人生に何を求めているのかさえわからない。何に対しても情熱を持てず、恋愛ですらただの惰性。同棲している恋人ホンダは家賃を払ったり料理を作ったりして彼女を喜ばせようとするが、カナは新しく出会ったクリエイター、ハヤシと浮気するうち、ホンダが重荷になりハヤシに乗り換える」

という、あらすじとしては「無軌道な若者」系映画なんだけど、これっていつの時代も20代のリアルで、この映画の批判的意見に「あまりにも価値観が違って共感できない」という意見をよく見るけど、私は普通の若者の日常の集合体が彼らだと思う。仕事の目的や意義も特に見いだせず、自分の将来どころか1週間後もよくわからない。1年後の自分よりまずは今夜のごはんと明日買う洋服のほうがリアルで、同棲する恋人とだってこの先どうなるかわからない。そんなもんじゃないですか?20代って。こういった「普通」を特別な映画にしながら「共感」を拒み自分たちの感性を突き進む27歳山中瑶子監督、24歳河合優実の20代コンビ。恐ろしい20代だぜ。すっげーもん見た~~~

『あんのこと』に続き怪物級演技の河合優実が終始生み出す、「ここではない感」の凄さ



ソウルの春

ファン・ジョンミンに①悪い②下品③無茶苦茶なオッサン、のどれかを演らせたら面白くなる法則があるけど本作は①〜③フルコースファン・ジョンミンなので面白くないはずがない!

70年代末期に韓国で実際に起きた史実「粛軍クーデター」を題材に、クーデーター発生までと実際の事件を、首謀者側ファン・ジョンミン対政府側守備隊長をチョン・ウソンが演じる政治ドラマ。粛軍クーデターの引金になった大統領暗殺を描いた『KCIA 南山の部長たち』を事前に観ておくと2倍楽しい!

まさかこの映画公開後の12月、マジで韓国でクーデター未遂起きると思わないじゃん!しかも中身もかなり似てるし!現実が映画を追っかけてくるんじゃないよ!

ファン・ジョンミンの右にいる人がちょいちょい大谷翔平に似てて笑ってしまった



侍タイムスリッパー

2024年「見るか迷ったけど直感信じて見てよかった映画オブ・ザ・イヤー」です!もう説明不要ですよね、わずか1館で公開されたインディー自主製作映画が366館拡大公開、主演山口馬木也と安田淳一監督は各種国内賞を次々受賞と現在も奇跡を起こし続けている映画です。

幕末から現代にタイムスリップした武士が現代京都の暮らしに苦労しながら周囲の人々に助けられ現代の映画撮影所で「斬られ役」として自分の居場所を作っていく──という、超ベタなストーリーがこんなにも面白いのは、作り手の大・時代劇が炸裂してるから。”日本一斬られた男"福本清三をモデルに、時代劇愛でこだわりまくった妥協しない映像、アクション、そして何より時代劇らしい大衆エンタメを大事にした結果がこれだけ観客の胸を打ったんだろうなーと。邦画史上最高傑作時代劇「椿三十郎」を彷彿とさせるこだわりと、数々の名作TV時代劇のエンタメ性を合わせた結果の名作誕生。本当にこれが大ヒットする世の中で良かった。

愛溢れるポスター。斬られ役最大の見せ場って、顔じゃなくて斬られる「背中」なんですよ



憐れみの3章

すごいぞ!!!!最初から最後までずーーーっとわけわかんない!わけわかんないのに面白い!!面白いのにわけわからん!!!なんだこれ!!!最高に映画だ!!!!!!!

ウィレム・デフォーやマーガレット・クアリー、「シビル・ウォー」のサイコパスジェノサイダ―、ジェシー・プレモンス、「ザ・ホエール」のホン・チャウなどのキャストが3章それぞれ違う配役で出演するオムニバス。「選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男」「海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官」「教祖になることを定められた人物を必死で探す女」の3章が繰り広げられるんだけどさすがヨルゴス・ランティモス監督、不穏で不思議、そしてどこまでも人間と社会を皮肉っていく。それぞれの章で「犬」が重要なメタファーになっている作りやそれぞれの行動が表すものなど、解釈は可能なんだけど、このわけわからなさを真正面から味わうのが一番の贅沢!最高に映画!!!!

エマ・ストーンのアドリブダンスのためだけに観る価値がある



ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

新作のたびに邦画アクションの歴史を塗り替えていくベビわる第3弾!ちさととまひろ、いつものコンビに襲い掛かる最強の殺し屋、サイコパス池松壮亮が最高でもはや完全に池松壮亮映画でした。
正直、池松壮亮がこんなにアクション出来ると思ってなかったんですけど、サイコパスであるとともに不幸な境遇というか、生まれ持ってしまったものが明らかになるにつれ不幸俳優・池松壮亮の本領発揮、もはや池松が食っていたと言って良いのではないでしょうか。さすがすぎる。『レイジング・ファイア』のラスト、拳で語り合うドニー・イェンとニコラス・ツェーを完全オマージュしたようなラストバトルも最高!良い続編でした。

池松壮亮、この顔である。



犯罪都市 PUNISHMENT

シリーズ第4弾!3作目公開後7か月で第4弾です、バカ!!本作はオンライン闇カジノを牛耳るIT犯罪グループが相手、、ネットに潜む敵に対しマブリー兄貴が考え出した対抗策は・・拳です!!!!!!いつも通り!!!乗り込んで殴る!!!!!!特にこれ以上、語ることもないんですけどいつも通り面白かったです。大好きです、次も観ます。

してないだろ!!!!!!!!!!



シビル・ウォー アメリカ最後の日

2024年の病巣を描き切る、A24の大傑作来ました。舞台は独裁者アメリカ大統領に対しテキサスとカリフォルニアを(この2州は政治的に対局の象徴で手を組むのはあり得ない)中心にした反政府勢力が戦う内戦のアメリカ合衆国。将来的に起こり得る、そして現在も起こっている分断をベースに、首都を目指すジャーナリストチームが道中で遭遇する「無関心」「見えない敵」「人種差別とジェノサイド」などの人類の宿痾は、さながら現代版「オズの魔法使い:ダークサイド」というべき内容。Ozと同じく、本作も主人公はジャーナリスト志望の”少女”ですしね。アメリカの国民的ストーリーをダークサイドに反転し、現代アメリカの姿を突き付けるブラックでシリアスな本作は、最初から最後まで「メディアの嘘、切り取り、二面性」も描く。ラストシーン、引きずられていく人物の姿が、アメリカがこれまで打倒し引きずりおろしてきた「悪の枢軸国」の独裁者たちに重なる皮肉。さすがアレックス・ガーランド監督という一本。凄いです。

レイシスト虐殺者ジェシー・プレモンス、トラウマレベルの恐怖。赤いサングラスを通すと特定の色(肌の色)が良くわかることを考えると、、彼の狂気に凍り付いた


HAPPYEND

韓国、中国、台湾に押されてたアジア青春映画界に、2020年代の日本代表が誕生!少しだけ近未来の日本、国籍・将来・家庭環境・ルーツ様々なものが違う高校3年生たちの日々と別れ。

「幼なじみで親友のユウタとコウは、仲間たちと音楽を聴いたり悪ふざけをしたりしながら毎日を過ごしていた。高校3年生のある夜、こっそり忍び込んだ学校で、ユウタはとんでもないイタズラを思いつく。翌日、そのイタズラを発見した校長は激怒し、生徒を監視するAIシステムを学校に導入する騒ぎにまで発展。この出来事をきっかけに、大学進学を控えるコウは自身の将来やアイデンティティーについて深く考えるようになり、今まで通り楽しいことだけをしたいユウタとの間に溝が生じ始める。」

高校3年生って特別で、体は大人だけどまだまだ未熟で、子どもから大人へ上がる階段の最後の踊り場、少しだけ停滞して見えるけど確実に前に進んでいるその踊り場で過ごす1年だと思うんですよね。日本で暮らしながらそれぞれ国籍や人種ルーツが違い、管理に反発し、それでも社会や学校との折り合いをつけようとしたり苦しんだり、いずれ離れ離れになる仲間との、それを口に出せない日々。永遠と思った友情が、そうではないと気付いたり、誰もが経験した”あの1年”を描く。大人とも子どもともいえない18歳の煌めきと陰。シビれる映画だったので今すぐ観ましょう

たとえ二度と会うことは無くても、一生忘れない関係と時間ってあるじゃないですか



悪魔と夜ふかし

1970年代アメリカ深夜番組の録画テープ。映っていたのは低視聴率に悩む司会者とPが組んだ超常現象特集、「悪魔降臨」の儀式で少女とスタジオに恐ろしい現象が───というファウンドフッテージ(発見されたビデオに事件が映ってるホラー)物。

まー予想通り、ロクなことにならないんですが悪魔降臨が進行しての終盤、なんじゃこりゃああああ感も凄かったので面白かったです。本当にロクなことにならない笑 何言ってもネタバレなんですけど面白かったです。

CMの後、スタジオで信じられない光景が!(※本当に起こります)


破墓/パミョ

パーミョパーミョパミョ墓場の子!土の中からやってきた~♪

というわけで墓の中からエライものが出てきちゃう韓国スリラー!「破墓(パミョ)」という墓を移設して運気を変える由緒正しい風水儀式が韓国にあるみたいなんですけど、それやってたら大変なものが出てきちゃった~~というあらすじで、ハッキリ言ってめちゃくちゃ面白いです。
墓の中から出てきた超絶特級呪物に対峙する、チェ・ミンシク演じるサンドクたち風水チームと、キム・ゴウン演じるファリムたち巫堂チーム、バディムービー×怪奇伝承ホラー×サスペンスと面白いとこギガ盛りマックス!!みたいな映画です。マジで墓の中から次々とんでもないものが出てきて、国境と年代すら軽々超えてくるので、これ次回作なんでも作れるでしょ!?台湾編でも日本編でもいいので続編待ってます!「せ~~の、破墓(パミョ)!サイコ~~!!」

このキャラ立ちで続編無いとかないですよね?????


動物界

人が動物にだんだん変種する奇病の流行する世界。母が「新生物」へ変種し隔離病棟に入院してしまった高校生エミールは、変わってしまった母を受け入れられない自分に苦しんでいたが、ある日自分の身体にも変化が生じ──というフランス映画

変異した"新生物"とは人種差別、隔離は排斥とジェノサイドの暗喩でありフランスの抱える移民問題のメタファーでもあるんだけど、大枠のテーマは家族愛!ど直球な父親の愛にやられます。とはいえフランスでは施設送りにされる新生物が、「(環境先進国の)ノルウェーでは共生の方針を取っているらしいぞ」って噂話を聞いて「これだからフランスは…」となるシーンなどフランスらしいシニカルさに笑ってしまった笑

鳥に変異した新生物の男。いい奴。



本心

不幸になるほど映画が面白くなる、でお馴染み池松壮亮が主演!近未来、自由死を選んだ母(田中裕子をAIで再現した青年・池松壮亮は亡き母の友人だったという若い女性と同居を始める。対人関係をうまく築けない池松は、母の心、友人の心、思いを寄せる女性の心と関係に悩み──

という日々を描くドラマなんだけど、池松青年の仕事(顧客の代わりに体験を代行し体験映像を送る、ウーバー体験というようなサービス)描写が辛い!顧客のわがまま、カスハラ客に振り回され尊厳を踏みにじられる池松壮亮、そしてその池松の経験をリアルタイムに体験させられる観客!なんの罰だよこれ。最高の池松壮亮不幸映画でした、いつか「不幸なほど演技にバフがかかる」杉咲花と共演して孤高の不幸映画を作ってほしい。

この田中裕子が怖い2024


ドリーム・シナリオ

世界中の夢にニコラス・ケイジが現れる!平凡な大学教授ポールがなぜか大勢の人々の夢に現れたことから思わぬ事態に陥っていく姿を描いたスリラー。

昨年の「ニコラス・ケイジおたくであるマフィアの大ボスの豪邸にニコケイが泊りに行って起きる大騒動」=『マッシブ・タレント』といい、ニコケイの変な映画が好きな私なんですが、ドリーム・シナリオは最高です!
世界中の人の夢にニコケイが現れるとか絶対嫌すぎるだろ!制作陣もニコケイをどうやってイジッてやろうかと考えてたんだろうなーとニコニコしちゃう。動画バイラルやネットミームをニコケイに置き換え、SNS/ネット依存社会を皮肉った一本なんだけど、とにかくヒドイ目に遭うニコケイを堪能すればOK!『ボーはおそれている』と並ぶ、2024年オジサンがヒドイ目に遭う映画最高の一本です。みんなの夢にもニコケイが現れますように。

夢に現れるニコケイ。マジで嫌すぎる。



AT THE BENCH/アット・ザ・ベンチ

川沿いにたたずむ一つのベンチを舞台にした5話オムニバス!

「川沿いの芝生にぽつんとたたずむ小さなベンチ。ある日の夕方、そのベンチには久々に再会した幼なじみの男女が座り、もどかしくも愛おしくて優しい言葉を交わす。その後もこの場所には、別れ話をするカップルとそこに割り込むおじさん、家出をしてホームレスになった姉と彼女を捜しに来た妹、ベンチの撤去を計画する役所の職員たちなど、さまざまな人たちがやって来る。」

短編オムニバスなのであらすじにこれ以上触れるとネタバレになってしまうんだけど、どの話が好きだったかでめちゃくちゃ語れる一本。最高の短編オムニバスなので見てくれよな、2話が大好きです!!!!!!!!

2話。もうこのショットだけで笑える



I Like Movies/アイ・ライク・ムービーズ

2024年ラストに観たのがこちら、今年最後に観たのがこれで良かった!!

映画オタクで、映画の趣味とセンスだけで周囲を見下し、ただ漫然と将来の成功を疑わないコミュ障高校生ローレンス。痛いな~~でも、10代の時誰しも通った場所でしょ?根拠のない万能感、他人を傷つけることに無自覚で無遠慮だったあの頃を描く青春傑作映画。特に年末(12月27日公開)に観に来るような映画ファンは「これ、俺/私の映画だ・・」と思ったことでしょう。

ニューヨークの大学に進学する自分に対し、唯一人の友人マットが田舎にとどまることを馬鹿にし「お前とは、、仮の友達だからさ。大学に行ってできるのが僕の真の友人だ」とか言い放ってしまい唯一の友人すら失ってしまうローレンス。学費のため初バイトしたビデオ屋で少しずつ社会とか人間関係とか学んでいく。ちょっと遅いけどそれでも前進するローレンス、人生は映画のようにいかないけれど踏み出せば何か変わる。終盤、優しいマットが書いてくれる「また会おう」のメッセージ。多分もう2度と会うことはないけどそれを将来、噛みしめる苦みもまた、人生の味なんだよね。
劇中でローレンスがポール・トーマス・アンダーソン監督を崇拝してるけど、『リコリス・ピザ』が好きな人にも刺さると思う。ヒロイン(的存在)の名前がアラナ(リコリスのヒロイン)なのもオマージュかな。

ちなみに主人公ローレンスを演じたアイザイア・レティネン(Isaiah Lehtinen)、俳優兼ラッパーをカナダでやっており曲もアップしてます。わりと良いので一度どうぞ

『Hermit』 - Evelyn




というわけで2024年観た新作映画でした!
ぜひ気になったものを見てくれたら嬉しい、今年も映画が最高で良かった!
来年も最高な映画がたくさんありますように!!!!!!!!!!

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