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喫茶店百景-おやつ、間食-

 お店にいる間に食べていたおやつや間食など。

 お店の子だからといって、まさかお客さんに出すようなものは出してもらえないのは当たり前で、まず許されていたのはコーヒーシュガー。えっ、砂糖?
 コーヒーシュガーってご存じだろうか。最近あまり見かけないけれど、小石ほどの大きさで、琥珀色したもので、子どもからすると金平糖とそう変わらない感覚だった。あめ玉ほど邪魔くさくなく、なんかちょっと口に入れたいなというときに丁度いい。
 ちなみにキャンディの類を食べたいなんて、今ではぜんぜんおもわない。

 うれしいおやつとしては、ミルクセーキがあった。ミルクセーキがよそでは飲み物だということを知ったのは大人になってからだけど、長崎においては食べものの部類になる。うちの店では、注文が入るとステンレスの大きなボウルに人数分を作っていて、グラスに盛り付けたあとの残りをもらえることがあった。お冷用のちいさなグラスに入るくらいの量で、ちょうどよかった。

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よそのお店のミルクセーキ

 それからパンの耳。パンの耳でおやつといったら、油で揚げて砂糖をまぶすものだろうか。私が好んで食べていたのは、サンドイッチを作った際に切り落とす耳。バターや、からしマヨネーズ、ときどきはハムやキュウリ、玉子焼きなどサンドイッチの具がくっついているそのパンの耳は、ふつうのパンの耳よりおいしかった。
 この頃食べていた『パンの耳』はもう食べられない。まず一度サンドイッチになったという経歴のあるパンの耳だからだ。パンの耳の一部(全体ではない)にくっついた、あのバターやからしマヨネーズの塩っけのあるパンの耳(だけ)を食べられる環境というか、経験というか、それってけっこう特殊だったみたいだ。
 それでも店で出るパンの耳を全部食べられるわけもなく、袋につめて公園にいき、鳩にちぎってあげるなどしていた。(サンドイッチになっていないパンの耳たちは、パン粉にされることもあった)

 かき氷。氷はタダ同然なので、夏の暑い日はよくもらっていた。私はあの甘くて色のついたシロップがそんなに好きじゃない。お気に入りはカルピスで、お中元か何かで貰ったカルピスは、冷たい氷で食べるとさっぱりとして好きだった。飲む方のカルピスには昔も今も興味がない。

 コーヒーフロートもときどき食べさせてもらった。当時炭酸が飲めず、また甘いジュース類を好まない私はクリームソーダやコーラフロートになんか興味がなかった。濃く淹れたアイスコーヒーに、バニラアイスを浮かべてもらう。バニラアイスでコーヒー液が薄く固まり、そのシャーベット状になったコーヒーとバニラアイスを一緒に口に入れるととてもおいしい。
 バニラアイスが溶けてしまうと、やたら甘いミルクコーヒーみたいになって飲めなくなる。バニラアイスを先に食べてしまってから、コーヒーを飲むようにしていた。

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コーヒーゼリー

 コーヒーゼリーやクレープなどを、季節や両親の気まぐれで自家製のものを出すことがあった。コーヒーゼリーが数日出ないことがあればもらって食べていたし、クレープはフライパンがあったまるまでの1、2枚目はお客さんに出せないから、そのかりかりの生地を食べさせてもらうこともあった。

 今日ここに書いたものは、当然ながらもうずっと食べていないものがほとんどだけれど、その味をけっこう容易に思い出せてしまう。記憶ってふしぎだ。

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片山 緑紗(かたやま つかさ)
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