怠けものなりのささやかな挑戦
だいたいがぼーっと生きていて、自分からあれこれ試すタイプではない、どちらかというと非常に尻の重い私なんだけど、それでもときたま誰かとの会話の中から刺激をうけ、興味がぴくぴくと反応することがある。
先日、お茶をしているときにストップモーションというコマ撮りの手法をつかったアニメーションの話題があった。以前にもできあがりのアニメーションを見せてもらっていたのだけれど、そのときはおもしろいなとおもいつつ自分で作ろうとかそういう気もちはもたなかった(怠惰なもので)。でもこのときは、帰ってからアプリを探してダウンロードして、次の日手近なものをつかって撮ってみるなどすると、おもいのほか楽しい、と感じた。
そのちょっと前から、Blackmagic DesignのDaVinci Resolve(無償版)のことも話題提供してもらってて、それを使って仕事でやってみたいことをおもいついたため、ダウンロードしてぼつぼつ作業していた。これも、これまで動画をつくるなんてこと興味も持たなかったのに、やってみるとおもしろい。日常の業務には事務や雑用、会計なんかも重なるので没頭しての作業はなかなかできないけれど、合間をみては作業を続けるようにしている。
ストップモーションのアニメーションを撮ってみるのに、職場に展示してあるレゴブロックで作られた教会堂をつかおうとおもった。デスクを片づけて、どうにか白い背景のスペースをつくって、とりあえずそこらへんで購入したスマートフォン用の三脚を立てて、撮る。レゴブロックのヒトのパーツを動かしたり、位置を合わせたりして何枚か撮ったのち再生してみる。すると途中知らぬ間に手が当たったりしていたのか、建物のパーツがいつの間にか歪んでいたり、ライティングが不安定だったりして、お粗末なアニメーションに仕上がっていた(ためいき)。
何度かやってみたのち、そういえばPhotoshopでつくる方法も聞いたのをおもいだした。それもやってみたくて、Zfcをカメラ用ミニ三脚に設置して、ブロックのこまかいパーツのほうなんかにも気を使いつつ、静止画を何枚か撮影。こちらのミニ三脚はしっかりしているから撮りやすかったけれど、やはりレゴ人形のギミックをいじろうとしてなぜか髪の毛がはずれてしまったり、手のパーツが逆向きになったり、とにかく何かしら上手くいかなくて放り出したくなった。
なんとかパーツ移動と撮影を繰り返し、取り込んだ画像からPhotoshopで作業をしてみるも、慣れないものだから手間取る。やりながら何度かし直したり、失敗して戻ったり、最後のほうになって(これ先にやっとけばよかった)みたいな作業をちまちまやって修正したりなどする。アプリの作業と合わせて、もうシシュフォスのような気分であった。
Photoshopでやったほうは、スマートフォンアプリのよりもいくらかキレイにできあがる感じだから、これをこんどは(以前ちょこっと記事の話題にした)AdobeExpressと組合せてみようとおもった。AdobeExpressでテキストのアニメーションを何枚か準備する。
ここでも手際がわるく、時間がかかる。自分のしょぼさにげんなりしながら、もう何度目かわからないシシュフォス感を味わった。そしてさらにPhotoshopで作ったレゴブロックのとテキストのを、DaVinci Resolveの上で繋げてみたりする。もっと簡単なソフトウェアがあるのかもしれないし(あるだろうね)、もっと効率のいい作業手順もあるはずだけれども、知らないからとりあえず思いついたコマンドを使ってやってみるしかなく、メンドクサイやり方を知っていたら後々何かの役に立つかもしれないというよくわからない励ましを自分自身にしながら、黙々とやった。
noteには動画が載せられないし、仕事用につくったほうのもここで公開したりはしないのでお見せすることはできないけれど(といっても大したものはできてないが)、まあいつか見せられるレベルのものができあがったら公開してみるのも遊びのひとつとしていいかもしれない。
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もういっこ。私は絵を描いて遊んだりもしないのだけど、あることからちょっと描いてみようかな、とおもうことがあった。紙に描いてもいいけれど、ちょうど(?)手元にiPad AirとApple Pencilがあったので、あるキャラクターの絵を見ながら、それを描いてみた。ヒドイものができあがるとおもいきや、意外とちゃんと描けてちょっとふるえた。これも、おもしろいとおもった。
そういえば子どものころって、両親の店での暇つぶし的にまんが雑誌の絵を描いて遊んだりしていたことを思いだすなどした。漫画家に憧れたわけではないとおもうんだけど、どうしてだか当時、漫画家が使う道具類に興味を持っていたような記憶も甦った。特殊なペンとか、あらゆる種類のトーンとか、ああいうのを使って絵を描いてみたいという、変な欲求を持っていたような気がする(うろ覚えだけど)。
それでふと、あれ、今の漫画家も紙に描いているんだろうかと疑問が浮かんで、そういうのをなぜかよく知っていそうなKさんに訊いてみたら、やはり最近の漫画制作の事情も昔とはずいぶん違っているみたいである。そんなこと知ってみたところで私の人生に何か変化があるわけではないけれど、そうと知っておお、となぜかワナワナした。このように自分でいくつかのソフトウェアなどを使ってみない限り持たなかったであろう疑問を持ったこと、それでさらに知らなかったことを知ったことになんだか感動した(おおげさ)。
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自分で手を動かしてみて、時間を費やしてみて、労力を注いでみて、シシュフォス的徒労に何度も陥りながらでないと知ることのできない世界を、最近のちょっとした期間でいくつか体験した。徒労はつらいしできれば避けて生きていたいけれど、何度も失敗しないとわかりえないことというのは、尊いことなんだろうなとおもう。ちょっと考えてみればわかることだけど、何においてもはじめからささっと効率よく、あるいはうまくできるなんて都合のいい話はそうそうないはずである。
何でもできるように見える人の背景にも、そういう体験がいくつも重ねられただろうことをおもうとき、もっともっと励まねばならないなという気もちがめばえる。
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中間報告:「千夜一夜物語」はいま207夜のところまで読み進めています。他に読みたいものや作品もあって、ちょっとペースが落ちています。たまに内容がダレるけれど、読み続けようという気にさせるのはすごい。王様のすさんだ心もちょっとずつ緩んでいる感じであります。
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