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子ども時代からの本を詰める棚

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これまで読んできて特に好きなもの、印象に残っている本を詰める本棚です。読み終えたものを詰めることも。
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#吉村昭

出島商館長ヘンドリック・ドゥーフの苦悩

 出島オランダ商館まわりのことを知る以前は、その歴史にあまり興味をもってはいなかった。  吉村昭氏の『磔』に収録された「三色旗」、同著者の『ふぉん・しいほるとの娘 上・下』の2作品をもらって読んだことで、少しずつその当時の、出島でのオランダとの貿易(ポルトガルとの貿易当時のことはもっと不勉強)、その他の異国との交流などについて知るのが楽しくなってきた。  たとえばキリシタン史なんかをみていくなかでも、当時は交易国でなかったフランスやイギリスといった国から見たオランダ人に関す

なるたきを

 ちょっと前に、吉村昭氏の小説『ふぉん・しいほるとの娘』を読んだ。タイトルから察せられるかとおもうが、ドイツ人医師Philipp Franz Balthasar von Sieboldの娘がいちおうの主人公である。  小説とはいっても、シーボルトの来日にはじまり、彼の出島における生活や江戸参府随行の様子、シーボルトの行為が原因で引き起こされた事件やその後のことを、周囲の事柄を含めてすごくよく調べて書かれている。史実にかなり近いのではないかとおもう。  長崎市の花として設定さ

長崎奉行 松平図書頭康平と英軍艦

 きのう10月9日に何年振りかのくんちが終った今朝の港周辺は、とても穏やかな秋の空気に満たされていた。ただひとつ、御旅所の設けられるこのあたりにはテキヤが立ち並ぶことから、食べ物やごみの混じったにおいに満ちてもいた。 *  長崎の氏神とされている諏訪神社の秋季大祭くんちまわりのことでは、キリシタン史との関わりがある、というのでそのへんのことでも書こうかな、とおもった。  ちょっと前、キリシタン史に関連する文章を書くため、資料を手当たり次第に漁っていたときに、気になる資料を

護衛艦進水式に立ち会った日のこと

 吉村昭氏が著した『戦艦武蔵』という本を読んだ。話を聞いて読んでみたいとおもったからだった。  「武蔵」は三菱重工業株式会社長崎造船所で建造された戦艦で、当初は「第二号艦」と呼ばれていた。第一号艦は「大和」で、第一号艦が建造されたのは広島県の呉海軍工廠であった。  「武蔵(第二号艦)」は昭和13(1938)年に起工され、無事に進水したのは昭和15(1940)年。その年の11月1日の満潮時が選ばれた。 *  平成29(2017)年に、護衛艦の進水式を見に行ったことがあった。