アイデアと、早期の認知形成の重要性
〜顧客起点マーケティング Part 14〜
マーケティングにおいて重要な「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」の説明をしましたが、マーケティングが成功する上で、もう一つ重要なことがあります。それは、早期の認知形成です。
強い独自性と強い便益を伴った「プロダクトアイデア」が開発できても、模倣してきた追随者にポジションを奪われ、ニッチな類似ブランドになってしまうことは多くあります。メルカリもフリマアプリとして後発ですし、「肌ラボ」も実はヒアルロン酸系化粧水として後発でしたが、早期の認知形成を獲得し、カテゴリーNo.1となりました。
逆に、ニュースアプリとして日本初だったスマートニュースは、強い独自性と便益で世の中にデビューし受け入れられたもの、その後に登場した競合の認知形成に先を越されて、危うくニッチブランドとして停滞するところでした。
様々なカテゴリーにおいて、実はトップブランドの多くは、その「プロダクトアイデア」に関して後発商品です。この事実は、認知形成スピードの重要性を物語ります。
認知を十分に作れていないから売れていないのに、見た目の売上上昇が止まったからといって投資を止めてしまうケースがよくあります。伸びないのは「プロダクトアイデア」自体に問題があるのか、それとも認知不足なのかを冷静に見極めないと、成長機会をみずから摘んでしまうことになります。
認知形成のスピードを活用して躍進した事例としては、ソフトバンクが行っていた「タイムマシーン経営」が有名です。世界中で芽生えつつある強い「プロダクトアイデア」をいち早く探し出して、それを自社サービスとして日本で開発し、本家本元が日本に参入する前に、そのカテゴリーの認知を作ってしまうのです。
同じ戦略を、中国も実行しました。中国には、GoogleとYouTube、Facebook、Amazon、Twitterが参入できていませんが、Baidu、AlibabaやTencentといった中国企業が同様のサービスを展開して中国国内を独占し、その圧倒的な収益力で海外企業を買収して、世界に進出しています。これは中国政府の方針として「国防上の理由でネット系サービスを海外から入れない」と徹底し、中国系企業に「タイムマシーン経営」を可能にした結果です。中国の人々にとっては、海外で見るGoogleやYouTube、Facebook、Amazon、Twitterのいずれも、中国国内で見たことがあるサービスに似たものでしかありません。
デジタル系以外においても、同様なケースはたくさん見られます。炭酸飲料市場で、コカ・コーラは圧倒的な世界No.1ですが、進出が遅れた中近東やアジア一部諸国では、早期に進出したペプシコーラが先行して認知形成し、長らくNo.1のポジションを維持してきています。ハンバーガーチェーンで圧倒的なNo.1のマクドナルドも、各国で同様な経験をしています。進出の遅れたイギリスではかつて、Wimpyというローカルのハンバーガーチェーンが圧倒的No.1でした。当時のイギリスでは、おいしいファストフードのハンバーガーはWimpyであり、マクドナルドはその進出時点において、「プロダクトアイデア」の弱い二番煎じだったのです。その後の大規模な投資とWimpyの失策で、マクドナルドは徐々に主導権を奪いましたが、初期のハンバーガーチェーンという認知形成に遅れたことで多くの投資と時間が必要になりました。
つまり、強い「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」の戦略的な活用と「ターゲット顧客での早期の認知形成」が成功の3要素だと言えます。
また追随者から見れば、優れた「プロダクトアイデア」を有しながらも、その認知形成に遅れている商品やサービスを見つけて、自社でプロダクト開発をして一気に認知を取れば、カテゴリーを奪うことが可能です。特許技術や政府規制などの特殊な参入障壁がない限り、顧客の視点では、本家本元かどうかは関係なく、認知をいち早く形成した競争者が“本物”としてカテゴリーを支配することになります。
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[M-Force株式会社]
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