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2種類のアイデア: その1 「プロダクトアイデア」

〜顧客起点マーケティング Part 11〜
前回、「アイデア」は独自性と便益を兼ね備えたものであると説明しましたが、実務上「アイデア」には、大きく分けて次の2つがあります。
【1】商品やサービスそのものとなる「プロダクトアイデア」
【2】商品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段でとしての「コミュニケーションアイデア」

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それぞれ、独自性と便益の四象限で「アイデア」としての評価が可能ですが、ビジネス上、【1】が主体で【2】は従属要素と考えることが重要です。「プロダクトアイデア」の独自性が弱くても、便益があれば、独自性のある「コミュニケーションアイデア」で補強してプロダクト(商品やサービス)本来の独自性の弱さを補って、売上の向上やブランド育成が可能です。しかしながら、プロダクト(商品やサービス)そのものに便益がない場合に、「コミュニケーションアイデア」に頼ると短期的な売上は作れても、中長期的な売上を獲得することは不可能です。それぞれの違いをさらに詳しく説明しましょう。
「プロダクトアイデア」とは、対象顧客に対して、商品やサービスそのものに独自の機能や特徴があり、かつ具体的な便益があることです。iPhoneが登場時において、携帯電話に音楽プレーヤーのiPod機能が備わり、インターネットに繋がった唯一の携帯電話=スマートフォンであったように、その独自性自体が便益であれば最強ですが、独自性が便益と繋がっていなければギミックになります。
例を挙げると、波形で厚みがあるという独自性のあるポテトチップは、その独自性自体が「食べ応えがあっておいしい」という便益に繋がっていますが、星型のポテトチップを作っても、その形状がおいしさに繋がっていないので、独自の見た目の面白さで1回は購買されても、継続購買は起きにくいでしょう。過去のヒット番付商品をネットなどで調べて現在どうなっているかを見れば、そのような短命商品がたくさん見つかります。ほとんどの場合、商品登場時から見えていた結果なのです。継続的なビジネスになり得るかどうかは、その「プロダクト」開発時において、「プロダクト」自体が、特定の顧客に、明確な独自性と便益「アイデア」を提供しうるのかの検証でおよそ判断できます。
理想的なのは、前述のiPhoneのように、独自性そのものが便益であることです。宿泊サービスのAirbnb(エアービーアンドビー)や移動向け配車サービスのUber(ウーバー)もそうです。筆者が関わらせていただいたブランドでも、ロート製薬の「肌ラボ」も、ロクシタンも、スマートニュースも、その誕生時において「独自性=便益」でした。
次に理想なのは、確固たる独自性が便益を支えている場合です。例えば風邪薬で「独自の有効成分◯◯が入っているから効く」という場合、「◯◯」という独自性が、「風邪が治る」という顧客にとっての便益を支えています。P&Gに "Reason to Believe(RTB)"、信じるに足る理由という意味のマーケティング用語がありますが、この例ではRTBとして「◯◯」があるから顧客が購入しているわけで、風邪が治るという便益自体は、どの風邪薬でも共通して謳っていることです。
もちろん、このような「プロダクトアイデア」を創出するのは簡単ではありませんが、独自性と便益を両立する「アイデア」を創出することは、ビジネスの基本戦略であり、かつ、本来マーケティング責務の一つだと思います。「プロダクトアイデア」の弱いプロダクトを如何に売るか?は、「コミニケーションアイデア」だけの領域であり、ここでマーケティングがどれだけ頑張ろうとも、そのインパクトは限られているのです。
一方で、「プロダクトアイデア」を伴って世の中に登場し、早々に成功を収める商品やサービスは、例外なく追随する競合商品がすぐに登場し、その独自性がコモディティ化されていきます。「肌ラボ」やスマートニュースに、現在いくつの競合があるかを考えると、自明です。
このコモディティ化競争に勝つために、便益と繋がる独自性を維持すべく「プロダクトアイデア」自体をアップグレードしていくのもマーケティングの仕事ですが、同時に必要になってくるのが、2つ目の「コミュニケーションアイデア」です。次項で、詳しく説明します。

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書籍紹介
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)
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[M-Force株式会社]
すべての「モノ」「コト」「サービス」を顧客視点で捉えることで顧客にとって価値があるものへと進化させ、「マーケティングを、経営のチカラに。」というミッションを実現するために様々なブランドを支援しています。https://mforce.jp/

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