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プレスリリースでは書ききれなかった 「組織に正しい指針を示す」事業と顧客をつなぐKPIの研究

今回は、これまでnoteで書いてきたような、顧客起点マーケティングにまつわる様々な概念や論点についての解説とは趣向の違う内容です。

2021年3月18日に発表した、マーケットシェア等の事業成長の指標と、9segs分析によって得られるKPIと「認知」や「好感度」等の従来使用されてきたKPIとの相関の研究について、プレスリリースには書ききれなかった背景や、今後の展開について、今回の研究を行ってきた視点から書いてみたいと思います。

発表以降、既に経営者の方からの直接のお問い合わせを含め様々なお声を頂いておりますので、もしプレスリリースの内容よりもより詳しく知りたい方はご一読頂くと面白いかと思います。

どんな結果だったか

ひとことで言うと

これまで多くの企業で使用されてきた「認知」「好感度」などの従来のKPI指標よりも、9segsで取得できるKPIの方が、マーケットシェア等の事業の重要指標との相関が高かった

ということです。

今後、事業の健康度や施策の効果を計測するKPIがガラッと変わる可能性があり、そしてそれは既に起き始めていると考えています。


なぜ今回の研究をしたか

M-Forceのメンバーは、多くが元々日用消費財・耐久消費財・ソフトウェア等の事業会社でPL責任を持ち、顧客起点マーケティングの手法を用いて、プロダクト開発や事業の成長を事業代表やマーケティング責任者の立場で担ってきた実務経験者です。

その中で共通してもっていた肌感として、一般的な指標である認知や好感度が、売上やマーケットシェアのような事業指標と必ずしも繋がらないと感じていました。

M-Forceとして様々な企業の事業責任者やマーケティング担当の方からのヒアリングをしていても、事業指標に対する説明力が弱いKPIが乱立することには、様々な弊害があります。例えば

・KPI(例えば好感度)は上がっているのに売上が延びていない場合、なぜ売上が延びないのかという原因究明に無駄な時間を使ってしまう。(実際にはそもそもKPIが適切でないので、当たり前)
・複数の事業を統括するマネジメントからすると「あれ、みんなうまく行っていると報告があがってくるのに、売上は伸びてないぞ?」「各ブランドや部署が違う指標で成果を報告してくるので、横比較ができない」といった事態が起こる
・報告をする担当者としても、多すぎるKPIは個別の事業の状態や施策の評価を複雑にし、見せ方の調整をする余地がある故に「よく見せよう」という、本質的でない仕事が増える(よく見せる余地があるならよく見せようとするのは、プロジェクトに関わったメンバーのことを思えばある意味自然なこと)

一方M-Force発足後(共同創業者の西口はそれ以前)に様々な業界の顧客企業に対して9segsによる顧客心理・行動の分析を提供する中で、9segsから得られるいくつかの指標が、極めてシンプルな上に、売上やマーケットシェア等の上位の事業指標に対して高い説明力を持つという実感をもってきました。

参考:プレスリリース中の足立さん、西口さんのコメント抜粋

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そこで今回、2021年1月からM-Forceとして9segsの導入・運用を支援するサービスを本格的に開始したタイミングで、マクロミルチームの協力を頂き、その仮説がどの程度正しいのかを検証してみたいと思いました。また本研究では、アカデミックな視点も入れるために、日本マーケティング学会等のジャーナルでも多くの受賞歴がある加藤巧巳さんにもご協力を頂きました。

参考:プレスリリース中の加藤巧己さんのコメント抜粋

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何がわかったか。何はまだわかっていないのか。

わかったこと

今回対象とした業界において、9segsによって取得できるNPI(次回購買意向)やu-NPI(顧客内次回購買意向)が、従来用いられてきた「認知」や「好感度」と比べて、企業の事業代表者・商品開発/R&D部門・マーケティング/広告/営業部門にとって重要な金額シェアやSOR(リピート率・購買頻度・購買単価全てを考慮した総合的な継続購買指標)に対して、相対的に高い相関を示しました。これは、我々の仮説を支持するものでした。

さらなる研究が必要なこと

今回の研究ではi) 複数の時系列を比較した先行指標とは言えないこと、ii) 対象が消費財6業界に限られていること、iii)アカデミックな研究ではしばしば用いられている広告宣伝・研究開発費等の財務指標が制御されていないことなどの制限があります。


<プレスリリースより研究結果部分抜粋>

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<参考:NPI/u-NPIと9segsの関係>

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結果の解釈と補足

これは私やM-Forceの実務担当者としての経験を踏まえた解釈ですが、従来のKPIに比べてNPIやu-NPIが高い相関を示した背景としては、以下のようなことが考えられます。

NPIと認知・好感度との比較:
一般にTVCMを始めとするマスマーケティングの効果測定には認知や好感度がよく使われます。今回見たとおり、消費財についてはどちらも一定の相関は見られますが、NPIに比べると相対的に相関は弱くでました。
前述の通りまだ未検証な部分はありますが、なぜNPIが認知や好感度よりも説明力が高くなり得るのかを考えると、大きくは「知っているからと言って買う訳ではない」「ふわっと 好きか嫌いかでいうと好き であるからと言って、買う訳ではない」ということなのかなと思います。一方で、NPIはあるブランドについて「積極 = 自分が知っている中で最も次買うとしたら買いたいブランド」である人の率を計測しているので、今回比較対象とした指標の中では、もっとも強い相関が出たのではないでしょうか。
また、特に認知については、一定の規模まで成長して認知度が高くなったブランドについては、より単に認知を上げることの効果は小さくなると考えられます。一方NPIは、理論上の最大は100%ですが、今回調査した中で40%を超えるブランドはなく、まだまだ大きな伸び代が全てのブランドにあります。

u-NPIと満足度・NPS®︎との比較
NPIと他の指標との比較と同様こちらも未検証な部分はありますが、同じくu-NPIが満足度やNPS®︎と比べて、最も総合的な継続購買指標である金額SORとの相関が強く出ました。
なぜNPIが満足度やNPS®︎に比べてSORの説明力が高くなり得るのかの解釈としては「不満はないけど感動もしていない」「自分は買わないけど他人には勧められる」「自分は買うけど他人には別に勧めない」という心理がそれぞれあるのではないかと考えられます。一方、u-NPIは実際に使っている人の中で「次回も次買うことしたらコレ」と選んでくれている人の率なので、より実際の購買行動にもより強い相関があったのではないかと考えられます。

1つ補足としては、NPS®︎については広く使われている指標なので今回の比較対象に含めましたが、実務上は必ずしも日用消費財において最も頻繁に使われている指標ではなく、また論文含めてアカデミックな研究においては将来の成長率に対する先行指標としての使われ方が多いと思いますので、あくまで参考として頂ければと思います。また、自社のユーザーにアンケート形式で取って、サービスの改善を時系列で計測する上では、簡易で使いやすいという特徴もあります。

補足
この結果は人によっては「当たり前」かもしれません。一方で、これまでは認知や好感度を追いかけていた「でも認知や好感度が上がっても売上にあがらないことが何度もあった」という声も頂きました。

実務において重要なことは、「顧客から選ばれる」「指名買いされる」理由=独自性のある便益を顧客起点で発想し、意思決定すること。その独自性のある便益をプロダクトを通じて体現し、それを多くの将来顧客となる人々に知ってもらうことです。

その過程でブランドの認知や好感度が上がることはもちろんありますが、この考え方が逆になってしまう(=「認知を上げていけば、その中で自ブランドを選んでくれる人も増えていくだろう」・「好感度を上げていけば、ブランドが選ばれることも増えるだろう」)と、成功確率は下がっていき、ROIの低い施策、最悪の場合無風というケースも増えていくでしょう。

この結果はどう活用していくとよいのか

事業運営をする上で

例えば複数の事業やブランド横断で9segsで一貫したKPIを取得することにより、事業の全体的な顧客起点での状態を把握して、自社のプロダクトや広告・販促・営業・CRM活動等の有効性を計測することが考えられます。
マーケティング先進企業ではこうした事業横断での顧客KPIの継続的な取得、およびそれにもとづいた事業戦略策定が行われています。また顧客KPIの事業・財務指標への説明力も継続的に検証され続けています。認知度は、事業全体から見ればあっても極めてサブのKPI、好感度は売上への説明力が低いことが過去のデータから判明しており、近年では測定していないケースもあります。

プロダクト開発や広告・販促・営業活動において

有効な顧客戦略(WHO&WHAT)を導き出すための顧客理解として用いることに加えて、大きな施策の前後や、年内の一定の期間(業態によって4半期ごと、月次等)で観測することによって、NPIやu-NPIの成長、各年代や地域等の属性の中でのNPI / u-NPIをトラックし、次の伸び代を見つけたり、競合の施策の定量的な評価を行うことが可能です。


今後やっていきたいこと


時系列・カテゴリーを広げた継続研究

プレスリリースでも取り上げた、継続研究を行っていきたいと思います。具体的には時系列データを用いた因果関係の考察、また複数年度にわたる売上成長率等の先行指標としての更なる有効性の確認などです。
また、耐久消費財・アプリなど日用消費財以外のカテゴリへの研究対象の拡大については、実はもうデータは取っていて今回と同様の傾向が出ているので、今後なんらかの形で公開したいと思います。

事業横断・ブランド横断でのメタ分析と経営指標としての活用

既に9segsを会社の一部の事業で取り入れ、その成果を元に複数の事業やブランドに拡大するケースが出てきています。それを更に進めていくことで、全社やカンパニー横断で事業の売上や利益、粗利率や販管費比率等の「財務指標」に加えて、よりごまかしが効かない事業の健康度を示す「顧客KPI」を計測しそれを活用した事業戦略策定を行うことによって、よりアクショナブルで本質的な、顧客起点の経営指針を提供していきます。

9segs analyzer上での実装

NPI、u-NPI等のKPIは既に9segs analyzer で簡単に見ることができるようになっていますが、今後はさらに時系列比較をしやすくする等、9segs analyzerの使い勝手がよくなるように改善していきたいと思います。


最後に、、、自カテゴリーでも是非9segsによる計測を試してみたいという方は、是非お問い合わせからご連絡ください。




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