「クリエイティブな子どもを育てるには?」 空間デザイナー×ファッションデザイナー対談
こんにちは!
9kidslab -ナインキッズラボは「デザイン」を通じて、クリエイティブ領域を横断し「人生を楽しみながら切り拓く」子どもを育てる、小学生対象のオンラインスクールです。
それを実現しているのは、第一線で活躍する個性豊かな講師陣と彼らが作り出す掛け合わせの授業です。
今回のnoteは、「つながりのデザイン」クラスから、空間デザイナーの安藤 僚子さんとファッションデザイナーの瀧澤 日以(かい)さん。お二人から、「クリエイティブな子どもを育てるヒント」「親御さんからの質問」「実際の授業について」など、たくさん伺いました!
「ファッションデザイナー」 瀧澤さん
ファッションデザイナー。文化服装学院卒業。自身のブランド PHABLIC×KAZUIを立ち上げ、TOKYO新人デザイナーファッション大賞を受賞。デザイナーとしての活動の傍ら衣装スタイリストとして、大橋トリオ、中村佳穂をはじめ様々なミュージシャンのステージコスチューム、ハナレグミ、森山未來などの舞台作品への衣装提供・スタイリングなども手がける。
「空間デザイナー」安藤さん
空間デザイナー。多摩美術大学非常勤講師。空間デザイン事務所デザインムジカ代表。店舗設計、展示の会場構成のほか、ワークショップやアートインスタレーションなどを手がける。領域の垣根を越え、誰にでも開かれた場で共創する活動を続けている。主な受賞歴として「スポーツタイムマシン」(文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルスエレクトロニカ入賞)など。
クリエイティブな子どもを育てるヒント - No.1
『「つくる」工程をまずは一緒に楽しむ』
瀧澤さん
自分の子どもたちとは、日常生活の中で『「つくる」工程をまず一緒に楽しむ』ようにしています。
食事の前には「料理を作る」、着る前にも「洋服を作る」があるように、何事にも「つくる」が先にあります。例えば、子どもが仮面ライダーのベルトのおもちゃが欲しいと言ったら、すぐに買ってあげるのではなく、まずは作って遊んでみる工程をワンクッション挟むようにします。物事が立体的に見えてくるのは実際に手を動かしてみると分かること。その後本物のベルトを見た時に、細かい構造の話ができるのではと思います。
他にも、子どもが描いた絵をTシャツにプリントして実際に身につけて、子どものクリエイティビティを常に全肯定しています。 単純に子どもの作るものが好きだし、描いた絵がすごくいいと少し嫉妬してしまうこともありますが、親の自分が最大限に敬意を払って身につけることで「すごいものなんだよ」と伝え続けることが、1番いいのではないかと思ってます。
クリエイティブな子どもを育てるヒント - No.2
「全肯定してくれる存在がいるか」を大切に
(安藤さん)絵を描いたり、ものを作ったりするのが好きだと最初に自覚したのは、小学校3年生で、先生が変わった途端に、「安藤さんは絵が上手ですね、美術がすごく上手ですね」と急に褒められて。
元々自分が好きだったことが褒められ、純粋に嬉しかったです。「好きなことをしていいんだ」と認められた瞬間から、美術の分野にどんどん興味が湧いて、まだデザインと美術の違いも分からないままでしたが、「好きだからそちらの方に専念していきたい」と当時からなんとなく考えるようになりました。
親も彫刻や建築の仕事をしていた関係はあったと思いますが、自分の好きを認めてくれて見守っていてくれたと思います。「他者に認められるのは人間の根源ですごく大切なこと」だと思います。
(瀧澤さん)僕も高校の時、 発明品を描く美術の授業で、お酒が出てくる蛇口のデザインを描いた時、初めて先生に「いいね」と褒められました。絵もいいし、絵の考え方、発想がすごく面白いと言われたのがきっかけでファッションの道に進もうと思いました。
先生に勧められて専門学校に入学。専門学校に行ってよかったことは、夢見ているものが近しい人たちが日本中から集まってきた時、初めて自分が肯定された感覚がありました。同じものを夢見る環境に身を置いて、洋服のことを同じ温度感・テンションで話せる仲間に出会えたこと、まだまだ知らないことがあると思えたことはとてもよかったです。
学校などでは「あの子はうまくできるから自分のは良くない」とか、学校でも「これが100点でこれが50点」など人と比べがちですが、そんなことはないと心の底から思っています。子どもが作り上げたものを「全肯定してくれる存在がいるかいないか」というのは1番大きいのではと思っています。
クリエイティブな子どもを育てるヒント - No.3
「押し付けずにそっと見守ること」を大事に
(安藤さん)私の親は、興味があることを何も言わずに見守ってくれるタイプでした。仕事をしていたから忙しかったのもあると思うのですが、口出してくれないぐらいの方が子どもが親に押し付けられずに、自分で道を探すような気がします。ひとまずは、見守りつつ興味あることを認めるということでいいのではと思います。
(瀧澤さん)僕も基本的に自由気ままにさせてもらえ、見守ってくれていました。親と同じような仕事に就いてほしいと言われたことは、一切ありませんでした。親に絵がいいと言われたのは、専門学校に行ってデザイン画を描くようになった二十歳前。それまでは本当に何も言わず、ただ見守ってくれていました。
もし、子どもの時に「あれをした方がいい、これをした方がいい」と言われてたら、逆にしなかったかもしれないと思う部分もあります。
クリエイティブな子どもを育てるヒント - No.4
「得意なことを伸ばしつつ、苦手なことにも触れさせる」
(安藤さん)実は、昔は算数が苦手でした。
小学生の頃は計算が遅く、苦手意識があったのですが、中学校で公式を使って問題を解く授業になってからだんだんと好きになっていきました。
理由は、算数が苦手だと思った親が、近所の数学教室に申し込み、通うことになったことです。そのおかげで算数(数学)がメキメキとできるようになりました。
「苦手だったものも何かのきっかけがあると急に得意になる」ということがあるんじゃないかなと。そしてそれは子どもの時には自分からは発見できないことですが、親が子どもの得意なことも伸ばしつつ、苦手なことにも触れさせる機会を与えると、急に世界が変わるということはあるのかなと思います。
9kidslab(ナインキッズラボ)のカリキュラムは異なる2つの科目を交互に受けるスタイル。自分が好きなものともう1つを学べる、そのバランスが面白く、今ままで気づかなかった子どもの可能性を広げる良い機会になるのではと思っています。
親御さんからの質問 - No.1
クリエイティブな仕事につくには美大は必須か?
(安藤さん)私は、美大卒業後、建築事務所に入りましたが、必ずしもクリエイティブな仕事につく方法はそれだけではないと思います。デザイナーの友達の中には、美術とは関係のない一般大学に入って、企業に就職してから、自分で勉強し直してフリーランスで活躍している人もたくさんいますし、転職してデザイン方面の会社に再就職している人もいます。
ただ、美大に行くと、基本的な考え方やこの世界を知る近道になることもあります。美大で教えている中で、「美大で就職大丈夫なの?」とか「お金かかるんじゃないの?」という声も。なかなか親が許してくれない人も多いようです。
あくまで個人的な考えですが、今の時代はいい企業に入ることだけがいい人生というわけではないと思います。なので見守ってあげつつ、興味ある方向を認めてあげるっていうのでもひとまずいいんじゃないかと思うんです。
親御さんからの質問 - No.2
建築ってどんな科目ですか?建築は「STEAM」の総合的な学びに良い?
(安藤さん)大学で教える際に、STEAMという用語は使ったことがないのですが、建築は工学的な部分(Engineering)が絶対的な基盤にあって、その上でアートとの両軸で成り立っています。
建築はすごく大きな領域なので、STEAMでいう数学(Mathmatics)の方が得意な建築家もいれば芸術(Art)の方が得意な建築家もいます。「建築」と一言で言っても、あらゆる分野の人が横断して同じ領域で仕事をしているので、 STEAMの要素は全て当てはまるところがあるかもしれません。
私は美大の中の建築学科で、プランニングやデザインを専門に学んだので、どちらかといえばデザインよりの建築のジャンルにいます。そんな中でも、数学と工学の授業は必須でした。仕事でも工学的な考え方に基づいてデザインを出していくことは絶対に必要なので、バランスよく学ぶことが重要だと思います。総合的に力を鍛え、興味を持てる子が建築家としては向いているかなと思います。
授業について
建築×ファッションを交互に、計6回で創り上げた「みんなのまち」という授業について
(瀧澤さん)物事を引いた視点から見て、どんどんフォーカスをしていく練習がすごくできたと思っています。授業を重ねるごとに子どもたちも俯瞰で見始めて、概念的な話をするように。「町は安全であるべきだ」とか、子どもでもそういうことが見えてきて、必要だと分かってくれているのだと思うと、とても面白かったです。
第1回目「空間建築」:「みんなのまち」のプランニング
第2回目「ファッション」:「みんなのまち」のための制服リサーチ
第3回目「空間建築」:「みんなのまち」の模型を作る
第4回目「ファッション」:制服を実際に絵に描く
第5回目「空間建築」:模型に肉付け、最後に発表
第6回目「ファッション」:制服をトルソー(マネキン)でデザイン、最後に発表。
ファッションの授業では、世界の制服について調べました。制服には生まれた意味があって、順番に紐解いていくと様々なストーリーが裏に潜んでいます。それをみんなで解読しながらいろんな制服を探しました。
コックさんの帽子の高さやパイロットの肩章の数など、制服には外から見た人が何の役職であるかが分かるための目印があるー制服を通じて社会科とファッションが繋がっていることに気づけたことで、物の見方がすごく変わったんじゃないかなと思います。
その後、「みんなのまち」の授業で、自分たちがデザインしてきた街の中にファッションをリンク。この街で制服が必要なシーンを考え、旅館やコンビニ、町長さんはどんな制服を着るのか、今までの空間とファッションの授業がこのタームで繋がり、子どもたちのアイデアがどんどん膨らんでいきました。
最終的には「誰が」、「何のために」ということまで子どもたちの発想の中にあって、自分たちが作った会社を通じてコンセプトや進捗を確認したり、役割分担をして仕事を進めたり、お互いに話し合って物事を進めていて。すごく素晴らしいことだと思って見守っていました。
この「俯瞰で見る視点」が、全てにおいてこれから大切になってくると思っています。自分が好きなものがこんな風に世の中と繋がっている、「そういう仕事がある」というのが見えたのではと思います。
「みんなのまち」という授業のねらい
(安藤さん)私たちのクラスは、手を動かして作ることが多い中、前段階のアイデアブレストをみんなでできたというのはすごく良かったです。オンラインでも一緒に作り上げることができるというのが体感できた授業でした。
また、ファシリテートする自分が想像もしてない、面白いアイデアがどんどん出てきて、最終的には、自分たちが働くデザインセンターを作って、会社の名前やロゴまで考えていて、すごく社会性があるなと感じました。
デザインや美術を学んで、それを仕事にしていると「デザイナーさんはセンスや趣味がいいから」と言われるのですが、デザイナーという職業は、「センスや趣味よりも、俯瞰した目線で、社会のニーズと現状を的確に捉えて考え、形にする仕事だ」と思っています。この「みんなのまち」は俯瞰した目線で物事を考えることが実践できたいい授業だったと思います。
(瀧澤さん)
「俯瞰する視点を持つ」ーまさに、これがこの授業のねらいで、これができるようになると、それに対して「自分の好きをどうやって使うか」ということに発想が向いていき、その上で「私はこれが得意だからこれやりたい」と言えるようになるのではと思います。
特に、「ファッションデザイナーになりたい」という洋服が好きな子は、自分が何が好きかを表現することが得意な子たちが多いのですが、それより前の段階で、「他者がいること」や「社会があること」を知れたら、もっと広い視点でいろんなことを発想できるようになるのではと思います。その中で自分の好きや自分のオリジナルがどれだけ大事か、に気がつくと思います。
初めてのカリキュラムで実験的ではあったのですが、これを突き詰めていくとすごく面白くなる実感はあります。
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