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#001【遊牧民、はじめました。】相馬拓也

草原の国はどんな世界なのか?遊牧民はどういう生活をしているのか?など興味があったのですが、その知的好奇心にきちんと応えてくれる本でした。

きっかけは

たまたま本屋で目に留まり、思わず買ってしまいました。去年2024年9月に出版された本なのでまだ1年経っていないです(註:感想執筆時は2025年1月)。

タイトルがキャッチー

まるで「冷やし中華はじめました」的なノリです。素晴らしいセンス。タイトルって大事ですね!しかし、読むと分かりますが、遊牧民なんて軽いノリで始められるようなものではありません。冷やし中華の方が何倍も簡単に思えてしまいます。

一言で言うと「ジャイアン」

序盤からトップギアで紹介されていて、早々にやばい世界だなと知り、正直唖然としました。かつて巨大なモンゴル帝国が誕生したのも納得、、、と思ってしまうくらいやばいです。そして中国が万里の長城を築こうと思うに至るのも無理ないです。しかし、読み進めて遊牧民の異文化を理解していくうちに、考え・感じ方が変わってきました。こういう理由、こういう背景があって、こうなっているんだと腑に落ちるようになり、「やばさ」が薄まったのです。

学者の世界も垣間見れる

数字とかサンプルとか統計チックな箇所が散見されます。これは、著者が文化人類学の専門家だからです。人によっては難しく感じるかもしれませんが、説得力があっていいなと私は思いました。旅行者の感想とは一線を画すものです。とはいえ私も「エスノグラフィー」とか知らなかったですし、頭の中が?になりましたが、ググって調べれば済むことかと。

万国共通の話題?

日本とかけ離れていることだらけのように見えますが、似てるなと思う箇所がありました。遊牧民の会話の話題です。日本でも田舎では、親戚の誰々の息子が結婚したとか、近所の○○さんが果物を栽培し始めたとか、話のネタとして十分ありえますから。

終盤も圧巻

最後の方に蚊の話が出てくるのですが、なかなか壮絶な内容です。総じて読んでてそんなに退屈にはならないです。過不足ないボリューム感です。

著者に拍手

論文を読まずとも、この新書を読むだけでそれなりの疑似体験ができました。そして、モンゴルの草原に「旅行」として行ってみたいと思うものの、「生活」するのは無理だなと感じざるを得ません。とにかく体を張った調査に脱帽です!素晴らしい記録を残してくださいました。20~30年後に著者あるいは他のフィールドワーカーの方の記録と本書を比較すると面白そうです。将来の楽しみが増えました。ありがとうございます。

おまけ

どうでもいい話ですが、著者の苗字に「馬」が含まれていることに笑ってしまいました。運命とは不思議なものです。

以上、私ヒシキューの読書感想文でした。

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