「今夜、世界からこの恋が消えても」レビュー
映画化作品。快活なヒロイン・日野真織(進学校・高二)がある日、交通事故で春以降、一日分しか記憶保持できない障害になるという設定の恋愛小説。
手帳や日記で昨日までの出来事を参照しつつ、毎日の高校生活を送る(教師からは色々免除)というなかなかに凄い状況です。
それを即席彼氏くんとして支える金欠主人公・神谷透と真織のクールな親友・綿矢泉。元々は友人のいじめをやめさせるための罰ゲームだった告白ですが、真織と過ごすうち、本気恋愛になっていく透。
途中でヒロインの記憶障害という秘密を告白され、真織が毎回記憶を失っていると知りつつも、彼女を日々楽しませるため、様々なデートを繰り返していく様が実に感動的です。彼の努力によって、ヒロインの心が救われていくさまがとても心地良い。(脳記憶でなく体が覚えるクロッキー趣味を勧めたりとかが、特にグッドアイデア)
この作品、ヒロインが薄幸でいかにも後半死にそうなんですが、実は死ぬのはヒロインではなくて、まさかのどんでん返しが待ち構えます。つい、お前が死ぬんかーい!?って叫びたくなりましたね。
読者としては、いきなりのサドンデスすぎて(母の心臓病死という伏線はあったが)呆気にとられますが、作劇としては実に上手い。
そして数年後、ヒロインは幸いにも記憶障害を克服、大学にも二年遅れで進学します。亡くした人の記憶を取り戻そうと決意する真織の姿は、親友泉や透の姉(有名小説家)らとの触れ合いと共に、温かな気持ちにさせてくれます。さあ、次は泉主役の続編も読まねば。