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【読書記録】2024年7月14日〜7月20日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 梅雨が明けて夏本番。
 毎日暑い日が続きますが、皆さん読書してますか?
 今週は芥川賞と直木賞の発表がありましたね。
 受賞後のインタビュー動画を観ていて何よりも驚いたのは、一穂ミチさんって、兼業作家さんだったんですね。仕事をしながら作家さんを続けていくのって大変だろうなぁ。なにせこちとら一つでも持て余しているのに、二足の草鞋を履いて成功している人ってなんだかかっこいい。もちろん一つのことを突き詰めている人もだけど。

さっ、ここからはいつもの本紹介です。

【2024年7月14日〜7月20日に出会った本たち】

⚪️ブレイクニュース

著者 薬丸岳

【内容紹介】
 ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌なども相まって、動画の視聴回数は1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると彼女の過去が見えてきて……。デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新たな社会派小説。

出版書誌データベースより

【感想】
 YouTubeで「ブレイクニュース」というニュースコンテンツを配信する野依美鈴。
 彼女が扱うのは中年以降の引きこもり、冤罪、パパ活
、ヘイトスピーチ、個人情報の漏洩、ネットでの誹謗中傷など、今現在も世間を騒がし続ける、マスコミではなかなか真実に辿り着けないというか、たどり着いたとしても報道しにくい問題ばかり。
 そしてこの物語最大の謎が美鈴の正体と彼女の目的。さすが社会派小説の薬丸さん。今回も色々考えさせられました。
 だいぶ前に読んだので出典も正確な内容も忘れてしまいましたが、「投稿する前に一度手を止めて考えてみよう。その投稿をそのまま玄関に貼り出しても問題ないかどうかを」と言う言葉が、それからの私のインターネット投稿のルールとなりました。

⚪️ゴールデンタイムの消費期限

著者 斜線堂有紀

【内容紹介】
 小学生でデビューし、スランプに陥っていた高校生小説家・綴喜文彰。また傑作を書けるようになると誘われ、あるプロジェクトに参加する。向かった山奥には、料理人、ヴァイオリニストなど5人の元・天才たちがいた。彼らのミッションとは、AI・レミントンの力を利用し、天才として世間に返り咲くこと――。借り物の才能で幸せになれるのか? 天才ではない自分に価値はあるのか? 等身大の悩みが胸に突き刺さる、共感必至の青春小説!

出版書誌データベースより

【感想】
 かつて天才ともてはやされ、現在は泣かず飛ばずになってしまった若者を集め、AIを活用して復活させようという国家プロジェクトの物語。
 選ばれたのは小説家、ヴァイオリニスト、日本画家、料理人、映画監督、そして棋士。かつて「天才」ともてはやされた彼・彼女たちの苦悩や葛藤は、いわゆる「山の中の木」のような私でも、読んでいて胸が締め付けられます。
 プロジェクトに参加した5人のその後を描くエピローグを読んで、みんなそれぞれ頑張っていて、まるで彼・彼女たちの父親のように嬉しい気持ちになりました。
 ところでこのまま自動生成AIが進化し続けたら、人間はどうなっちゃうんだろうか?
 そう言えば昔、絶対音感の持ち主とか、暗記力や身体能力が高い子供達を集めて、その能力を披露する「天才児大集合」みたいなテレビ番組が結構あった気がするけれど、あそこに出ていた子供たちって、そのごどうなったんだろう。

⚪️闇祓

著者 辻村深月

【内容紹介】
 転校生の白石要は、少し不思議な青年だった。背は高いが、髪はボサボサでどこを見ているかよくわからない。優等生の澪は、クラスになじめない要に気を遣ってこわごわ話しかけ徐々に距離を縮めるものの、唐突に返ってきた要のリアクションは「今日、家に行っていい?」だった――。この転校生は何かがおかしい。身の危険を感じた澪は憧れの先輩、神原一太に助けを求めるが――。学校で、会社で、団地で、身の周りにいるちょっとおかしな人。みんなの調子を狂わせるような、人の心に悪意を吹き込むような。それはひょっとしたら「闇ハラ=闇ハラスメント」かもしれない。「あの一家」が来ると、みんながおかしくなり、人が死ぬ。だから、闇は「祓わなくては」ならない――。辻村深月が満を持して解き放つ、本格長編ホラーミステリ!

出版書誌データベースより

【感想】
 辻村深月さん初のホラー小説だとか。
 ホラーといっても血がドバッとか、内臓がグチャッというのではなく、心の闇を押し付ける「闇ハラスメント」な人たちと、その「闇を祓う」人たちの話。
 読んでいくとここに出てくる心の「闇」は「病み」と書き換えることができるかもしれない。
 読んでいて一番驚かされたのは第一話の「転校生」まさか予想外の方向に話が転がって、ここで「闇ハラ」という新語の意味とその恐ろしさを理解しました。
 束縛、同調圧力、マウント合戦、過剰な正義など自分の心の中にも確かにその種はあるから、だからこの物語は余計に怖い。
 ぜひ続編を読みたいような読みたくないような、でも多分読みます。

⚪️ザ・ロイヤルファミリー

著者 早見和真

【内容紹介】
 お前に一つだけ伝えておく。絶対に俺を裏切るな――。父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことに。競馬に熱中し、〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に有馬記念を目指し……。馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編。山本周五郎賞受賞作!

出版書誌データベースより

【感想】
 競馬、特にギャンブルという意味での競馬にはまったく興味のない私。というか毎日が博打だと思っているので、そういう類のものにはほとんど興味を惹かれない私ですが、競走馬とそれを取り巻く人たちの人間ドラマには、なぜか心奪われます。
 この物語は今まで読んできた騎手や調教師、厩舎の飼育員たちではなくて、馬主(正しくはバヌシではなくウマヌシというらしい)と、そのマネージャー(いわゆる社長秘書)の物語。しかもそれだけにはとどまらず「継承」が大きなテーマ。
 馬主なんてまったく未知の世界の物事を知ることができるから、物語ってやっぱり素敵。

⚪️トイレで読む、トイレのためのトイレ小説

著者 雹月あさみ

【内容紹介】
  夫が帰宅する前に、彼女は目の前のコイツをどうにか処理しなくてはならなかった。深い穴を掘るにも、ゴミ収集場に捨てるにも時
間が無い。そこでふと思いつく。バラバラにしてトイレに流してしまえばいいのだ――。(証拠隠滅)
 ご当地蕎麦日本一を目指す大会で、僕らは「高尾山名物冷やしとろろそば」を引っさげて挑んだ。そんな中、一番人気だった「信州
戸隠そば」。敵情視察を兼ねて食べるはずが、僕は恋に落ちてしまったんだ。(トイレのそばで)
 「トイレ小説」シリーズから人気作を厳選し、まとめた傑作集!

出版書誌データベースより

【感想】
 まずはタイトルとヨシタケシンスケさんのイラストに惹かれて手に取りました。
 コレはすごい!トイレにまつわる1分程度と5分程度で読めるショートショートが38編。
 ジャンルもSF、ミステリーから恋愛モノ、ちょっとウルっとくる話まで多種多様。
 特に面白かったのは「IOT」。コレはインターネットに繋がったトイレの話で、なんとそれを制御するAIの名前が「OSIRIS」!思わず吹き出してしまいました。
 そういえばiOSの音声コントロールシステムの名前ってなんで「Siri」なんだろう。
 ちょっとグッときたのが「青春を知ったトイレ」。コレは最後の先生の一言がとてもいい。もしかしたら「ステレオタイプの男性像を押し付けている」とか言って叩かれるかもしれないけれど。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか。
 「夏の文庫フェア縛り」の3週目。
 今週は私にとって良作ばかりの週で、とても充実した読書時間を過ごすことができました。
 中でも一番心に残ったのが雹月あさみさんの「トイレ小説」。
 まずは「トイレ」というプライベートな空間を使って、これだけバラエティーに富んだ、もちろん下品にならず、しかも読書が苦手な人でも手に取りやすいであろうショートショートというスタイルに感心するばかり。
 今回読んだ「トイレ小説」は、過去に2冊刊行された単行本の中から人気策を厳選して文庫化したとのこと。まさかこのままトイレ小説1本で書き続けていくのには限界があるだろうから、今後どんなテーマの物語を紡がれるのか、雹月さんの今後の活躍が楽しみ楽しみ。

 最後に
 読書っていいよね。


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