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【読書記録】2023年11月12日〜11月18日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 なんとか毎週noteを更新していますが、毎回最初の「まくら」というか「つかみ」には頭を悩ませます。
 ありきたりな季節の話題、自分の近況、う〜ん、なんかどうもしっくりこない。
 ならいっそ最近流行りの「生成AI」にでも任せてみようか。
 なーんて思ってみたり。

 うまい話題が見つからないので、早速今週出会った本たちをご紹介します。

【2023年11月12日〜11月18日に出会った本たち】

⚪️エロス 改訂新版
 広瀬正・小説全集・3

著者 広瀬正

【内容紹介】
 芸能界に確固たる地位を築いた大歌手、橘百合子。その歌手生活37周年記念リサイタルを前に、ふとしたきっかけで振り返った過去ーあの時、もし違う選択をしていたら、どんな人生だったのか?回想はデビュー直前の昭和8年に遡り、歌手になることのなかった「もうひとつの人生」が浮かびあがる。そこで見えてきた意外な真実とは。人生の切なさを温かく包む、パラレル・ワールド小説の傑作。

裏表紙より

【感想】
 歌手生活37周年を迎える橘百合子が、あるきっかけでデビュー直前の昭和8年のあの時を振り返る。
 「もしあの日映画を観に行かなければ…」。
 選んだ先と選ばなかった先を描くパラレルワールドストーリーです。
 どちらの話も戦前の活気に満ち溢れた時代と、戦中の鬱々とした時代を、226事件や阿部定事件、広瀬さんお得意の昭和一桁の人々の生活を織り交ぜながらロマンティックに展開していきます。
 ちなみにタイトルが〝エロス〟なので、カバーをかけずに公共交通機関利用中に読むのには二の足を踏むかもしれませんが、中身は全然エロくないです。
 途中で詳しく語られる蓄音機やラジオ、実験段階だったテレビ放送の蘊蓄はマニアにはたまらないかもしれません。

⚪️ヴァイタル・サイン

著者 南香子

【内容紹介】
 二子玉川グレース病院で看護師として働く堤素野子は、31歳になり今後のキャリアについて悩みながらも忙しい日々を過ごしていた。あるとき素野子は休憩室のPCで、とあるツイッターアカウントを見つける。そこにはプロとして決して口にしてはならないはずの看護師たちの本音が赤裸々に投稿されていた。過酷な業務に心身ともに追い詰められていく素野子は、気づけばアカウントをこまめにチェックするようになり…。現役医師でもある著者が描く医療現場のリアル。他人事ではないからこそ目が離せない、医療エンタメ長編!!

裏表紙より

【感想】
 著者は地域医療に携わる現役医師。だからなのか、この物語は胸が苦しくなるほどリアルに看護師の日常を実に的確に描いています。
 尊大な医師、理想ばかり口にする管理職、学歴を振りかざす新人、そして他の患者を差し置いて自分ファーストにしろという患者、おまけに自分のことは棚に上げて理不尽な要求ばかり突きつけてくる家族。一番割を食うのは経験5年〜10年くらいの真面目な中堅。主人公の素野子もそんな中堅看護師。
 読んでいて看護師さんの激務に頭が下がりますが、これは介護現場でも同じ。そもそも「ユニット型の特別養護老人ホームで夜間20人を1人の介護士が担当」という施設基準がバグってる。
 終章は少し出来すぎかもしれないけれど、そのくらい救いがないと辛すぎるかも。

⚪️パレートの誤算

著者 柚月裕子

【内容紹介】
 ベテランケースワーカーの山川が殺された。新人職員の牧野聡美は彼のあとを継ぎ、生活保護受給世帯を訪問し支援を行うことに。仕事熱心で人望も厚い山川だったが、訪問先のアパートが燃え、焼け跡から撲殺死体で発見されていた。聡美は、受給者を訪ねるうちに山川がヤクザと不適切な関係を持っていた可能性に気付くが…。生活保護の闇に迫る、渾身の社会派ミステリー!

裏表紙より

【感想
 生活保護の不正受給を取り上げた社会派ミステリー。
 生活保護といえば、恥ずかしさや申し訳なさから生活が困窮していても申請しない人がいる一方で、嘘をついて給付を受ける人々が問題になっていたりもします。
 近年では派遣労働者より裕福な生活保護受給者とか、今回取り上げられたようないわゆる貧困ビジネスなども度々話題になっています。
 福祉課に配属された新人職員・槙野聡美は先輩ケースワーカーの殺人事件から生活保護の不正受給に同じ福祉課の人間と、ヤクザが関与していることを突き止め…。
 頭の中で容疑者が二転三転、とにかくスリリングな展開の物語でした。

⚪️お帰り キネマの神様

著者 原田マハ

【内容紹介】
 壊れかけた小さな家族をつなぎとめたものは、映画だった――映画人の熱い想いと挑戦を描いたヒューマンドラマ「キネマの神様」は、山田洋次監督の手で原作小説に大幅に手を加えられ、コロナ禍下で製作された渾身の名作。人間や人生への愛が溢れたその映画に誰よりも心を動かされた原作者の原田マハが、映画をみずからノベライズ。映画を愛する全ての人に捧げる物語。

裏表紙より

【感想】
 原田マハさんの同名小説を山田洋次監督が映画化、それをまた原作者の原田さんがノベライズしたという珍しい経歴の本書。
 松竹映画100周年記念作品で、ゴウを演じるのが志村けんさん。撮影中にコロナが流行し志村さんがそのコロナで亡くなり、代役に抜擢されたのが沢田研二さんという話題には事欠かない映画作品でしたが、ゴウとローズ・バットのあのやり取りが好きだった原作ファンは、かなり戸惑ったのではないかと。
 私、映画を見逃してしまったもんでなんとも言えませんが、映画予告を観てこのノベライズを読んだ感じでは…。
 …これはパッと出の新人監督ではなくて、山田洋次監督だから許されたことなのではないかと。

⚪️夜更けのおつまみ

アンソロジー

【内容紹介】
 原稿があがった後の枝豆とビール、秘密のレシピでつくる肴、大切な人と分かち合った一皿…31名の人気作家がおつまみにまつわる思い出を語ったエッセイ・アンソロジー。巻末にはキリンビール公式noteとコラボして開催したコンテスト大賞受賞作も掲載!

裏表紙より

【執筆者(敬称略)】
東山彰良/吉川トリコ/西川美和/田中啓文/安東みきえ/寺地はるな/森まゆみ/甘糟りり子/市川紗椰/三浦しをん/岡元麻理恵/美村里江/柳本あかね/葉真中顕/蛭田亜紗子/オカヤイヅミ/和田竜/名久井直子/坂木司/広小路尚祈/芦原すなお/綾崎隼/水生大海/日向夏/蝉川夏哉/望月麻衣/前川ほまれ/友麻碧/倉数茂/久住昌之/ブレイディみかこ

【感想】
 小説家、エッセイスト、漫画家さんなど31人による「お酒とおつまみ」がテーマのエッセイ集。
 第一話の「俺の生ハム(東山彰良さん)」を読んで、「作家さんってお酒やおつまみにも相当こだわっててお金もかけてるんだなぁ、ちょっと敷居が高いかも」なんて思っていたら、セブンイレブンで売ってるおつまみの話とか、チーズにおかかをかけるとか、豆腐に納豆をかけるとか…。お酒も高級ワインやウイスキーばかりじゃなくて、ビールや発泡酒、缶酎ハイなんかが登場して親近感が湧きました。
 「食」エッセイって何だか面白そう。ちょっと探してみよう。

⚪️歴史の「普通」って何ですか?
 忘れられた庶民の伝統

著者 パオロ・マッツァリーノ

【内容紹介】
 みそ汁の味付けが地域ごとにまちまちであるように、料理の伝統的な味付けには地域ごとの個性があります。伝統とは、ローカルで多様性のある文化なのです。つまり、国全体、国家で統一された伝統なるものは、歴史的には存在しないのです。日本人全員が共有する「日本の伝統」と称するものは地域ごとの多様性を無視してるわけで、その存在は歴史的にも文化的にも疑わしい。日本の伝統なるものは、だれかによって捏造されたフェイクな伝統ではないのか。権威主義にゴリ押しされて鵜呑みにすることなく、謙虚に再検討する作業が必要です。

裏表紙より

【感想】
 少し前に読んだ古市憲寿さんの本で引用されていて、気になったので手に取った本書。
 そもそも「普通」とか「一般的」ってのはいつの、どの時代からの話なんだ?という視点から、「子育て」、「学生の髪型」、「伝統」といった事柄にズバリと切り込みます。
 私たちは、いや少なくとも私は「伝統」と目にしたら、江戸時代かそれ以前から受け継がれている物事だと思っていたのですが、この本を読むとどうやらそうでもないらしい。しかもその言葉の定義はその頃のオトナによって都合よく解釈され、マスコミによってそれが拡散したらしい。
 何だかなぁ。

⚪️「昔はよかった」病

著者 パオロ・マッツァリーノ

【内容紹介】
 「昔はよかったね」-日本人はそう言って今を嘆き、過去を懐かしむばかりだ。昔は安全だったのに、子どもは元気だったのに、地域の絆があったのに、みな勤勉だったのに…。しかしそれは間違いだ。捏造された追憶、あるいは新しいものを否定する年長者のボヤキにすぎない。資料を丹念に分析し、シニカルな視点で通説を次々ひっくり返す。「昔はよかった」病への特効薬となる大胆不敵の日本論。

裏表紙より

【感想】
 よく年配の人が若者に向かっていう「『昔(自分の若い頃)はよかった』というのはウソなんですよ」ってのを、統計データや昔の新聞記事などから明らかにしていく本。
 取り上げるテーマは「火の用心」「治安」「美人」「熱中症」「敬老精神」など多彩な13項目。
 特に面白かったのは「コーラとウーロン茶」の話。両方とも戦前から日本にあったなんておどろき。
 もう一つは「安心と安全」という話。この二つは似ているようで全く違う。なるほど言われてみれば確かに。
 パオロさんにしても古市憲寿さんにしても、とにかく当たっている資料の数がもの凄い。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 いやぁ、〝夜更けのおつまみ〟いいですねぇ。テーマを絞ったエッセイ・アンソロジーってのもなかなか面白いかも。
 ちなみに私はほとんど毎日お酒を飲みますが、飲む時はおつまみは食べません。コレが身体に良くないことはわかっているのですが、飲み始めるのが遅いのと、…お年頃なもんで、ね。
 その代わりと言っては何ですが、私はお酒を飲みながら本を読みます。
 読書をしながら好きなお酒が飲める。
 お酒を飲みながら好きな本を読める。
…これって、ものすごく幸せなことなんだなぁと、最近つくづく思います。
 ではまた。

最後に、
 読書っていいよね。


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