気づいて
昼部屋で作業をしていると
何かを踏んだらしく
足の裏が痛かった。
僕は思わず、『痛っ!』と言って
のけぞった!
画鋲が足の裏の親指の所に
刺さったのである。
僕は、とっさに壁のほうをみた。
すると、壁に貼ってあるカレンダー
の画鋲が1つとれていて
どうやら、それを踏んづけてしまった
ようである。
原因がわかると、不思議と踏んづけて
しまって痛かった!から、
ふいに怒る!
という『ふいに怒る!』の部分が
消えて、冷静になれるから
なんか不思議だなぁ!って思い
足下にかがみこんで、
画鋲を拾いあげた。
そんな僕の足を刺した画鋲の物語
を考えてみることにした。
・・・・
私は画鋲。
この前まで、ポスターに刺さっていた
金の画鋲!
私はちょうど1週間前にポスターから
落ちたわ。
ポスターから落ちた私に見える風景は
私がポスターに刺さっていた時に
見える風景とは全く違っていた。
ポスターに刺さっていた時は、
部屋がまんべんなく見え、
ポスターと私はいつも楽しく
おしゃべりしていたわ。
ポスターはいつも私にこう言っていた。
画鋲さん、私はあなたが
支えてくれているから、こうして
ここで楽しく過ごせるんです。
それまでの私はずった丸まって
過ごしていたんです。
今はピンって貼ってあるけど、
私は丸まっている時は、誰にも
見られずにずっと丸まっているのかぁ!
って寂しい気持ちになっていました。
そんなポスターの私に光をさして
くれたのが、画鋲さんなんです。
画鋲さんが私の4隅を刺してくれた
おかげで、私はこうして堂々と
ポスターとして貼る事ができている!
画鋲さんありがとう😊
そんな感謝の言葉をポスターから
もらって、画鋲も
『まぁ、私のおかげよね!』
なんて、軽く冗談まじりに
ポスターと笑いあっていた楽しい日々。
こういう事も当たり前ではない!
と、ポスターから離れ、床に落ちた
画鋲は思った。
はじめの2日は、何とかなる!
そう思っていた画鋲だが、
誰も私に声をかけてこない!
もしかしたら、
私はポスターから落ちたと同時に
みんなに忘れられたの?
こう思った画鋲は、とたんに不安になった。
不安になった画鋲は、気づいて!
気づいて!気づいて!
ねぇ!私に気づいて!と画鋲自身が
渾身の思いで願った。
しかし、願いとは裏腹に1日、
また、1日と時間が過ぎていく。
1週間が過ぎようとしていた時、
画鋲は思った。
私の画鋲としての役目は
これで終わりなのかな?
私は、画鋲として、
丸まっていたポスターに新しい世界を
教えてあげる事、
これが役目だったのかな?
また、ポスターとお話がしたいなぁ!
ポスターともう一度、お話がしたい!
画鋲は声を出す事ができないけど、
渾身の思いで、こう願った。
『私とポスターのそばにいさせて!』
そう願った時、上のほうが真っ暗
になって、上から大きなものが
落ちてきた。
大きなものは、
『足に画鋲が刺さった!痛い!』
と言った。
気づかれたくて、仕方ない私は
ついに気づいてもらえた。
そんな、画鋲の物語を頭に描いて
僕は、ポスターに画鋲を刺しました。
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