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若手の夜明けを味わう

約束までの空き時間、東京・丸の内で行われていた「若手の夜明け」という日本酒イベントに行く。
5日間で64の酒蔵が参加するイベントだ。
参加している酒蔵は「“醸造家”であること」、「他の蔵元/酒販店の代表者から推薦を受けていること」、「蔵元/杜氏による主体的な参加であること」――の3点を満たしていること、らしい。
事前の審査によって参加日程なども異なっているという。
出店している酒蔵の一覧を見ると、居酒屋や酒屋で人気の銘柄も多くあり、
ほんの1時間ほど飲み歩いた。

1500円で10枚のシールが与えられる。酒によって使う枚数は異なる。
今回は、「あべ」で有名な阿部酒造、「雅楽代」などを出している天領盃酒造、「福海」の福田酒造ほか、「奥」の山崎合資会社、「林」の林酒造などで9杯を飲んだ。
どれも異なる個性を持ち、飲んでいてとても楽しかった。

味はどれも非常に美味しかった。中でも特に印象に残った蔵が3つあった。
1つは、太田酒造の「花芽実 特別純米 Dawn Dew」。
2つ目は、「八海山」で有名な八海酒造の「唎酒No.591 ハルジオン」。
そして3つ目は、月桂冠の「Gekkeikan Studio No.5」。

「花芽実 特別純米 Dawn Dew」は、「半蔵」という銘柄を送り出している太田酒造の若手杜氏が立ち上げたブランドらしい。
梨やかんきつ類を思わせる味わいで、夏に合うさわやかさな酒だった。
話を少しだけ聞くと、これまで製造してきた酒類とは異なる挑戦をすべく、
新ブランドを立ち上げて取り組んでいるという。

八海酒造の「唎酒No.591 ハルジオン」は、グレープフルーツのようなかんきつ類の香りをほのかに感じられる、酸味と甘みが特徴の日本酒だった。
普段製造している酒類よりも挑戦的な味わいのモノを送り出しているという。製造数はまだ少なく、将来的に広く送り出せるようにしたいと話していた(と思う。酔っていたので)。

月桂冠の「Gekkeikan Studio No.5」は、
古代米の玄米を使用した実験的な日本酒だった。ウイスキーやワインを思わせる旨味で、これまでの日本酒では味わったことのない、不思議な日本酒だった。発売の目途はたっていないが、今後の改良でどう味わいが変化するのか、心の踊るような日本酒だった。

日本酒市場は盛り上がっているとは言い難いのが実情だ。
農林水産省が今年6月に発表した「日本酒をめぐる状況」(https://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/attach/pdf/sake-8.pdf)によると、
アルコール飲料全体の国内出荷量は1999年度をピークに減少傾向が続いている。


特に日本酒は、1973年のピークから減少が続いている。2023年においては、吟醸酒や純米酒などの特定名称酒は前年と同水準で推移したものの、
一般酒は対前年比で6%減、日本酒全体では3%減となっている。輸出についても、2023年度の出荷金額は411億円とまだ決して大きくはない。

ただ、多くの酒蔵が国内販売と共に海外輸出に向けた取り組みを強めているという話も聞く。老舗の酒蔵においても、設備投資で製造方法を変えることで、新しい味の追求を進めているという。
日本酒の支持を広げるべく、さまざまな取り組みを進めていることには頭の下がる思いだ。
いちファンとしては、どう変わっていくかとても楽しみだ。

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