3.衝撃と嫌悪

父が行方不明になって2日後。(すでに3日目になっているが)
さすがにと思った運転手は探しに行くと地下の駐車場に向かった。

結論から言うと、父は居た。
ふざけてるみたいだが、地下の駐車場で地べたに大の字になり寝っ転がって爆睡していた。

馬鹿みたいだよね。わかるよ私。
今思い出しても鮮明に蘇るしょうもない衝撃。当時の私にはあまりにも衝撃なハナシ。

だって父は日本人を守るためにここにいるんだって
そう言ってた
その本人が何してんだって話。
いやほんとに。

運転手に肩を抱きかかえられ倒れるように家に帰ってきた(正確には玄関にたどり着いた…?)父
それを眺める母
後ろの壁からチラ見する私。

父は倒れこむように玄関に入り、実際倒れ、吐いた。
私のスニーカーも、母の綺麗なヒールも、玄関に引いていたマットも、すべて吐瀉物で汚しながら倒れた。

…気持ち悪かったよね、怖かったよね、いや怖いだろ普通に考えて。
何してんだコイツは、今文字起こししてる私が吐きそうだわ。

…?なんかあの気持ち悪いもののそばで音が聞こえる。
カシャカシャと不思議な音がしてうつむいていた顔をあげた。

お母さん、なにしているの?
写真を、撮ってるんだよ。
写真?
そう、証拠。

あまりにも冷静で、そして静かな母はそう言った。
なんの…?証拠?写真…?

今思えばこんなところから準備は始まっていたのかと、
母の用意周到性なところというか、なんというか。

とにかく当時の私は目の前の光景と嫌悪感で涙が止まらなく
自分の部屋まで戻り大号泣していた、これが裏切り…

母は私をそっと抱きしめこう言った。
こんな父親でごめんね、ごめん、と、母も泣いていた気がする。

その時思った。ああそうか”アレ”は父親なのか、と。

あの目の前で起こっていた悲惨な状況を生んだのは父で、そして私の中にはその血が流れていて、どうあがいても家族で、ああ。

しばらく私は泣いていた。
だきしめてあげたい、過去の私を、なんでこんなに鮮明に覚えているんだチクショウ。
忘れたい過去ほど脳裏にこびりついて離れない、つい昨日のこと…は盛ってるけどほんとに数年前の記憶みたいだ。

私はそこから自己嫌悪という呪いにかけられてしまったんだ。
私は何してもあのやばい人の娘で、家族で、血がつながっていて…そう
厨二的な自己嫌悪。

思春期ガールにはちょっと刺激が強すぎたんだよね。

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