鍵屋~っ‼
2020年開催が難しかった祭や花火を舞台で楽しんで頂く企画を、夏・秋に実施。演目は正岡容(いるる)作『圓朝花火』。落語の神様・三遊亭圓朝の若き頃から終焉を花火に重ねた短編作品を、津軽三味線と語りでお届けした。
YouTube音声配信➡https://youtu.be/eP6iFdAH7SE
本作は断章の一~三という構成で、圓朝26歳(元治元年・1864年)人気絶頂の頃から始まる。両国の花火で思い人のお絲と屋根船に乗り込む。冒頭、いきなり圧巻なのが百花繚乱の打上げ花火の描写である。掛け声(ほめ声とも言いますね)は勿論「玉屋ーっ」「鍵屋ーっ」。
この玉屋さんは、江戸の文化・天保年間に30年だけ存在。今に続く鍵屋さんの七代目の番頭さんが暖簾分けした。この花火師さんの守護神であるお稲荷さんの狐が玉と鍵をくわえていた事から付けられた屋号だとか。圓朝とお絲が花火を観た1864年、実はもう玉屋さんは無く、掛け声(ほめ声)だけが残った。打ち上げ花火が登場したのも丁度この頃、幕末だ。それ以前は仕掛け花火が主だったという。『圓朝花火』断章の一も、猩々緋のような韓紅の仕掛け花火【眉間尺】で幕を閉じる。鮮やかに描かれる【眉間尺】はどんな花火だろう。気になる、気になる‥‥よし!聞いてみよう~っ!
怖いもの知らずもいいところで、全国の花火師さん数件にメールで質問。返信無し、「解りません」というあっさり回答が続く中、宗家鍵屋さんが至極丁寧にお返事を下さった。
手元にある資料に目を通したものの、「眉間尺」との花火の名前は見当たりませんでした。
但し、「くるくる廻り出していた」との文脈から通称「花車」と呼ばれている花火の一種が傍に添えられていたのではないかと思われます。
従って、花火の名前なのか古代中国の説話中勇士のあだ名を作者が使用したのか、弊社では不明となっております。
ご期待に沿えぬご返答となり、申し訳ございません。
す、素晴らしい。いえいえ、本当に有難うございます。
さて、弊社では夏のシーズン近くになりますと、花火に対するご質問を個人の方から多く頂戴いたします。
以前は皆様方のご期待に沿えるようご返答をして参りましたが、同じご質問内容でも弊社の時間的な理由から、ご返答できる方とご返答できない方が出てしまいました。
公平を重んじる視点から、現在は個人的な花火へのご質問に対するご返答は、控えさせて頂いております。
大変恐縮ですが、ご理解頂けますよう宜しくお願い致します。
は、はい!承知しましたっ。
明確な答えは得られずとも、それに匹敵する満足や感謝を感じずにはいられない。300年の歴史を持つ老舗のきめ細やかご対応…流石である。