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物語の引き寄せ(『夏の葬列』)

以前行っていた朗読のワークショップで、山川方夫作『夏の葬列』を題材にした。

・「山川方夫って、秀峰の息子か?」

会場は、とあるcafe。そこへ、元気な初老の男性が入ってきた。
「山川方夫って、秀峰の息子か?」
(作家山川方夫は、日本画の大家・山川秀峰の息子です)
cafeの表に掲示したワークショップのチラシをご覧になったようだ。「そうです」と答えると、お宅に山川作品があること、野間美術館で山川秀峰の作品をご覧になったことなどを話して下さった。いきなりだったが、カラッとして嫌な感じが全然ない。

・セロ弾きのゴーシュ現象

それからしばらく後・・・今度は、一組のご夫婦がやってきた。
-このワークショップは、見知らぬゲストがちょくちょく来て下さるわけではない。
やはり、掲示したのチラシをご覧になったようで、伺えば、ご主人が山川方夫氏の甥御さんで、近くにお住まいと言うっ!
目がチカチカした。冷静な対応が出来た自信が全く無い。

・作者との縁

この刺激的な出来事をきっかけに、ワークショップ参加者が練習を重ね、『夏の葬列』をご夫妻に観て頂いた。
「おじは、私が生まれた時、とても喜んでくれたそうです」終わった後の打ち上げでのご主人の一言だ。山川方夫は14歳で突然、父を亡くした。5人きょうだいのたった一人の男子だった彼は、その時から一家の当主となった。
彼にとって、一族に男の子誕生はこの上ない嬉しさだったのかもしれない。

因みに「山川方夫って、秀峰の息子か?」の青空のような謎の人物は、
ご夫妻の奥様のお父様だった。

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