1000年以上続くお店に行ってみて。
このお店に行ってみたくて、京都に来たと言っても過言ではない。
あぶり餅一和(一文字屋和輔)さん。
1000年以上、25代にわたり続いているあぶり餅屋さん。
お店の前には長蛇の列が。
あぶり餅の良い香が漂っている。
メニューはあぶり餅だけ。
あぶり餅だけで1000年以上もの間続いるお店。
どうして続いてくることができたのか。
頭の中が「?」で満たされていく。
もしできたらお話聞かせていただけませんか?
そうお店の方にお願いしてみる。
「良いですよ。ちょっと待ってね。」
奥から女性の方が出てきてくださった。
「25代目の女将です。」
「どうぞ、座って、食べながら聞いてね。」
本当に気さくで優しい方だなということを感じた。
座っていたところはこんな感じ。
女将さんはお店のこれまでの成り立ちとか、働いている中での想いとかを丁寧に話してくださった。
「今もこんなにお客さんが並んでいるけど、あなたにお話しているでしょ。そうやってお話聞きたいと言ってもらえていることはありがたいことだなと思っているから。」
どうして1000年以上もの間続けてくることができたんですか?
「いや、でも、利益とか販路拡大とかを考え始めたら1000年なんて続いてこなかったと思うよ。」
「販路拡大していこうとか、儲けようとかではなくて、目の前の人を大切にして細々とやっている。」
「コロナのときは全然お客さんが来なくなってしまって、大変だったけど、もう昔みたいに細々とやろういうことで乗り越えてきた」
「女将として、自分の代でお店を潰したくないという想いもあるけれど、プレッシャーというよりは手段を問わずお店を守っていきたいということの方が強いかな」
利益を重視しなくてもやってこられているのはどうしてなんですか?
「江戸時代まではお代をとっていなかったのよ」
「周りを見てごらん。うちの店は女の人しか働いていないでしょ。」
「これはご先祖様の知恵だよね。」
「男の人が外で稼いできて、女の人が店を守ってきたのよ」
あぶり餅を食べながら気になっていたことがある。
それはお店の向かい側にも同じようなあぶり餅屋さんがあるということ。
この向かい側のお店も同じお店ですか?
「あれは違うお店。経営している人も違う人。江戸時代くらいにできたのかな。」
じゃあ、いわゆる競合ということですか?
「そうだけど、そうは捉えていない。一緒に盛り上げてくれる仲間だと思っている。だから、メニューも値段もお休みの日も全部同じ。」
どうして向かい側にもあぶり餅屋さんができたのか気になります。
「やっぱり気になるよね、江戸時代にできたんだけど、うちの店主がレシピとかノウハウとか全部教えたのよ。」
「もともと飾り屋という、お神輿とかの装飾をしているお店だったんだけどね。お祭りをやるときに、片側にしかお店がなかったら寂しいよねということで。」
なるほど、なるほど。
頭の中が「なるほど」で満たされる時間だったことを覚えている。
最後にお話を聞かせていただいたことのお礼を言う。
「たくさん話しちゃってごめんね、あぶり餅冷たくなっちゃったよね。」
そして、しばらく経つとまた女将さんがあぶり餅を持って戻ってくる。
「これを食べて、出来立ての方がおいしいから」
わー、本当に優しい方だ。心が温かくなった。
また、いつか「ただいま」を言いに帰ってきたいな、ここに。
そう決意を固めた。
京都に来られて、お話を聞くことができて本当に良かった。
忘れないように、心に留めておこう。