キャノンイーグルス観戦記☆第3節〜再生〜
1.逆境をバネに
開幕が延期にならなかったら、、
イーグルスファンなら、一度はボヤくだろう。
NTTドコモ*神戸製鋼*パナソニック
新たな道を歩み始めたチームが、よりによって『この』3チームと初戦から当たっていく。
選手達にはいい鍛錬かもしれない。その反面、『自分達の現在地』がわからなくなり、過剰な自信喪失を生む可能性も否めない。
その意味で、この3連戦の最後、
おそらく最強にして最恐のチーム
パナソニックワイルドナイツ
この一戦をどう戦うのか。
しかも会場は、第二のホームタウン
大分県大分市
恥ずかしい試合はできない。スポーツはエンターテイメントでもある。
この難しい問いに、イーグルスはどう答えを出したのか。
今、私は思う。
神戸製鋼戦で流した血は瘡蓋となり、新たな皮膚に再生しつつある、と。
2.執念の前半
開始4分、パナソニックのペナルティーで得たチャンス、田村優さんのキックはわずかに外れる。中央だったが距離は少し遠かった。
芝は昨日の雨でぬかるんでいるらしい。開閉式屋根は閉められていた。室内は蒸し暑いのだろうか。日本列島は、この日季節外れの暖かさだった。
沢木監督もジャケットの中に青いTシャツを着ていた。マスク着用が辛そうに見えた。
それにしても、、
日本代表と世界のスターがひしめくパナソニック
攻撃のスピード感、なにより、ぶ厚く頑強な防御網。この網をぶち破るのは容易ではない。
前半10分を過ぎたが、両者の睨み合いは続く。
キャノンは攻め上がるも、ここぞ!という瞬間にミスが出る。それだけパナソニックの『圧』が速く強いのだろうか。足元も多少滑るのだろうか。
15分過ぎ キャノンは自陣でペナルティー、パナソニックは 日本代表松田選手がPGを決める。
3-0
その後パナソニックはスクラムから一気にキャノン陣内へ攻め上がる。懸命に守るイーグルス。ここで再びイーグルスがペナルティー。
時間は20分になろうとしていた。
パナソニックはPGを選択。
6-0
パナソニックは焦らず、しかしジリジリと引き離していく。
非情な強さがこのチームにはあった。
先週の神戸製鋼戦は25分過ぎから立て続けに得点を奪われた。この日も、イーグルスのペナルティーの数は徐々に増えていった。
しかし、今日のイーグルスはここから奮起する。
マレー選手を中心に再三アタックを試みる。ラインアウトも順調だ。田村選手も自ら再三前進を図る。
開幕戦から、田村さんには今までにない強い気迫を感じる。
だが、どうしても22メートルラインを越えられない。
前半30分、イーグルス陣内ラインアウトからパナソニックは一気に押し込みトライを決める。CGは失敗。
11-0
この後、福岡選手が受験勉強の疲れを見せない俊足を見せ会場が沸いた。イーグルスはこれを阻止、トライを免れる。
ピンチは続く。が、彼らの気持ちは切れない。
パナソニックは再びラインアウトから押し込もうとする。イーグルスはこれを押し返しつつ逆にボールを奪取。
しかし、ゴールラインは遠かった。
前半終了のホーンが鳴った。イーグルス陣内でパナソニックボールのスクラム。
イーグルスは粘った。パナソニックのペナルティー。ここで前半が終わった。
今日のイーグルスは、この前半に《イーグルスの現在地》を見せてくれた。
『一瞬一瞬を生きる』
後ろを振り返ることも、遠くを見つめることもしない。ただ目の前の『今』を全うしていた。
そこに《諦め》はない。理不尽なほど強い相手にラグビー選手としてのベストを尽くしていた。
前半は11-0 僅差で折り返した。
3、後半、それから、
後半は、予定通りなのかギアチェンジしたパナソニックが一方的に得点を重ねて終わった。
イーグルスは80分間無得点に抑えられた。
0-47
この結果は大量73点を取られた神戸製鋼戦よりある意味ショックは大きい。
この試合を後半25分過ぎから主人が横で見ていた。
『この試合、どういうこと?』
夫はスポーツ通だが、ファンというものにならない主義らしい。どのチームにも冷徹な発言を口にする。
『キャノンがどう、というより、パナが強すぎるのよ。』私は夫にパナソニック所属の日本代表の名前を挙げた。
『新リーグは、サラリーキャップやドラフト制を導入しないの?』
『話はあるみたいだけど』
主人の返事は辛辣だった。
『チームは共存共栄しなきゃ。こんな接触の激しいスポーツ、そういう部分も工夫しないと、息子がいても《ラグビーやらせよう》ってならないよ』
私も、先週とこの試合に複雑な思いを抱いている。
とはいえ、
私は今日前半のイーグルスに期待している。
キャノンイーグルス公式HPに発表された沢木監督のコメントは、冷静な分析と選手達への労いが込められたメッセージだった。
■沢木敬介監督
沢木敬介監督前節の神戸製鋼戦の悔しさをばねに、前半はファイトする姿勢が見えていましたし、ラインアウトも改善されていました。そういった収穫もあった一方で、継続的に改善していかなければならない課題も出ました。我々のラグビーをやるためにはスキルが必要で、トライチャンスをしっかり仕留めていればまた違った流れになっただろう、という話を選手たちにもしました。チャンスは作れているもののスキルの差で勝利につながっていない、そういう結果だと受け止めています。ここは我慢強くいくしかありません。貪欲に成長していきたいと思います。
来週の相手は
ヤマハ発動機ジュビロ
独自の採用育成システムで強豪となったヤマハは『抜きん出た個の力』より『全員の知の力』を重んじるチームだ。
『ヤマハスタイル』
この言葉で自らの強い《プライド》を示すチームとどう戦うか。
この試合で
キャノンイーグルスとは何か
私達に伝えてほしい。
〜あとがき〜
自分たちで自分たちの首を絞めるようなラグビーで自滅してしまいました。(開幕節)
選手たちには「コンタクトが嫌いなのであれば違うスポーツをやればいい」と言いました。(第二節)
沢木監督の試合後インタビューには『逃げ』がありません。長いリーグ戦、今後の相手に手の内は見せたくない、そう考えたら無難な言葉でやり過ごすこともできるでしょう。しかし、沢木さんは『自分の言葉』で、『的確に』試合を評し、かつ選手やファンの心にも訴えかける『エモーショナルな一言』を必ず口にされます。
《言葉の引き出し》が多い方だとつくづく思います。ずっと『理に聡い沢木さん』だと思っていましたが、選手にもファンにも『理を尽くし、情を尽くす』方だと思うようになりました。
ここまでの厳しい結果を、ファンはある程度覚悟していました。とはいえ、選手にもファンにも辛いこの状況の中で、沢木さんの『理と情』が詰まった試合コメントは、一本の強い糸としてチームとファンを繋いでいる、そんな気がしています。一ファンとして感謝しています。
次回の相手はヤマハ発動機ジュビロ
この試合の観戦記は多分書けません。イーグルスが《学生時代の憧れ永友さん》がいらっしゃるチームであるなら、対するヤマハはもう1人の憧れ《堀川隆延GM兼監督》が率いているからです。
でも、この日はたしか永友さん50歳のお誕生日!
3月14日をどう過ごせばいいのか、未だに決められません。
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