空の向こうに《未来》を、芝の上に《人生》を〜サンウルブズ再結成を前に〜
ラグビー選手は、引退して指導者になっても決して『普通のオッさん』にはならない。
お見事‼️私が勝手に『ナオさん』と呼ぶヤマハ発動機ジュビロ大久保直弥HC。2020夏から静岡県磐田市で、GM兼監督の『タッキー』、あの『スクラムの慎さん』と新ユニットを組んで選手達と汗を流している。
ナオさんは、いつも真摯に、誠実に、ラグビーと向き合う人だ。
ナオさんの盟友、キヤノンイーグルス沢木敬介監督。現役時代は田村優さんと同じポジションSOだった。試合前練習では、一回だけ必ずボールを蹴る。
ファンはみんな、この星野仙一的『鬼監督』姿を見たいと思っている、女性ファンはこちらかもしれないが。
お二人共1975年生まれ。ナオさんは45歳、4月生まれの沢木さんは46歳。
サッカーのJリーグが発足したが予想外の人気である。今後のことはわからないが、ファンは良い試合を見たいということと、良い試合には人が集まるということはたしかである。サッカーの真似をせよというわけではないが、我らがラグビーもより良き試合を求めて発展してほしい。(1992年ラグビーマガジン12月号読者投書欄より抜粋)
上記投書が掲載された1992年、まだお二人は高校生。ナオさんに至っては、バレーボール部に所属しておりラグビーを始めてすらいない。
大学入学時には既にバブル経済は崩壊、卒業時には就職氷河期。スポーツ界は1993年にリーグ戦が開始された上記Jリーグが、野球もラグビーも凌駕する人気を博していた。初のW杯出場、2002年日韓W杯成功に向けて、国民の熱い視線は専らサッカーに向けられていた。お二人とも大学卒業後は揃ってスター軍団『サントリーサンゴリアス』に入部した。とはいえ、その若き日は決していい事ばかりではなかっただろう。
時を経て、沢木さんがCCとなって挑んだW杯2015イングランド大会。歴史的3勝という輝かしい成果を、ラグビー界は生かしきれなかった。
文字通り背水の陣で迎えたW杯2019日本大会、ようやくラグビー界は、再び注目を集めるに至った。
大会の成功は、選手だけでなく、指導者となっていたナオさん達の人生をも変えようとしていた。
年明け2020年1月に始動したサンウルブズ。ナオさんはHCとして、沢木さんはCCとして、南半球の列強に挑む事になった。チームを率いるナオさんはスーツに身を包む。そして、
サンウルブズ初の開幕戦勝利。J Sportsのインタビューでナオさんは
『負けると思ったでしょ』
と真顔で記者に問いかけていた。
ラグビー人気が沸騰する中で、なぜかナオさん達は選手集めから苦労していた。大人の事情も絡む難しい環境の中で、ナオさん達は日々奮闘していたのだ。
2020年2月
秩父宮での試合、既にコロナ禍は日本を覆い尽くそうとしていた。観客の誰もが『最後の観戦』を覚悟していた。
今見ると、ジャージ姿の沢木さんが懐かしい。強豪に挑み続けるこの仕事、沢木さんの気性に合っていたのに。
この時早稲田大学在学中だった齋藤直人選手は、今回日本代表候補に選出されている。
その後、遠征したナオさん達は、日本に帰れぬまま南半球で数試合を続けた。そしてリーグは遂に中止となった。トップリーグも既に休止していた。
ラグビー界は、野球、サッカー、バスケが再開される中、長い眠りについてしまった。
ナオさんがヤマハHCに、沢木さんがキヤノン監督に決まったのは帰国から数ヶ月後。
年が明けて、2月20日に開幕した《トップリーグ2021》は5月23日無事終了した。これが18シーズン続いたトップリーグ最後のシーズンだった。翌日24日、
ラグビー日本代表候補メンバーが発表された。日本代表は、GB &アイルランド連合チーム『ブリティッシュandアイリッシュライオンズ』の名誉ある試合相手に指名されていたのだ。そして
2021年6月12日
日本代表は、静岡県のエコパスタジアムで渡航前の壮行試合を行う。
その相手としてサンウルブズ再結成が発表された。
一年数ヶ月の時を経て、再びコンビを組むことになったおふたり。
ここからはささやかな祈りの言葉を連ねます。
* * *
ナオさん、沢木さん、
どうか『未来』という水平線の彼方目指して、迷う事なく進んでください。
45を過ぎると、様々な浮世のしがらみが濁流のように襲ってきます。
自分の目指すところを見つめなければ、そこに向かって自ら走っていかなければ、どんどんその流れに呑まれます。自分も気づかぬうちに。
私は50を前に、最近気がつきましたが🥲
《自分》を大切に
いい人生を。指導者として、人として。
まずは6月12日、日本代表を震撼させる好ゲームとなりますように。
エコパの客席からお祈りしています。
あの時の熱狂をいつか取り戻す日まで
ファンは共に走ります。
空の向こうに未来を、踏みしめた芝に人生を見つめながら。
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