ラグビーマガジン12月号 初心者も楽しめる記事を選んでみました〜ラグビーに怪我はつきもの、ではないって?〜
『ラグビーに怪我はつきものですから』
片目を腫らしながら、彼はこう答えた。
1992年早明戦
明治大学主将永友洋司くんは、前半早々脳震盪を起こし、意識は半ば飛んでいたらしい。
大学ラグビーのスターだった永友くん。
あの色白で鼻筋の通った横顔、負けん気の強そうな面差しと柔らかい笑顔。
人生でいくつもの空白期間がありながら、ラグビーとの糸が切れずにいたのは、この遠い昔の憧れがあったからだ。
ラグビーに怪我はつきもの
彼があの時発した言葉は、聞いた誰もが当たり前のように考えてきた節がある。
ところが、
どうも違うらしい!
ラグビーマガジン12月号126ページ
怪我予防に積極的に取り組んでいる
流経大柏高校
でのフィジカルチェックの結果が示されている。
『ケガゼロプロジェクト』
一般社団法人日本スポーツ障害予防協会が展開している試みだ。
その施策の一つとして、膨大なデータをもとに怪我のリスクを数値化して弾き出す、ケガ予測の診断テストを
今回流経大柏高校ラグビー部の部員が受けてみた。
驚いたことに、他競技に比べて各テストの平均点が低い、というのだ。
詳細は本で確かめて欲しい。
ラグビーに怪我はつきもの、ではなく、単純にフィットネスが足りないのだ。鍛える方法に問題があるのか。単に不足しているのか。
部員の皆さん、数値が良くないことにビックリしつつも、どこか納得していた。例えば、
なぜ特定の部位ばかり怪我していたのか。
『上半身の強さに比べ下半身が弱かった』
というデータがでていたのだ。
ここから何を読み解けるだろう?
おそらく、他競技、特にサッカーの選手は、早くからユースクラブなどで専門的トレーニングを受けている場合が多い。それに対して、中高ラグビーは『部活』がいまだ主体なので、筋トレなどの知識が指導者に不足しがちだ。
早くから、専門的知識を持った指導者の下で、データに基づく合理的な練習を行うこと、
おそらく今の学生ラグビー界に必要とされることはここに尽きるのではないか。
部活の限界、がここに現れている気がする。
このテストを導入した流経大柏高校のような、施設や指導に恵まれた学校は、あくまで例外的な存在だ。
若い頃から怪我が続けば、その後のラグビー人生は明るくない。ラグビーだけが人生ではないが、せっかくなら、健康な身体で存分にやらせてあげたいものだ。
倒れた選手に『魔法のヤカン』の水なんて効かない、という認識ができたのはそんな昔ではない。こういうプロジェクトを、一校でも多くの学校が導入して怪我の予防に尽力してほしい。
そういえば、
永友くんは、人生で何回脳震盪を起こしたのだろう。
昨日、キャノンイーグルスが横浜市をホストタウンにすることが発表され、セレモニーが横浜で行われた。キャノン永友洋司GMは、昔と変わらぬ面差しで写真に写っていた。
永友くん、長生きしてね。
あの記事を読んだ後だけに、そう思わずにはいられなかった。
来年3月、あの時22歳だった永友くんは50歳になる。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?