2020ラグビー早慶戦 初心者プチ観戦記
1、運命の女神は やはり気まぐれ
11月23日 ラグビー早慶戦
今日も、、暑い、はず。
昨日の明治帝京戦は、刺すような日差しの中で行われていた。
昨夜から何度も天気予報を確認した。午前中に散歩して日差しの強さも実感。
間違いないはず、
だった。
たしかに、渋谷駅に着いた時はまだ晴れていた。が、外苑前駅を出た瞬間、
さ、寒い🥶😨❗️
空は一面ぶ厚い雲に覆われていた。予報通りの北風は、日差しがないと刺すように冷たい。
気象庁よ、14時は晴れだったのではないか👊
私は日除けのために持ってきた帽子を、防寒のためにかぶる羽目になった。
2、早慶戦、それは過剰なる愛のコラボ
早慶戦
単なる早稲田大学と慶應義塾大学の試合ではない。
偏愛ともいうべき過剰な愛校心を育てる私学同士の一騎討ち。そして、
数ある戦いの中で、東京六大学野球と並びNHKが必ず放送する秋の風物詩、それこそ、
ラグビー早慶戦だ。
とはいえ、
両校の置かれた状況はまるで違う。
『大学ラグビー界の盟主』
明治大学の存在感は大きい。
昔から主役は、明治と早稲田
慶應は日本ラグビーのルーツ校だが、あくまで立場は挑戦者だ。
しかし今年は違う。
あの明治に勝ってしまった!未だ4勝1敗
全勝の早稲田と優勝をかけた大一番!
と朝日新聞のテレビ欄は予告する。しかし、、
早稲田は今年『も』強い。
筑波、帝京を鮮やかに撃破、大技小技を取り混ぜた攻撃のバリエーションと粘り強い防御は、個々の高い能力と相まって、どこか職人的名人芸を思わせる。
地味だけど上手い
そんな早稲田に、慶應のお家芸キック&タックルはどこまで通用するのか。
今日の秩父宮、北風が時折り強く吹き抜ける。
ボールは、時に不規則な軌道を描くだろう。
薄暗い空がどこか心を重くした。
昨日の秩父宮は眩しいほど晴れ渡っていたのに。
そういえば、『昨日の秩父宮』は
紫紺のシマシマ
で観客席が覆われていた。今日は両校シマシマだが、、
予報外れの冷たい北風で、多くの観客は防寒具を着込んでいる。ラガーシャツ一枚で過ごせた昨日とは状況が一変した。
赤黒&黄色黒、のシャツやマフラー、揺れる小旗が不規則に入り混じる。全体の彩りとしてはかなり地味な観客席が形成されていた。
とはいえ、控えめなのは色だけだ。
応援するのは慶應以外、早稲田以外、
あ・り・え・な・い❗️❗️❗️
と信じて疑わない人々で埋め尽くされた観客席は、他のどの試合とも違う
内向きな熱気
に包まれていた。
『良いプレーには拍手をしましょう』
この日ほど、このお約束を守り辛い日はなかった😅
両校入場の時間、今年は校歌演奏がない。
野球早慶戦は応援歌まで演奏していたのに。
残念な気持ちを押さえつつ拍手で選手を迎えた。
初めに早稲田大学。
一人一人が、丁寧に一礼してグラウンドに入る。
我が母校 慶應義塾大学
走りながら入ってくる。
会場を包み込むような拍手の響きは、試合への期待と母校への誇りが一体となった証のように聞こえた。
試合が始まった。
3、私学の雄、相譲らず
慶應は、明治戦と同じく、
低く強いタックルで、早稲田の攻撃を封じる。
ドスッ❗️ボコッ❗️
こんな音だろうか。思わずどよめきがもれるほど強いタックルを、慶応は早稲田に浴びせ続けた。
シンプルだが、意外と効く👊👊
前半10分、この辛抱強い戦法が実を結ぶ。
慶應は早稲田のペナルティーを誘い、PGを成功させる。
慶應対早稲田 3-0 🌟🌟
問題はこの後だった。
慶應は再三ゴールライン際まで攻め込むも、早稲田の堅固な壁をどうしても突き崩すことができない。ノックオンのミスも出る。
筑波戦と同じだ。こういうのが一番まずい。
前半21分、早稲田は慶應の痛いミスを発端に、鮮やかな連携から飛び出したSO吉村君がトライを決める。
走る時の身のこなし、パスのコース、連携のリズム
硬軟自在の攻撃
チームの完成度、『役者』の違いを感じさせる。
慶應対早稲田 3-5
この日の早稲田は、風のせいか、トライ後のCGが決まらない。
前半21分を回ってまだ二点差
ここから両校の得点はしばらく動かない。
慶應は変わらず鋭いタックルを早稲田に浴びせ進撃を許さない。次の得点はどちらか。緊迫の度合いは増していく。
均衡を破ったのは早稲田だった。
34分 2本目のトライを決める。今度はCGも成功
慶應対早稲田3-12
9点差。これ以上離されたくない。残りは約5分
しかし、慶應は諦めなかった。タックルで押し倒し、素早くボールに絡む、その姿勢は徹底していた。早稲田はこらえきれなかった。
43分 早稲田のペナルティー
慶應はPGをしっかり決めた。
ここで前半終了。
慶應対早稲田 6-12
1トライ、1ゴールで逆転できる僅差。
試合前『前半を終えた時10点差以内で折り返せれば』と願っていたが、
10点どころか、わずか6点❗️
しかし、その点差以上の何物かが、ずっしり心にのしかかった。この点差をひっくり返すシーンを、この時私は思い浮かべることができなかった。
秩父宮上空は変わらず雲が垂れ込め、北風は時折刺すように会場内を吹き抜けた🥶🥶
雨の予報は0%、しかし嵐の前を思わせる不穏な雲行きだった。
3、激闘、その果てに
後半もまた、両校の我慢比べだった。慶應の寄せは速く、タックルは鋭く、早稲田の出足を封じている。しかし、守っているだけでは得点できない。慶應もまた早稲田の堅固な防御網に穴を開けられないでいた。
ようやく試合が動いたのは後半16分。
慶應のペナルティーに早稲田はPGを選択する。
見事成功、慶應対早稲田 6-15 再び9点差
他の試合なら、このままズルズルと点差を広げられる事もままあるだろう。
しかし、この試合は早慶戦だ。
ドラマは後半19分に訪れた。
慶應はモールを組んでゴールラインを目指す。押し返す早稲田、さらに押す慶應。
ゴールライン上での密集の波は、寄せては返すを繰り返した。波がうねる度にマスク越しの観客の声援は増していった。
あと少し!前へ、前へ!!
慶應ファンの祈りを乗せて、その波はゴールライン内に大きく打ち寄せた。レフリーの笛がなった。
慶應、この日初めてのトライ🌟🌟🌟
私は慶應がトライを決めるまでの間、目に涙が溢れるのを止めることができなかった。
早稲田は強い。その早稲田と『拮抗する好試合』を毎年宿命づけられる慶應の選手達。その苦しさは彼らでなければわからない。
自分達の出来る事を全てやる
トライを目指す密集の波は、
慶應ラグビー部の絶唱のように思えた。
慶應対早稲田 11-15 その差わずかに4点
CGを決めれば、2点差!
会場中の誰もが、息を呑んで見守った。
しかし、
慶應は、ここを決められなかった。
後から振り返ると、ここが勝負の潮目だったのかもしれない。
まもなく早稲田は、怒涛の反撃を開始した。その攻撃には切れ目がなかった。慶應のタックルはやや精度を欠き始めていた。時計は後半20分を超えている。
後半26分 早稲田は粘り強くボールを回し続けた。そして最後、
早稲田が持つ『個の力』が姿を現した。
15番河瀬君は疾風の如くゴールラインを超えていった。
早稲田トライ 慶應対早稲田 11-22
CGが決まった時、この試合の勝負がほぼ決したことを認めないわけにはいかなかった。
あと15分近く時間は残っていたが。
慶應は最後まで諦めなかった。自陣での我慢は続いたが、追加点は許さなかった。
ただ、
期待の大型新人、早稲田22番伊藤君の凄まじい突破力に、早稲田の強さを見せつけられた気がした。そして、
この点差のまま試合は終わった。
ノーサイド
慶應対早稲田 11-22
観客は、総立ちで両校の選手達に惜しみない拍手を送った。
時節柄声は出せない。選手達への拍手の喝采は舞台のカーテンコールの如くいつまでも続いた。
そして、
春から続いた長い活動休止期間を経て、
ようやくこの『宿命の日』に辿り着き、
80分間全身全霊で戦い抜いた両校の選手達。
観客の前に並び一礼するその姿は、
勇者の誇りに満ちていた。