関東大学ラグビー 初心者が観戦した《早稲田対筑波*前半》
1.外苑前に秋が来た
秩父宮入口は、アナウンスでやかましかった。
良いお知らせではない。
第二試合は中止。
日体大が、関係者の新型コロナ感染のため、出場辞退を決めたのだ。明治は不戦勝となった。
やはり、あの未知なるウイルスは、秩父宮に集う青年達にも襲いかかってきたのだ。
そのせいか、会場は思いの外空いていた。
前週重量FWの帝京に快勝した早稲田。中5日での試合。コンディションが心配されている。
対する筑波、前週は快勝、満を侍しての早稲田戦。
雲は多かったが、青空が覗く。
空の青、雲の白、芝の緑、
そこにスカイブルーの青年達、筑波の選手が入場してきた。
実に清々しいコントラスト。
お隣神宮球場からは、プレーボール1時間以上前なのに、景気良く慶應応援歌『若き血』が聞こえて来る。
♪見よ 精鋭の集うところ 烈日の意気高らかに 遮る雲なきを♪
懐かしい母校の響きに心を浮き立たせながら、入場した早稲田の選手を眺める。
先週の快勝は大きな自信になっただろう。しかも、同じ日明治は慶應に負けているのだ。
私の座るバックスタンド後方にも、彼らの落ち着きは伝わってきた。
試合が始まった。
2.そして筑波は13人になった
気合が空回りしたのか。
早稲田の攻撃スピードに焦ったのか。
そこまで速攻には見えなかったが。
開始10分もしないうちに、筑波は14人になってしまったのだ。
筑波、危険なタックルによるシンビン=10分退場
その直後8分にすかさず早稲田が先制する。
7-0
しかし12分、筑波はラインアウトから一気にゴールラインまで12番が駆け抜ける。
すぐに筑波同点。7-7
その突き抜けるような走り、やはり筑波らしくて美しい。
しかし、今日の筑波には何があったのだろう。
直後14分、またもや早稲田に『ハイタックルをお見舞い』してしまう。ダブルタックルの勢いが良すぎたのか。早稲田の選手は宙に舞った。
筑波、危険なタックルによるシンビン=10分退場×2人 滅多にない緊急事態発生だ。
当然の事ながら、ここから筑波は専ら守勢に回る。
17分、早稲田はスクラムから飛び込んでトライ
こういう事が起こると、会場の雰囲気が何とも陰鬱なものになってくる。
早稲田は面白いようにボールを回し始めた。
21分早稲田トライ 。9番から11番への鮮やかなパスの連携で、ゴールラインまで一気に走り抜ける。
19-7
この間、筑波も懸命に事態の打開を試みていた。
よく走っていた。芝生も波打つ風となって加速する、その瞬間はいつも美しい。しかしその美を完結させる『トライ』に至らない。どうしても。
早稲田の寄せは速く、タックルは鋭く強かった。15人に戻っても、筑波はボールが手につかず大事な場面でノックオン。焦りもあったのか。早稲田を褒めるべきなのか。
筑波が苦しむ中、早稲田は、筑波のお株を奪うかのように、ラインアウトから12番がゴールラインの先まで軽快に走り抜けていった。
31分早稲田トライ
26-7
私達は、ただ今日の早稲田の貫禄に賛美の拍手を送るほかなかった。
その直後、早稲田は自陣でペナルティー、筑波はPGを選択する。
筑波PG成功 26-10
ここで一息つきたいところだ。
しかし、今日の早稲田は容赦なかった。
この直後、早稲田15番は一気に走りボールをゴールラインに向けて蹴り出す。そのままおさえられなかったものの、その後スクラムで押し込んだ。
早稲田トライ
31-10
もう5本目のトライだった。
時計は既に37分を回っている。
しかしここで終わらないのが、今日の早稲田だった。
筑波のタックルが高くペナルティーになったを見て、攻撃は大胆になる。
パスすると見せかけて違う方向へパス、その後速くボールを繋ぎ、最後は筑波の選手2人をはねのけて技ありの片手パス、受けた11番は一気に走り抜けた。
早稲田トライ 38-10
筑波も反撃する。
終了間際、ラインアウトからモールで一気に押し込みゴールライン内になだれ込んだ。
トライか!、、いや、
ボールは遂に地につかなかった。早稲田がつかせなかったのだ。こんな所まで隙がないのか。
ここで前半終了。
早稲田対筑波 38-10
思わぬ大差がついた。いや、点差以上の差を感じた。このやるせない疲労感はなんだろう。
今日の筑波は、それにしてもペナルティーが多すぎる。あのシンビンから始まった負の連鎖だろうか。
あるいは、
単に早稲田が覚醒したのか。帝京戦の自信が彼らをバージョンアップさせたのだろうか。
神宮球場では、優勝を決する野球早慶戦が始まろうとしていた。試合開始に向けて応援団がボルテージを高めている。
ハーフタイムに聞こえる応援歌が、今日はなぜか耳障りだった。
今日の秩父宮
若さというエネルギーが生み出す光と影に、大人の私は心が痛んだ。