催花雨
上京を待ちわびながら福島県で過ごす最後の1ヶ月。
雪の降る正午、なにかが鳴っていた…。
強烈な音がケータイから聞こえてくる。
画面には真っ赤な文字で「強い揺れに警戒」
緊急地震速報だ。
長い廊下が波を打っている。立っていられなかった。
窓から見えるはずの景色は滝のように落ちている瓦で遮られていた。
四つん這いで進み階段を後ろ向きに降りていたその時、ごごごご という音が聞こえ体全身に強い衝撃を受けた。階段そのものが落ちたのだ。
神棚さえも落下して形をとどめていない。
私たち家族は大きい化粧ダンスの隙間に肩を寄せ合った。ありったけの毛布と上着を身にまとい寒さを凌いだ。
ヨーグルトと生のウインナーが私たちの晩餐だった。
地震から一ヶ月がたち暖かくなり、雪の季節も終わり雨に変わった。
私たちは日常を取り戻していた。
ここ福島県でも、もうすぐ桜が咲くのだ。