岡野八代・杉田衆院議員「慰安婦」研究を中傷
「ねつ造」発言看過できない フェミ科研費裁判の意義 原告の一人・同志社大学教授 岡野八代さんに聞く/自民・杉田衆院議員「慰安婦」研究を中傷
京都民報Web 2019年5月20日
自民党の杉田水脈衆院議員に研究内容を中傷されたとして、フェミニズム研究者4人が損害賠償とツイッターへの謝罪文掲載を求め今年2月、京都地裁に提訴した裁判の第1回口頭弁論が、5月24日午前10時15分から行われます。原告の一人である岡野八代・同志社大学教授に提訴に至る思いや、裁判にかける意気込みなどを聞きました。
杉田水脈衆院議員からの誹謗中傷は、研究者生命に関わることで、とても看過することはできませんでした。杉田氏は「慰安婦」を扱った私たちの研究を「ねつ造」と述べて発信しました。かつて日本軍が行った戦時性暴力はすでに多くの研究者が調査によって明らかにしていますし、1993年の河野官房長官の談話をはじめ、日本政府が謝罪し、反省を公式見解として述べたことで、はっきりしています。この事実を無視して、「慰安婦問題はねつ造」ということは、われわれへの重大な名誉棄損です。
フェミニズム研究はまだ歴史が浅く、広く知られていないかもしれません。今の私たちの生きる世界は、ジェンダーやセクシュアリティーの多様性を認め合い、だれもが平等な権利を享受し、自分らしく自由に生きることができる社会に向け、一歩ずつ進んでいます。その流れを切り開いたのがフェミニズム研究であり、社会を変えようという運動だと思っています。
私たちが科研費(科学研究費補助金)を使い、4年間研究を重ね、ジェンダー平等の実現のためには、様々な社会運動や活動と架橋していくことが重要であることを理論や実践のなかで明らかにしてきました。それを杉田議員は「あんなのはフェミニズムではない」「活動であって研究ではない」などと偏見や無理解によって、研究を貶めました。
また、杉田氏は私たちが科研費助成期間終了後に研究成果を発表したことについて、「期間が過ぎて科研費を使用したのは、ずさんだ」と発言しました。助成期間が終わってから科研費は支出していません。助成期間後に研究成果を発表することは当然あり得ることです。事実無根の「不正」疑惑をかぶせられることに怒りを禁じ得ません。
「反日」レッテル、言語道断の行為
杉田氏は私たちに対し「反日」というレッテルをはり、「国益を損ねる」研究に税金を使うことは問題だと繰り返しました。一般人でも許されない言動ですが、国民の負託を受け、憲法を順守する責任を負う国会議員が行うなど、言語道断です。
訴状を作るため、杉田氏のあらゆる場での言動を文字に起こしました。誹謗中傷を受け、黙っていることは、将来にわたる学問の自由への介入の理由づけに利用されることが十分予想され、その攻撃を阻止するためにも、提訴に踏み切りました。
私たちの訴えに対し、多くの研究者をはじめ市民の方々から賛同が寄せられています。長い闘いになると思います。多くの方々に支援を呼びかけたいと思います。
「支援の会」発足、サポーター募集も
杉田水脈衆院議員を名誉棄損による不法行為で損害賠償請求(計1100万円)で提訴したのは、牟田和恵・大阪大学教授、岡野八代・同志社大学教授、伊田久美子・大阪府立大学教授、古久保さくら大阪市立大学准教授。4人は2014年から4年間、計1755万円の助成(国の科学研究費)を受け、「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」として共同研究を行い、性の平等に向けた日本の女性運動や従軍慰安婦問題など、計67件の論文や学会での発表、シンポ開催などを行ってきました。
杉田氏は、昨年3月から7月にかけ、ツイッターやインターネット番組、雑誌で牟田教授や岡野教授の名前を上げ、この研究を批判。ツイッターには「国益に反する研究」「反日活動」「ねつ造」などと書き込み、国の助成費が使われたことは問題だと指摘。動画番組でも原告らが開いた研究目的のワークショップを「放送禁止用語を連発」と揶揄していました。
提訴と同時に、「フェミ科研支援の会」が発足。岡真理京都大学教授、山口二郎法政大学教授らが支援を呼びかけ、サポーターを募っています。同「支援の会」問い合わせ✉info@kaken.fem.jp、ホームページ
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