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《短編小説集》なにがしかの話

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物語の半分はほろ苦さでできています
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2020年8月の記事一覧

夜間限定彼女が願い事をした夜の話

 屋上に続くドアの鍵を回すと、ほのかに温かい風が僕らの頬を撫でた。明日からは9月だというのに、まだまだ秋の気配とは程遠い。彼女──ハツカが「ぬるいね」と笑い、僕も「ほんとにね」と頷く。  大学4年生の、夏。  言い換えれば、僕らにとっては学生最後の夏休み。とはいえ、なにか特別なことが起きるわけでもない。もっとも、別に「起きてほしい」とも思っちゃいないのだけれど。   今日も今日とて、いつもどおりだった。  ハツカが昼頃に僕の部屋にやってきて、誕生日プレゼントとして最近