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いいものを作っても売れない理由

評価は見る人によって変わる

相方は、花苗生産にたずさわって早20年。
そんな相方も新規就農となると、かなり悪戦苦闘している
やっていることが、勤めていた会社とは違うことが多いためのようだ。

昨年、アリッサムと言う冬にかけて生産が、多くなる花を生産した時のこと。
相方も自信を持ってよくできた!と言うくらい良い出来だった。
東京の市場のポットプランツコンテストに出品したところ、見事落選。

冬の名脇役 アリッサム

相方は、『あの出来で、なぜだぁ』と落胆していた。
私もなぜなのか、その時は分からなかったが、インスタグラムのストーリーに流しただけで、あっという間に完売となり多くの方に、お断りする事態となったのだ。
コンテストに落選しても、この売れ行きはなんだ?

その後、あるフローリストのつぶやきを見て、腑に落ちた。

『市場では、販売店での花もちを計算して咲き過ぎているのは、あまり歓迎されない』

新規就農で、相方も私も市場出荷の経験が乏しく、市場での流通の常識を知らなかった。
確かに、販売店で花苗を仕入れたとしても、ケース単位のものが飛ぶように売れるなんてことは、あまりないはずだ。(人気のものなら、あるのですが・・・)
仕入れてから、お客さまの手に渡るまでを『棚持ち』と言うらしい。

でも、販売店で買う消費者の方からすると、花が咲いてボリュームが良い方が育てやすいし、失敗も少ないので良いのだけど、販売する側からするとピークが過ぎてしまうと管理しきれないと言う問題もあるのだ。

それに加え、アリッサムと言う花は、とても安く取引されている花なので、私たちの値付けも市場から見て高すぎたのかもしれない。
(落選の理由は、わからないので私の推測に過ぎませんが)

ターゲット選定と商品設計

私たちは、新規就農する前に夫婦2人の仕事に対するビジョンをまとめて事業のビジョンとミッションを作った。

そのことを書いた記事は、こちら↓

そのビジョンとミッションを設定してから、『どんなお客さまに、届けるのか?』
いわゆるターゲット選定を行なった。

私たちは、『寄せ植え教室の先生』としたのだ。
そして寄せ植え教室の先生を、絞り込んでいった。
寄せ植えと一言で言っても、手法がいろいろある。
相方が、15年ほど前から学んでいた『ギャザリング』と言う手法を使った寄せ植えの先生と的を絞ったのです。

根付きの花やリーフを、花束のように束ねて植え込んでいくギャザリング

相方が寄せ植えをする時に、使いやすいリーフや花を集めるのに苦労するのと、買い付けに来る先生方からの仕入れに対する悩みを聞いていたからだ。

相方は、その悩みを解消できるように、苗作りをすることに決めたのだ。

完成した直後から花を楽しめるように、たくさん花が咲いていると喜ばれる

その苗作りは、
○リーフは、1つのポットに複数植えてボリュームよく。
○花は、たくさん咲かせる。
これが、私たちの出荷基準となるのだ。これが、商品設計になる。


7cmのポットに3本植え込んだ 斑入りヤブコウジ リーフは、仕上がるとすぐ売れていく


花を仕入れるバイヤーさんは、販売店、ホームセンター、仲卸と様々な違う条件を持っている。
それぞれ、売る場所、ターゲット層、価格が大きく違ってくる。

安くたくさん売りたい
付加価値の高いものを売りたい
高くても少量多品目のものを売りたい
たくさん仕入れるけど、お店での待機時間が長い
教室なので、予定数がわかりすぐに売れる

売る場所によって、苗の状態の良し悪しが大きく変わるものなのだ。
これは花苗に限らず、どんな商品にも言えることだと思う。

『誰に届けたいか』

それを、即答できる?

こだわりは、すべての人に届かない

私たちが、ターゲットとした『寄せ植え教室の先生』が喜んでくれる苗は、教室をやっていないお店から見ると、評価が下がることを身をもって経験した。

こんなにこだわって、手をかけたのに希望価格よりも下げられてしまったこともあり、とても悔しい思いもした。
そう、ターゲットとしたお客さまがそこにいなければ、ただの高い苗になってしまうのだ。

安く売られているアリッサムも、寄せ植え教室を行なっていると私たちが仕立てたアリッサムは、とても付加価値の高いものだと思って頂けるようだ。
実際、『ギャザリング手法の寄せ植え教室の先生』と細く的を絞ったにも関わらず、様々な手法の先生方からも、私たちの作った苗は、使いやすいと高く評価していただいている。

3つに分けれらて、株分けに強いように育てたアリッサム

『良いものを作っても売れない』と悩む前に、まずはどこで売られているのか?と言うことをよく考えることが大切だと思った。
食べればわかる、使えばわかるなんてことは、ほとんどない。
食べても、使っても自分のこだわりに、価値を感じてくれる人にしか届かないのだ。

自分のこだわりの農産品は、誰に届けたくて、その人はどこにいるのだろう?とよく考えるのは、とても大切なことなのだ。

届ける人を絞ると、届かないなんて不安に思うこともない。
届ける人と場所を絞れば、そこから大きく広がっていくんだから。

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