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私は、腹を満たすための花農家#未来のためにできること

花は余裕がないと、1番最初に削られるものだから。
花が売れないと、花農家は口々にこの言葉を言う。
皆、申し合わせたように、同じセリフを口にする。
嗜好品だから、なくても困らないから、そんな言葉が続く。

そんな言葉を、裏付けるかのように日本の花農家は、恐ろしく減り続けているのが現状だ。


夫婦で新規就農花農家。
自分たちの作った花はきっと受け入れてもらえると信じて、花を作る。
夫は、苗生産会社で16年以上働いてきたから、きっとすぐうまくいく。


と、思ったら農業ってのは、そんなに甘くない。
ことごとくうまく育たない。

得体の知れないウイルスに侵され、どんどん枯れていく小さな苗。
うまくできたと思ったら、からっきし注文が入らない。
モタモタしているうちに、虫の餌食となり大量の廃棄。
台風が来れば、ひとたまりもない。

これほどまで、リスクが散りばめられているなんて・・・
私は、とんでもないところに足を踏み入れてしまった。


1番最初に削られるものを私たちは、こんなに必死に作っているのか。
なんとも言えない喪失感が、全身を駆け巡る。

そんなことを思いながら、早朝通りかかった駅前の心療内科。
長蛇の列になっていて、驚いた。
これほど、心の病で苦しんでいる人がいるのかと目の当たりにした。

これだけ、ものが溢れる世の中だけど、幸せで満たされている人は、どれくらいいるんだろう。


腹は、満たされても心は、満たされない。
心が満たされないと、腹は空かない。

心が満たされることは、腹を満たすことと同じくらい大切なことなのではないのか?
花を愛でることは、腹を満たしてはくれないが、心を満たしてくれる。


植物の世界は、人間の世界と流れる時間がちがう。
人間の世界は、ものすごいスピードで流れるが、植物はちがう。
ゆっくり、でも確実に花を咲かせる為に進んでいく。
花を咲かせ、実をつけることだけを目指して、ゆっくりと進む。
植物時間に身をゆだねると、人間時間で疲れ果てた心は、不思議と満たされていくのだ。

ゆっくり長い時間をかけ、世話をして報酬として花を咲かせてくれる。
たとえ1輪だったとしても不思議と心は、満たされていく。



ほら、グーっと腹がなる。

私は、腹を満たすための、心の栄養を育てていく花農家。
花を通して、幸せな人を増やすため、未来に向けて花を作り続けるんだ。

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