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どこか遠くの国の誰かの話なのだろうか

7月25日付の日経新聞の社説で「技能実習は速やかに廃止を」という記事が出た。

正直私は、「技能実習制度」という言葉ぐらいしか知らなくて、なんか賛否があって、問題もあるらしいなぁぐらいの認識しかなかった。
 
だけど、2年前、ある縫製会社を訪れたときに経営者の人から、技能実習生の話を聞いて、遠い国から来た誰かの話ではなくて、今日本に一緒に住む人の話なんだって実感をもって感じた。
縫製会社を訪れたとき、作業場を通って事務所に通してもらったのですが、作業場には(たしか)中国人とベトナム人の方が半分半分。経営者の方は、「技能実習生に教えても技能を母国に持ち帰り日本には根付かない」「また何年か経ったら一から教えないといけない」「日本人で同じ賃金で働いてくれる人は誰もいない」とお話しされていて、そこには縫製業界の下請け文化といった構造の問題もあったし、技能実習と日本の技術継承の問題もあるのだと知った。
 
そののち、実家に飛行機で帰るときに待合所で見たドキュメンタリー番組で、鳥取県の境港の蟹漁船の技能実習生の話がやっていた。
少し曖昧な記憶だけど、出稼ぎのために必死に日本語を覚えてやってくる。日本人と同じ仕事をするものの賃金は全然違う。そして、技能実習生を受け入れている社長は、「他の会社と足並みを揃えないといけない、うちだけ賃金を上げることができない」と言っていて技能実習制度の負の部分に関して問題提起がなされていた。
 
技能実習生は日経新聞によると、現在37万8千人。そしてこう指摘されている。

一方で違法な長時間労働や賃金不払いなども増え続け、19年はこうした労働関係法令違反が6796事業所でみつかっている。
世界からも技能実習制度は人権侵害の問題があるとして批判されている。
問題の根源は、海外からの労働力の調達を優先し、外国人の働く環境の整備や生活支援を二の次にしてきた政府の姿勢にある。

日本に37万8千人もいるけど、違う国出身の人の話だから関係ないのだろうか?
私は2つの実体験から、一緒に日本に住む人が労働的に搾取される話でもあり、日本の技術継承にもなっていない制度の構造で課題があると感じている。
 
だから、いつか社会に対して啓蒙をしたい!と思っていたニュースがついに日経で社説になったことは、私は喜ばしく思っている。これで議論が始まればいいなって。
ただ、私がそうだったように、多くの人にとって他人事になってしまわないか懸念もしている。「社会問題」はいかに身近なトピックに落とし込めるかが、理解度や実感を得られる手段なのではないか?と思っているから。

自分に何ができるだろうか…
 
さらに、日本と外国人の関係で言うとこの技能実習生の話だけではない。

こちらも日経より。オリンピックから難民に関して切り込んだ記事である。

この記事内で、難民選手団の

メンバーのなかに日本が受け入れた難民は含まれていない

と指摘されていて、その理由として日本の難民受け入れ数の少なさをあげられている。人種的迫害などを受けて自国にいれない人に対して、どうして国際基準で受け入れられないにも関わらず、低賃金の労働力として受け入れを進めてしまってきたのか。自国の短期的営利しか考えていない政府の姿にうんざりしてしまう。

でもこれは、日本人の興味のなさとも言えると思う。
とはいえ、入管難民法の改正案は改悪だとして政府は成立を断念し廃案とした。1人の死を犠牲として、やっと国民の目が向いたからだ。

こないだまで私も知らなかった。たまたま技能実習生とそれを受け入れる日本人経営者の話を聞けたこと、ドキュメンタリーをみれたこと、入管局で亡くなったウィシュマさんの件を堀潤さんの「わたしは分断を許さない」という映画で知れたこと。ほんとたまたまだった。

どうかこのnoteをたまたま見つけた人が興味を持ってくれますように。

そして、自分は、まだ自身の幸せを突き詰めたときに社会問題や環境問題にもつながるストーリー性を描けるようなデザインや仕組みを作れる一員になれていないと思う。悔しい。でも諦めず、自分自身が何ができるのか、望ましい、なりたい社会を目指して、今日も仕事でアイデアを出し続けたいと思う。

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