【チーム制】みんなが気持ちよく、最適に働くために
デザイナーが何人かで仕事をする場合「デザインユニット」なんて呼ばれたりするけれど、人数が多くなるにつれ「デザイン会社」、つまり組織になっていく。
会社となると、上司も部下も、総務も人事もあってしかるべき……なんだけど、なんだろう。クリエイティブな専門職の集まりだからか「なんとなーくやってる」ところも多い気がする(あくまで個人のイメージです)。
「ブランディングデザインで日本を元気にする」というミッションを掲げる「エイトブランディングデザイン(以下エイト)」も2006年の設立当初は、たった数名から。やがてぐんぐん成長し、今やスタッフおよそ20名。リッパな組織と言えるだろう。
「とはいえ20人くらいの会社なんで、僕がトップなのはわかりやすいんですけど、その下のヒエラルキーが固定化するとよろしくないな、というのがなんとなくあって」
と、代表の西澤明洋さん。
「上下の立場が固定化すると、下のスタッフが受け身でいることに慣れてしまうなと」
そこで作ったのが「チーム制」。仕組みはこうだ。
チームをふたつに分け、それぞれにリーダーを立てる。リーダーはチーム全体の管理をする。おもに仕事量の配分。偏りがないように均一化させたり、スタッフ間の指導や対応に対して指導をしたり。スタッフが気持ちよく働ける環境作りや、健康への配慮も行う。
さらなるキモは、リーダーおよびスタッフが「1年ごとにシャッフルされる」ということ。西澤さんは言う。
「リーダーはポジションになると権威的になるので、当番制にしたんです。学級委員みたいな感じで、適度に入れ替わるようにしたいなと」
案件を超え、チームで助け合える。
「昔は『なんとなく忙しそうな人の仕事を、まわりが助ける』という感じでやってたんですけど、人数が多くなってくると、スタッフがどんな仕事を抱えているのか、本人しか分からないという状態になって。それを把握する必要性が出てきたんですよね」
と言うのはエイトの古株スタッフ、現在リーダーも務める渡部孝彦さん。もうひとりのリーダー村上香さんもうなずく。
「たとえばひとりのスタッフに仕事が集まりすぎちゃった時『無理です!』と、とくに若いスタッフは言えないことも多くて。頼んだことができてないというのが直前になってわかる、というのが一番の問題でした」
まず行ったのは、週イチ30分のチームミーティング。渡部さんが流れを教えてくれる。
「人それぞれ働ける時間ってあるじゃないですか。それを自分で計算して、チームミーティングで発表してもらう。その中で超えてしまいそうな仕事に関しては、余力のある人に振る」
なるほど。ただ、と思う。デザインの場合とくにかかる時間を、そこまで明快に把握できるのだろうか。個々のスキルによって進み方が違ったり、考える仕事と作業する仕事ではかかる時間が全然違ったり。
「それって逆に言うと『その人にしかできない仕事』はわかるんで、これは振れる、振れないと判断するのも僕らの仕事」
渡部さんのわかりやすい話を、さらにわかりやすくしてくれる村上さん。
「その人の難易度に合わせて『このくらいの時間があればできるでしょ』と思って振っても、本人的にはやり方がわからないとか、より時間がかかることもあって。そこはおたがいのコミュニケーションで補いながら『これならできる?』と聞きながら調整していくんです」
ここで生まれるのは、仕事の案件を超えたチーム内での助け合い。
「前は同じ案件の担当どうしの助け合いはあったけど、他の案件は知らないから、手伝うというマインドがなかった。ただ今はチームという感覚ができて、自分が困っている時は誰かが助けてもらえるし、誰かが困っていると助けるんだというのが板についてきた感じです」
持ちつ持たれつ。チーム制によって、より醸成されたようだ。
顔だけじゃなく、心までちゃんと見える。
この週イチのチームミーティングに加え、2021年より導入されたのが1on1だ。これによってさらにうまく回るようになったと村上さんは言う。
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執筆・編集
山村光春
1970年東京生まれ。雑誌「オリーブ」のライターを経て、2000年に雑誌や書籍、広告の編集・執筆を手がけるBOOKLUCK設立。暮らしまわりや旅まわりのジャンルをおもに活動中。編著書に「眺めのいいカフェ」(アスペクト)「おうちで作れるカフェの朝食」(世界文化社)など。現在、東京と福岡との二拠点生活中。http://bookluck.jp/
撮影
松村隆史
写真家
1975年富山生まれ。大学中退後に上京。スタジオフォボスに勤務。2000年、フリーランスとして独立。自然物、暮し、料理、ポートレイトなどの撮影を中心に活動。http://www.matsumuratakafumi.com/