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【第51回】アートディレクションで映画をつくる

第一線で活躍しているクリエイターをゲストに迎え、クリエイティブのヒントを探るトークセミナーシリーズ「CREATORS FILE」。

第51回 クリエイティブナイト
ゲスト:千原徹也氏(アートディレクター/株式会社れもんらいふ代表)

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初監督映画『アイスクリームフィーバー』が2023年7月劇場公開された株式会社れもんらいふ 代表の千原徹也さんをゲストにお迎えしました。映画を中心に企業やメディアを巻き込んでいく千原さんのアートディレクションにヒントを探るトークセッションです。

50歳になったら映画を作ると決めていた

西澤:コロナ禍は長らくオンラインで開催していた「クリエイティブナイト」は今回で51回目を迎えます。節目となるタイミング、せっかくなので一番派手な方をお招きしました。
今日のゲストは、株式会社れもんらいふ代表の千原徹也さんです。千原さんが初監督を務めた映画『アイスクリームフィーバー』が絶賛公開中です。おめでとうございます!

千原:ありがとうございます。

西澤:僕はもう2回観に行きました。
芥川賞作家の川上未映子さんの短編小説「アイスクリーム熱」を原案に、世代の異なる4人の女性の思いが交錯する姿をつづったラブストーリーです。
まだの方はぜひ、今日の制作裏話を聞いてから足を運んでみてくださいね。

さっそく、制作秘話を語っていただきましょう。

千原:『アイスクリームフィーバー』を作るにあたって動き始めたのは、4年半前の2019年です。画面に映っているのは最初の企画書です。

<当日のスライド画像より>

千原:この企画書を作る少し前に、桑田佳祐さんのCD『がらくた』のジャケットをデザインさせてもらいました。桑田さんと一緒に仕事ができるなんて、夢みたいなことじゃないですか。

西澤:ええ、我々世代は特にそうですね。

千原:そこで燃え尽き症候群じゃないですけど、緞帳が下りたような気分になったんです。

桑田佳祐 『がらくた』 CDジャケット

西澤:ほう。

千原:そこから次の夢を考えるようになって、考えついたのが映画制作でした。

西澤:おいくつの時ですか。

千原:43歳ですね。昔から伊丹十三さんが好きなんですけど、伊丹さんは50歳で初監督映画『お葬式』を撮っていて。僕も「50になったら映画を作るんだ」とハタチくらいの頃からずっと言っていました。

西澤:では企画書は満を持して作られたものなんですね。

千原:そう。でも、誰に渡すかは決めてなくて(笑)。誰に読まれるかわからないまま作りました。西澤:そもそも映画って、誰に話をしたら作れるんですか?千原:全然わかんないです(笑)。僕は、まず映画関係のプロデューサーの仕事をしている知り合いに企画書を見せました。企画書の最初に書いたのは、映画体験の話です。90年代に大阪のテアトル梅田という劇場で観た香港映画『恋する惑星』(監督:ウォン・カーウァイ)は、パンフレットもポスターも、映像の言葉も、何もかもがおしゃれでした。あの感動をもう一度取り戻したいという思いを、企画書には綴っています。

<当日のスライド画像より>

もう一つ伝えたかったのは、僕は普通の映画監督ではないということ。映画を真ん中に置いて、ファッションや広告などトータルディレクションと監督を両方できることを打ち出し、作りたい絵や世界観を盛り込みました。

西澤:なるほど。ストーリーが先行していない企画書はおもしろいですね。

千原:結局、作り直したんですけどね(笑)。そして生まれたのが、映画『アイスクリームフィーバー』です。最初は原作を川上未映子さんに、主演を吉岡里帆さんにお願いすることだけが決まっている状況でした。

西澤:原作と主演だけどうして先に決まっていたんですか?

千原:2人とは仕事のつながりで昔から親交がありました。「いつか僕が映画を撮る時には、原作、主演をお願いします」と声をかけていました。でもふたりとも、まさか本当に実現するとは想像していなかったと思います。

西澤:そこから肉付けした企画書を初めてプロデューサーに見せた時は、どんな反応でしたか。

千原:「おもしろそうだね、何か手伝おうか」と、いきなり協力してくれたんですよ。

西澤:おお!トントン拍子に。

千原:トン拍子くらいです(笑)。やっぱり僕は映画制作のことを全く知らなくて、進め方がわからなかったんです。特に苦戦したのは、配給会社への売り込みでした。PARCO、ファントム・フィルム、バンダイビジュアル(現・株式会社バンダイナムコアーツ)などに行ったのですが、もれなく門前払いでした。

西澤:お蔵入りになりかけたんですね。

千原:そうですね。NGが出る度にプロデューサーと相談しながら脚本を書き直し、出演者や主題歌のキャスティングも考え直しました。だんだん作品が自分のものじゃなくなっていく……でも、「映画を撮るには仕方ないのかな」と妥協点を探していたら、パンデミックが起きました。

西澤:このタイミングですか。

千原:世の中的にも、映画制作を進められないムードが漂い、ついにはプロデューサーが降りることなって。全てが振り出しに戻りました。

西澤:それは泣けますね……。

千原:さすがに挫けましたね。でも次の日には「どうせゼロからなら、自分のやり方で誰にも文句を言われない映画を作ろう」と気持ちを切り替えました。完成して最終的に映画館に作品が流れれば、手段にこだわる必要はないと思うようになったんです。

西澤:せっかくなので、一般的な映画の作り方を教えていただけますか。

千原:一般的には、まずプロデューサーが企画を立てます。例えば漫画原作の映画化なら、原作を元にプロットや脚本を作って、映画に投資をしている広告代理店やテレビ局に声をかけます。すると彼らは、「この映画はもしかしたら当たるだろう」ということで、数億円のお金を出してくれるわけです。この出資者をまとめて製作委員会と呼んでいます。公開後、売り上げた興行収入は、全て彼らに配当されるという仕組みです。

西澤:制作しているチームには一切入らないんですね……。

千原:そうなんです。製作委員会の力が大きすぎるので、制作中の判断材料も「儲かるか」「儲からないか」の2択になってしまいます。結果、分かりやすくみんなが感動できる脚本や、今をときめく人気俳優の主演が求められます。

西澤:今回、千原さんはそうではなくどんな施策を取ったのでしょうか。

千原:出資金を募るのに、「広告宣伝費を使う」という施策です。普段仕事をしているクライアントのもとに行き、「ただの投資ではない、アートディレクターだからできるプロモーションをやります」と売り込みました。女性用下着ブランド・une nana coolに持っていった企画書がこちらです。



\ 引き続き、千原さんのクリエイティブな映画づくりに迫ります /
>> この続きは、エイトブランディングデザインWEBサイトで全文無料公開中。『【アートディレクションで映画をつくる】クリエイティブナイト第51回[ 前編 ]』へ

「CREATORS FILE」をまとめて見るには、こちら(外部サイト)


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